3.暴走した獣
2025.9.13
修正しました。
Al活用したら文章力完全敗北しました。
「無月あったよー!」
有里が、境内の端で声を上げた。
土の中から見つけ出した、目的のタイムカプセルを掲げて。
「私もー!」
無月の声も、離れた場所から返ってくる。どうやら、無月も発見したようだった。
2人のタイムカプセルは、一緒の場所に埋めていない。
最初は、1つのカプセルに2人分の思い出を入れる予定だった。しかし、有里が「中身を見られたくない」と言い出したことで、計画は変更された。
結果、音無神社の両端に、別々のカプセルを埋めることになったのだ。
2人は、それぞれのタイムカプセルを持ち神社の賽銭箱へ集合した。
「一緒に開ける?」
無月が尋ねると、有里は片手を上げて制止した。
「ちょっと待った」
そのまま、有里は自分のタイムカプセルを無月の前に差し出す。
「まず、私のを見て欲しいんだ」
「どうして?」
無月が首を傾げる。
有里は少し視線を落とし、名前を呼んだ。
「無月」
「なに?」
数秒沈黙の後、有里は顔を上げ、にっこりと笑った。
「……爆弾は、先に処理しとくべきでしょ?」
「爆弾!?」
無月が悲鳴を上げて、反射的に数歩後退する。カプセルから距離を取るのは当然だろう。
「大丈夫大丈夫! 比喩よ、比喩!」
有里は笑いながらカプセルを軽く揺らす。無月は警戒しながらも、しぶしぶ元の位置に戻ってくる。
「も〜、冗談でも物騒なこと言わないで、、このご時世なんだから」
「ごめんごめん。でもね、、、」
有里は悪戯っぽく続けた。
「無月にしか解体できないんだよ。だから、よろしく♪」
「待って!?自分で作った爆弾を私に渡す!?」
再び悲鳴を上げる無月。しかし、有里は笑顔で沈黙している。
数秒間、無月はその場で固まり――やがてため息をついた。
無月は、有里のタイムカプセルを受け取った。
「じゃあ、開けるね?」
有里は頷く。
そして、有里のタイムカプセルを恐る恐る開いて行く。
そこにはーーー
「普通のものしか入ってないよ?」
無月は1つ1つ箱から出して行く。
少し古くなっているが有里の写真やおもちゃなどが入っているだけ。
久しぶりに見た物や過去を思い出す品ばかりだが、爆弾らしきものは入ってないように無月は見えた。
それを見た有里は、答えた。
「箱の下に紙入ってない?」
「箱の下?」
無月は、タイムカプセルの下の方を漁っていく。
箱の下に手が着いた時、紙の感触がした。
無月はそれを取った。
見た限り、よくある作文用紙だった。
「読んで」
有里に言われて無月は読む。
するとどうだろう。
最初は、少し微笑む無月だったがみるみる内に顔が青くなっていく。
無月は、有里をチラチラ見ていたが、
始終笑顔な有里を見て体が震え始めていた。
全て読み終わった無月の顔は、顔面蒼白だった。
ギギギと錆びた機械のように有里を見る。
そして、有里に大声で宣言する。
「わた、私は!普通恋愛派です!」
最初は、有里自身のことが書かれていた。好きな食べ物、将来の夢、好きな遊び、微笑ましい子どもの記録。
だが、段々と様子がおかしくなってくる。
無月の名前が繰り返し登場し、やがて、その内容は変質する。
「無月の笑顔は反則」
「不意に見せる真剣な横顔、ずるい」
「声、手、匂い、全部が好き。全部が欲しい」
「いつか無月を手に入れる」
作文の8割が、無月への愛と執着で埋め尽くされていた。
そして最後。
未来の有里自身に書き記した内容。
書かれていた内容は、
ーー未来の私へ。
大人になっても無月を射止めなかった場合は、次の事を厳命します。
〇れ
以上 過去の私より。
〇〇宣言だった。
あそこまで無月と離れ離れを嫌がる理由が判明した瞬間だった。
これを見た無月の心情は伺える。
それを知らない有里は追撃を掛けた。
「今の時代多様性なんだよね」
「強引な行動はよく無いと思います!」
「大丈夫、雲みてたら終わるから、さ?」
「大丈夫じゃないよ!?」
食われる上、〇〇宣言。
無月は、有里から逃れるため走り出した。
過去1番で走り出した無月は、音無神社の鳥居まで50メートルの所、
「私から、逃げても無駄だよ?」
既に、有里が無月の横に並走していた。
「はっ!早いよ!?」
「諦めて大人しくなって?」
そう言いながら、有里は無月を抱きしめた。
無月が離れようと暴れるが有里はびくともしない。
有里は、魔法を使えない。
しかし、身体が通常の人よりも何十倍も強かった。
身体能力が一般的な無月に叶う通りがない。
「無月が、私に勝てる確率ないから」
「離して!バクゴリラ女に酷いことされるー!!」
「それは、ちょっと傷つく、、」
無月の言葉に傷つきながら、音無神社の奥に進んでいく。
そこは、周囲から見えない草むらがある。
抵抗していた無月も無理と判断したのか、抵抗をやめた。
明らかな、諦めモードであった。
有里は、草むらの中に入り無月を静かに下ろした。
そして、有里は覆い被さった。
「覚悟はよろしくて?」
無月は、小さな声で呟く。
「、、、優しくして」
その言葉を聞いた有里は、無月の顔に近づいていく。
何をされるか分かった無月は、瞼を閉じた。
両者、吐息が聞こえる場所まで来ているのを感じていた。
しかし、数秒待っても唇に感じる感触はない。
代わりにカシャカシャと音が聞こえる。
恐る恐る無月は瞼を開けた。
そこには、
スマホで写真を撮ってる有里がいた。
戸惑う無月。
「えっ?何して」
「無月の写真げっーと!!」
急に大声を出す有里。
ビクッと無月の体は反応した。
有里の感情は収まらず続く。
「やっと手に入れた!一芝居するもんね!無月、いっつも写真撮らせてくんないから取れるのは二十歳前後になると思ってた!
それがまさか、こんな早くチャンス到来すると思わなかった!
無月の、キス顔待ち!めっちゃいい!可愛い!やっぱり造形がいいからかな?こう、女の私でもきゅんとくる!
さ!ら!に!この女になった顔!たまんない!
あっ、駄目だ男になっちゃう。心が男になっちゃう!」
無月は、訳も分からず有里のヤバい発言を聞いていた。
しかし、この体勢で感情が暴走している有里を待つまで聞いてられない無月は、声を出した。
「あ、綾瀬有」
「やっぱり襲うか?いいやだめ。落ち着くのよ綾瀬 有里。これは芝居。芝居よ!
昔の私だったら我慢できなかったけど、今の私なら我慢できる。待てができる女!
感情が抑えられない獣と同じだと舐めちゃー困るわ!」
「」
ダメだった。
今、無月に跨っている獣に声をかけるには時間が早かった。
「思い出しなさい!綾瀬 有里!私が、無月の写真を取ろうとした原点を!そう、あの日、無月といつも遊んでいた頃、私はー」
無月は、上にいる獣が落ち着くのを待つしかなかった。