12、ゲームBGM
更新が遅れて申し訳ありません。
m(_ _)m
「素晴らしい、三花ちゃん。この曲は発売して間もないはずなんだけどもう再現出来るんだね。」
ピアノのレッスンの先生が褒めてくれる。
僕はピアノを弾いている。
その内容は最近発売されたゲームの曲だ。前世の僕はピアノ演奏の才能が無い為あきらめるしかなかったが、今は三花ちゃんと言う強い味方がおり今世では僕自身の腕も上達している・・・はず。
確かにゲームソフト自体は発売して間もないが、前世の記憶のある僕にとっては聴きなじんだ曲の一つ。
この曲はレッスンの先生が担当したゲームの1本で、将来30数年にわたりロングセラーとなるシリーズの原点となる第一作目の全曲を弾いていた。
この当時はゲームの容量が低く1本のゲームに入る曲数が少ない為フレーズや曲調等色々な所に工夫が凝らしてあり、先生の偉大さを実感して前世では不可能であった作曲者の先生の前で弾ける事になるとは夢にも思わなく、弾き終わった後感極まって思わず涙してしまった。
「どうしたの?三花ちゃん。」
先生が僕の曲が弾き終わり突如として涙したのを気付き心配してくれた。
「いいえ。先生の前で弾けるなんて夢のようだから思わずうれし涙が出てしまいました。」
僕がハンカチで涙を拭きながら答えると、
「いやだな~。いつも三花ちゃんは僕の前で弾いてるじゃないか。」
先生が優しく言い聞かせて僕の涙が収まるのを待ってくれていた。
「いいえ。このゲームの曲は特別な思い入れがあるんです。そう・・・ずっと昔から・・・。」
僕の言葉の最後の方は小さく、先生には思い入れがあると言う所だけ聞き届けられた。
気を取り直して他のゲームのBGMを弾いた。先生の作品以外の曲も。
「このゲーム、僕もやりこんだな~。おっ?この曲は多分これかな?」
と先生とイントロゲームしたりゲーム談義をして今日のレッスンが終わった。
「三花ちゃんが言う通り、僕もいずれゲームBGMだけのコンサート等が流行ると思うよ。いや、僕が地道に努力して流行らせていこう。と言う事で、既にゲームミュージックコンサートの企画があってね、三花ちゃんにも招待状を渡そうと思っていたんだよ。一応三花ちゃんの家族の分は用意してあるけど他にもいる?」
と先生は自身のカバンの中からパンフレットを取り出し僕に渡してきた。
中を確認してみると『第1回ファミリーコンサート』と題して今僕が弾いたゲームの曲と先生の話があるらしい。そして封筒も貰いこれも中を見るとチケットが6枚、ちょうど家族分が入っていた。
「わ~い!ありがとうございます。先生。」
と素直に喜びの表情を示した。
前世でのファミリコンサートは人気が出て瞬時にチケットが売れて現地には行けず、当時コンサートの存在すらも当時の僕は知らなかった。大人になりネットが普及してからはネットで観る事が出来たが家でのんびりと視聴出来るがやはり現地での生演奏を聴きたいと思っていた。
「そんなに喜んでもらえるなんてとても嬉しいよ。」
僕の喜び具合から先生も気分を良くしてくれた。
「ではそろそろレッスンの時間も終わりだし、ここまでにしとこうか。」
書類等を片付け先生が言う。
その後家族にコンサートチケットを貰った話をすると兄や弟達はもちろんの事両親も喜んでいた。
「三花、でかしたぞ。」「三花お姉ちゃんありがとう。」
等々感謝された。
実は僕がこのゲームを強く推奨したのもあるけど、兄達や弟もこのゲームに興味を持っており僕以上にはまっていたからだ。PCやアーケードからの移植ではなくコンシューマーゲームとして製作されており、家族からも期待されていた。僕のピアノのレッスンの先生が関わっていると言うのも理由の一つだけど。
コンサート当日、僕は家族を伴って先生の控室に手土産を持って来ていた。
「先生、今日のコンサート楽しみにしていました。頑張って下さい。」
僕は先生に対して応援の言葉を掛けていると、兄や弟達が、
「すげえ~。本物だ~。三花は今までお世話になっていたのか。」
と、興奮気味で先生に握手やサインを求めていた。
「お招きありがとうございます。今回は家族皆楽しみにしていました。無事第1回コンサート成功する様願っています。」
とお父さんが代表して挨拶をして握手をする。ちなみにお母さんも握手をしていた。
「いえいえ、こちらこそありがとう。記念すべき第1回僕も頑張って成功させるよ。」
先生が笑顔を見せる。その時の表情は忘れられない物となった。
「ではそろそろ客席に向かいます。」
先生の関係者らしき人物が来て、そろそろ準備して欲しいと言う旨を伝えられたので僕達は控室を後にした。
まさに生の迫力は違う。ゲームでの曲もいいがやはりオーケストラで聴くのも良いと思う。
前世でCDを購入して何度も聴いたのを思い出すと思わず涙が出てきた。嬉し涙だけど、家族には『どうしたのか?』と心配されていたらしい。僕だけじゃなく、兄達も思わず涙を流していてこのコンサートに魅了されていた。
コンサート終了後控室に行くとゲームの開発者関係の人達がいた。
僕はもちろんの事、家族達も喜び記念撮影を撮らせて貰い、サインを貰ったり握手もした。そしてそれらは永久保存だと心に誓った。
約束されたヒットメーカーの方々との邂逅を喜んでいると、関係者の1人が言ってきた。
「君が先生の言う三花ちゃんだね。今後ともよろしくね。」
と僕の前に来て目線を合わせて言ってきた。『何の事だろう?』と思っていると、
「三花ちゃんのピアノで弾いていた先生の作曲したこのゲームの音楽とても上手らしいね。聞かせてもらったよ。いずれシリーズ作品が出てピアノ版のBGM集を検討中なんだけどぜひ三花ちゃんに弾いてもらいたいな。」
と嬉しい一言を言ってくれた。
僕は少し考えて、
「はい。ありがとうございます。その時はよろしくお願い致します。」
とおじぎをして礼を述べた。
「では後日、三花ちゃんの腕前を聴かせてもらおうかな。ご両親もそれでいいですかな?」
両親に聞くと、
「はい。こちらこそお願い致します。」
とお父さんが答えた。
「三花すげえぜ。」「三花お姉ちゃん素敵。」
と兄達も歓声を上げて喜んでいた。
そして僕のピアノの腕前をゲーム制作者の方々に聴かせる日が訪れた。緊張する面持ちで現場に向かう。
そこは先生のスタジオ。そこには関係者の名だたる人達がいて僕の腕前を今か今かと待ち望んでいた。
緊張する僕に対し先生が一言、
「緊張しないで、いつもの様に弾いてごらん。」
とアドバイスをくれた。そして『ふ~』と僕は息を吐き何とか緊張をほぐす事が出来た。
「ではいつもみたいに順番に弾いていってごらん。」
と先生からの開始の合図が送られる。それを聞き僕はピアノを弾きだした。
そしてOP曲からED曲まで弾き終わると関係者の方々に対し礼をする。
「どうですかな?」
「聞いた通りうまいですな。」
「では決まったね。」
僕はドキドキしながら判定を待つ。
結果はいずれクラシック版だけではなくピアノ版でもCDを出す時に弾いてもらうと言う事になり、僕はその栄誉にあずかり歓喜した。
CD版が出る頃は多分僕が中学生の時だと言う話だ。その時のお願いとして演者の名前はクレジットしない様にしてもらった。歌手としての芸名『みかん』でもよかったかもしれないが、伏せて貰う様に頼み込んだ。
そして月日は流れ・・・。




