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リベンジコイン!  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
序章 

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7/24

第7話 リベンジスタート

「よう。おはようオセロ」


「おはよう、ミーゼ」


 明朝、僕は雑貨屋に来た。

 ミーゼとその父親がカウンターに居る。ミーゼはいつものように頬杖をついてめんどくさそうにしている。町はいたって平和で、〈レキ村〉のことはまったく知らない様子だった。


 僕は左目を瞑りながらカウンターの方へ歩み寄る。


「今日は俺が店番やってやるから、お前はオセロとデートにでも行ったらどうだ?」


「うっせぇ親父、あたしらはそういう関係じゃねぇっての。それにな、コイツにはすでに愛しの姫様がいるんだよ。な! オセロ」


 そういえば、ミーゼには何度かヒカリの話をしたっけな。


「……うん、そうだね」


 僕は笑顔を作ってそう言った。


「そんで、今日はなにを買いに来たんだ? 卵か? ミルクか?」


「今日はね、アレを買いに来たんだ」


 僕は店に飾ってある剣――“棘の無い薔薇(フラットローズ)”を指さす。


「冗談言うな。お前にアレを買えるだけの金はねぇだろ?」


 ミーゼの父親が言った。


「これと交換でどうですか?」


 そう言って、僕がカウンターに置いたのは宝石で出来たコイン――“リベンジコイン”だ。


「そのコインはアルハルトンという宝石で出来ているそうです。売れば100万ゼラになると聞きました」


「……ちょ、ちょっと見せてみろ!」


 ミーゼの父親は虫眼鏡でコインを鑑定し、顔中に汗をかいた。


「すげぇ、本物だ! 採れる場所によって色が七色に変化する宝石、アルハルトン! 100万どころか、300万で売れる代物だ! それに“棘の無い薔薇(フラットローズ)”と違って買い手はいくらでもいる!」


「交換してくれますか?」


「もちろんだ!」


 ミーゼの父親は脚立に立って飾られた“棘の無い薔薇(フラットローズ)”を回収する。


「ほらよ。ウチの看板娘だ」


 親父さんから“棘の無い薔薇(フラットローズ)”を両手で受け取る。

 ズシ……と両手が沈む。

 思ってたより重いけど、ギリギリ片手でも振れるぐらいの重さだ。


 なぜ僕が“棘の無い薔薇(フラットローズ)”を買ったか。武器が欲しかったというのはもちろんだが、ただ単にリベンジコインを早く手放したかった。このコインを見ているとハムレットを思い出し、苛立ちが湧いてくるからだ。


「ほれ、これが鞘だ」


「鞘があったんですね」


「鞘というか、それを持ち歩くためのケースって言った方がいいかな」


 “棘の無い薔薇(フラットローズ)”の鞘はくすんだ緑色だ。雑草色とでも言うのか。

 鞘には肩掛けのベルトが付いており、鞘に“棘の無い薔薇(フラットローズ)”をしまい、ベルトを肩に掛けることで背負える。


「すみません、眼帯ってありますか? 左目を怪我しちゃって」


「あるぜ。おまけにタダでくれてやる」


「ありがとうございます」


 僕は親父さんから黒い眼帯を受け取り、眼帯で左目を覆って隠した。


 この“Ⅶ”が刻まれた左眼は目立つし、それに外気に晒すとヒリヒリして痛むのだ。……例え左眼を出していても眼に映るのは常に地獄だから、そもそも出す意味がない。


 眼帯で眼を隠すと、あの地獄の光景が霞んだ。良かった……これならなんとかメンタルを保てる。


「剣なんて何に使うんだ?」


 ミーゼが問う。


「狩りだよ。“棘の無い薔薇(フラットローズ)”を使って、狩りをするんだ」


「へぇ、イノシシでも狩るのか? あたしにも少しぐらい肉わけてくれよ」


「それは無理だ」


「え?」


「――骨一本残す気ないから」


 僕はミーゼに背を向け、扉へ向けて歩く。


 ヒカリ。僕にもできたんだ。命を賭けて、人生を賭けて成したいことが。

 

 ずっと、君以外のすべてがどうでも良かった。そんな僕が初めて夢を持った。

 いま、僕の胸の内にあるものこそが情熱と呼ばれるものなのだろう。


――ハムレット。


 必ずお前を見つけ出して、殺してやる。



「リベンジスタートだ……!」



 すべてはゼロに戻った。

 金も、故郷も、愛する人も、左眼の景色も、全て失った。


 あるのは一振りの剣と奴を殺すという夢のみ。


 僕の暗い感情とは裏腹に、空は晴れて、この冷えた大地に温かい陽光が差し込んでいた。



 嫌になるぐらいの冒険日和だった。



---序章 完---



ここまで読んでいただきありがとうございました!

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ここからめちゃくちゃ面白くなりますので、ぜひお楽しみに!

よろしくお願いしますm(__)m

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― 新着の感想 ―
[一言] 新作お待ちしておりました。 序章の引きはいい感じなので今後に期待です(`・ω・´)b
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