2-1 まずパーティーメンバーを決めよう。
次の日、朝日が部屋に降り注ぐ中、ミミーはカリーナの部屋でカリーナに抱きついたまま朝を迎えていた。
昨日の夜急にさみしくなったミミーは自分の部屋に一人で入れなくなり、カリーナのベットにもぐりこんだ。
初めは驚いたものの、何か慈しみのような心になったカリーナはミミーを抱きしめるとそのまま夢の世界へと旅立ったのだった。
聖の日は原則お休みになるので町の朝は遅い。唯一朝から忙しい教会は、お祈りの時間になると敬虔な教徒の住民が集まってくる。しかし、ここピリーの店においては……どちらでもいい貴族が一人、微妙に歓迎されていない闇魔法術者が一人、教徒ではなくすでに教義そのものが一人、敬虔な教徒であるが教義そのものに抱きつかれているのが一人。当然朝から起きるものは無くいつもより3時間ほど長くベットで惰眠をむさぼり、のそのそと起きだした。
カリーナが着替えを済ませると、のそのそベットからミミーが起きてきた。
「さ、お姉ちゃん。お着換えしよう。」
「うん、ミミーお着換えする……。」
カリーナはミミーを部屋に連れていき。クローゼットを開けて錬金服を取り出すと、着せ替え人形のように着せ替え、髪を整えだした段々と目がしっかりしてきたミミーはツインテールを作られながら真っ赤になっていった……。
「カリーナちゃんありがとう……。」
すると髪を整え終わったカリーナがミミーの後ろから抱きつき。優しい言葉で声をかけた。
「うん、お姉ちゃん。私はそばにいるから、相談事があれば何でも言ってね。あといつでも甘えてね……。」
「ヴァイ……。ありがどうございまず……。」
「ほら、お姉ちゃん泣いたらせっかくの綺麗な顔が台無しだよ。」
そう言いながらミミーを慰めた後、二人で1階に下りて行った。
1階に下りるとミミーはいつもの調子を取戻しテキパキと朝の用事と朝食の準備を始めた。
(朝の教会のお祈りさぼっちゃったけど……。まぁいいよね。お姉ちゃんがいるんだもん。)
神そのものの精神的支柱となったカリーナが、教会へ行く理由はどこまであるのかは甚だ疑問ではあるが……。
ミミーが朝食の準備を終えた頃、ピリーとサーニャも下りてきて朝食となった。
「そういえば、ミミー今日は錬金服なんだなー。」
「そうなのですよ、メイド服は何着か持ってるのですけど錬金服はこの一着だけですし、普段着は無いし……。」
「じゃ、今日にでも買いに行くか?」
「待ってサーニャちゃん、この町の服屋さん、服屋さんというかどちらかといえば雑貨屋さんに申し訳程度に服を置いてあるって感じだよ。それに今日はお休みだからやってる雑貨屋さんも大通りの雑貨屋さんくらいだよ。」
「そっか。まぁ、今日はペニーの試験もあるし試験が終わった後色々と考えよう!」
「「そうしよ~」」
少女たちの会話を聞きながら、ほのぼのと朝ごはんを食べるピリーにはこの平穏がいつまでも続くものだと思えた。
お昼前、休日でにぎわう中央広場の冒険者ギルドに到着した少女3名は、意気揚々と中に入った。今日はここが試験会場ではあるが、昨日より少し人数は増えたものの閑散としたギルド内の一番端のテーブルに緊張した姿で一人待つペニーを見付け一同は駆け寄った。
「よっす、ペニーがんばれよ~」
「ペニーちゃん!ファイトだよ」
「へぇ……。こんなものまであるんですねぇ。内容は知ってますが……。」
ミミーはペニーの前に置かれたルールと書かれた紙をまじまじと眺めていた。
試験はギルド内訓練場で行われる。ルールは幻影のアーティファクト”キラメクワンダーランド”を使用して行う。戦後、冒険者ギルドのランク制を主張した勇者タクヤ作成のアーティファクトである。次々と出てくる幻影の魔物を無効化するか防ぎきればスコアが増えEスコア以上でクリアとなる。この装置Aスコアまで実は測れるのだが、ギルドではEランクに上がる為にEスコア、Dランク以降は依頼達成クリアポイントとDスコアという決まりになっているため、突然Cスコアを出してもCランクにはしてもらえない。これが冒険者ギルドのルールだった。ただ抜け道もあって、貴族またはギルドマスターなどから推薦を受けた場合はCランクスタートにする事も出来る。ちなみに他のギルドはギルドで色々な決まりを持っていた。
「ミミーも受けた事あるんだ?」
「まぁ、あることにはありますが……」
「じゃ、俺も受けてみてミミーより良い結果出さないとな!!」
((えっ??サーニャちゃんまだ気づいていないの!?))
「それもそうですね。ではペニーさんの後にスコアだけ測定してもらいましょうか。もう一人の方は今日は棄権されたみたいですし。」
そう言って壁に貼ってある試験名簿と、その後の自由測定の紙を眺めながらミミーもやる気だった。
(お姉ちゃんの測定って……。防御結界も大丈夫かなぁ……。)
しばらくして、支部長ことアルクがやってきて、訓練所に案内された。見学者はいつでも歓迎だし、サーニャが測定を名乗り出ると、アルクは快く見学者全員の測定を引き受けてくれた。サーニャとカリーナのスコアにも興味があるが噂で聞く最高スコアの持ち主のスコアも見てみたいのであった。
試験会場である訓練場には大きな長方形の線が引かれ、その線の外側に”キラメクワンダーランド”の操作端末が置いてあった。この端末、勇者タクヤが生産装置を作ってからは大陸中に配備され、ギルドがある大きさの町であれば大体1つ位は有るのが常識だった。
「じゃ、行ってきます!!」
「「「頑張って!!」」」
みんなに見送られてペニーは操作端末にパーソナルリングをかざすと中に入って行った。便利なものでその個人にあった相手が出てくるこの装置は、訓練にも試験にも申し分ない装置だった。
ペニーちゃんが定位置に着くと、目の前に10体のゴブリンが現れた。
「カウントダウンを開始します。3、2、1、スタート」
無機質な声の後、ゴブリンは一斉にペニー目掛けて走り出した。ペニーは盾をまっすぐ構えると、突撃してくるゴブリンを正面から盾で叩き潰していった。
時間こそかかるが確実な方法であった。
「ほう、やるな。さすがあの年でEランクを受けるだけはある、すべてシールドバッシュで潰す気か。」
アルクは自分の手元にあるモニター端末でスコアと状況を確認しつつ測定を見守っていた。
全てのゴブリンを叩き潰し終えると、次に空飛ぶ魔物であるキメラが2体現れた。
「ふむ……普通Eランク試験にキメラは出て来ないのだが、測定器が可能と判断したか……。全く便利なアーティファクトだ。」
キメラはペニー目掛けて氷の矢を放った。盾でしっかり受けたものの、ペニーの少しゆがんだ顔を見るにダメージは多少通ったようだ。
この測定器、受験者が全く無傷という訳では無い。大怪我はしないが多少の怪我はしてしまう。降参する時は枠から出るか、誰かが枠に入る必要がある。
氷の矢を受けきると、少し考えたペニーは驚きの行動を見せた。持っている盾を思いっきり振ると、そのままキメラに投げつけたのである。
盾を投げつけられた幻影のキメラは盾に潰され姿を消したが、しかし、もう一体のキメラが一気にペニーに接近した。
「ペニーちゃん危ない!!」
思わず叫ぶカリーナ。しかし突撃していたはずのキメラが二つに割れた。そこにはショートソードを構えるペニーの姿があった。そしてペニーが小さく魔法を唱えると盾が勢いをつけてペニーに向かい飛んでいき、再びペニーの手に収まった。
「計測終了です。お疲れさまでした」
「ふむ、やるな。新人とは思えないぞ。スコアもDランク相当と出ている。今後もしっかり依頼をこなしてくれれば、すぐにでもDランク確定だな。」
「ありがとうございます」
「「「おめでとう‼」」」
枠の外でアルクと少女たちに迎えられたペニーだったが、外のベンチに座り込んだ。
「でも疲れたー。」
「かっこよかったぜペニー‼ じゃあ次は俺が挑戦する番だぜ‼」




