1-12 日常のお説教そして伝説へ
ようやく気がついたものの、腰が抜けて動けないサーニャをミントが背負いピリーの店のリビングに到着した一同は、ワナワナと椅子に座り込み、ヴェロニカがお茶の準備を初めた。
「すいません、お手数かけます叔母様。」
「いいのですよ。皆さんが無事でしたらそれで……。」
「ミミーがあんなことになるなんて……。」
正直、悪魔に怖がっているのか幼女に怖がっているのかわからないサーニャをカリーナが介護しつつ、それを一同で眺めていた。
「それにしても、ミミー様がいてくれて助かりましたね。さすがにあなたたちでは防ぎきるのが限界でしょう。」
「ほんとあんなに重い一撃を受けたのは初めてでした……。私ピリーさんを盾代わりに使ってましたし……。」
「私確実に使われてたよね……。まぁ助かったんだけど……。」
「はい、皆さんお茶が入りましたよ。」
ミントが運んでくれたお茶を飲みつつ落ち着きを取り戻しつつある一同に洗濯機の音が響いた。
しばらくお茶をしていると、地下から綺麗になった悪魔が現れた。
「皆様お待たせしてすいません。」
「ミミーちゃん、さっきの悪魔は?」
「切り分けて綺麗に保管してあります。」
「ねぇ……。ミミー、本当にミミーなの??」
「私は私ですよ?」
そう尋ねてきたサーニャにミミーは近づくと……。眼を見開き……。
「ウヒャウヒャ……。ワタシに何かようかい??」
と思いっきりミミーはサーニャを驚かせると、サーニャは椅子から崩れ落ち腰を抜かしたまま半泣きになってしまった。
「うう……。ミミーが、ミミーが。」
ドン!!と突然机をたたく音がミミーの耳を襲った……。ミミーは振り返るとカリーナが座っていた場所には阿修羅が居た。
「お姉ちゃん!!そこに座りなさい!!」
「え……カリーナちゃん……」
「早く座りなさい!!」
「はい!」
阿修羅が小悪魔を床に正座させると、ゆっくりとやってきた……。その生ゴミを見るような目線は、小悪魔にぐさりと刺さった。
「何やってるのかな?お姉ちゃん?」
「えっと……。ちょっとした悪ふざけでして……。」
「ねぇ、お姉ちゃん。泣きながら心配してくれた人に、悪ふざけしていいと思いますか???」
「すいません……。」
「このままでは、私はお姉ちゃんと呼ぶのをやめた方が良いですかね?ミルミート殿下???」
「う……ごめんなさいごめんなさい」
ミミーはそのまま床に顔御付けてひたすら謝った。
「そもそも、おふざけが過ぎます。ミントさんにも無理やり事情も話さず着替えさせて、ひどいとは思いませんか?ミルミート殿下??」
「ごめんなざい……ごめんなしゃい……」
ミミーがすすり泣きになってきた。
「そもそも謝る方向が間違っていることに気づきませんか??ミルミート殿下???」
「ほんどうに、もうじわげありません……ごめんなざい……ごめんなざい……。」
ただの泣きながら土下座で謝り続けるミミーに毒気を抜かれたサーニャとミントは顔を見合わせた。
「おぉ……。」「あ……はい……」
「もうわるふざけじまぜん……ほんどうにじゅみまぜん……。」
「人の気持ちを、完全に理解しろとは言いません。ですが、理解しようとする心を人は忘れてはいけません。良いですね?ミルミート殿下?」
「ヴァイ……ほんどうにじゅみませんでじた……。」
カリーナは、ただヴェロニカが普段口にしていることを言っただけなのだが、正論とカリーナの”殿下呼び”に対するダメージはミミーには尋常ではなかった。ミミーは10歳のころより軍政に付き、軍の中でフィーという同僚は得たものの、どんなに失敗しても、どんなにやけ酒しても、どんなに大きな相手に勝利したとしても、どんなに技術を進歩させても、どんなに強力な薬を作っても、どう頑張っても、同じ目線で話してくれる良心は手に入らなかった。
最後まで支えてもらえる友人という人材に恵まれなかったミミーに、初めてできた友人だったカリーナの激怒はミミーに効果抜群だった。
「本当に、反省していますか?ミルミート殿下??」
「じゅみまじぇんでじた……。」
延々泣きながら顔を床にへばり付け謝り続けるミミーにカリーナは近づき、頭をなでながら優しく言葉をかけた。
「私たちだけでもし悪魔に出会っていたら命がなかったかもしれない……。ありがとう。お姉ちゃん。」
その言葉を聞くとミミーは顔をあげて、すがるようにカリーナに抱きついた。
「ごめんなじゃい……ごめんなじゃい……おねがいじまず、わだじをみずでないで……」
「見捨てたりしないよ、お姉ちゃん。」
カリーナに抱きしめて慰めてもらいながらミミーはしばらく泣きながら謝り続けるのだった……。
こうして、悪魔は無事に仕留められたのと同時にある伝説が生まれた。
魔王を倒し、大陸を駆け巡り世界を安定させた聖属性最強の精霊姫は、晩年、絶対に逆らわない人が居たと言う。
その者は、その良心を持って、精霊姫を時に支え、時に戒め、時に慰め、時に諭し、時に慈しみ。
世界をも改変する可能性のある精霊姫を生涯、御し続けた存在が居たことを。
これが世に言う『聖母カリーナ』の伝説の始まりであった。
ただ、この伝説が語られるのは、ここから200年以上先の話である。
とりあえずここまででプロローグという感じでお願いしま~す。
勢いで書くと恐ろしい文章にすぐなっちゃう……。ままならないものね……。




