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だから剣聖は救われない  作者: ココア
第2章
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気持ちの整理

どうもココアです!!


久しぶりの連続投稿です。


「うーん……」


 爽やかな風が草木をなびかせ、清涼感ある雰囲気がある今日この頃。僕は、そんな爽やかな風が似合わないほど悩んでいた。


 あぐらをかいて、腕を組み、首を傾げながら悩んでいた。


「うーん……」


 あのとき、セリアが僕に抱きついてきた理由が分からない。“恩返しがしたい”と言っただけなのに、何故セリアはいきなり抱きついてきたのだろうか。


 正直、嫌だったとかそういう訳ではなかった。むしろ今すぐ飛び跳ねて喜びたいと思えるほど嬉しかった。いつもはクールなセリアが笑って、とても優しい笑顔で僕を抱きしめてくれた。

 彼女の鼓動が聞こえるほど、彼女の体温が分かるほど、彼女の香りが分かるほど密着したのは初めてのことだ。


「……」


 思い出しただけも顔が赤くなってしまう。自分自身が恥ずかしいことをした訳ではないけど、まさかセリアがあんな大胆なことをしてくるとは思わなかった。

 でも……純粋に喜ぶ事が出来ない自分もいた。


 僕は誰かに優しくしてもらってはいけない。今を生きているのはセリアが助けてくれたおかげだ。僕を助けた本当の理由は分からないけれど、きっとセリアが優しいからだ。僕はセリアの優しさで生きることが出来ている。生きていることは正直に言って嬉しい。


 あのとき、朦朧とした意識の中“助けて”と懇願したのは僕の本心……というより、生き物としての生存本能と言って良い。


 でも、本来なら僕は死ぬべき人間だったんだ。死んだ方が良かったんだ。


「でもセリアは僕を受け入れてくれた……」


 受け入れてくれて嬉しい、と素直に喜ぶことができない。むしろ拒絶してくれた方が楽だった。拒絶して、罵って、貶して……僕のことを殺して欲しかった。


 ダメだ。僕はまだ矛盾だらけだ。嘘と本当が入り交じった僕の考えは、結局どれが正解なのか分からない。


――でも、僕が死んだ方が良いということだけは分かっていた。



◆◆◆



「ねえセリア」


「どうした?」


 見張りの仕事をしているところで、同じ仕事をしているティアラが声をかけてきた。ティアラは昔から能天気と言うか、後先考えずに行動することがあって私も何度も振り回されたか分からない。でも放っておけないのが私の性格で、なんやかんやで手を貸してしまう。


「この前やってきた彼、一体どんな関係なの?」


 ティアラは目を輝かせながら訪ねてきた。……いったい何を期待しているのか分からないけれど、きっとティアラが期待しているような答えを返すことは出来ないだろう。


「どんな関係と言われてもな、ただ私はヨグの傷を治しただけだ」


「本当に~?」


「……」


 からかうような表情を浮かべながら、こちらの顔を窺うティアラ。……落ち着け私の右手。ティアラのことを殴るのはまだ早い。


「実は見ちゃったんだよね」


「何をだ?」


「セリアがあの子を抱きしめてるところ♪」


「~~~~~!!!」


 妙にニヤニヤしていたのはそういうことだったのか。一瞬、何の話かと誤魔化そうとしたが、自分でも驚くほど動揺してしまった。


「全く~普段はクールなのに、ああいう時は積極的なのね」


「ち、違う!!お前が考えていることではない!!」


「ええ~?私が考えてることって、何だと思ってるの??」


「うっ。そ、それは……」


 言葉を出そうにも、言葉が出てこない。いつも通り話すときのように口を開くが、喉のところで言葉が詰まって出てこない。


「……ティアラはどうするべきだと思う?」


「えっ?」


 やっと出てきた言葉はとても震えていて、それでいて弱々しかった。ここまで自信を感じられない声が出せるのかと、自分でも驚くほどだ。


「私はどうするべきだと思う?」


「それは私が決めることじゃないよ」


 私の質問に対して、ティアラは真剣な表情をしていった。さっきまではニヤニヤと、人を小馬鹿にするような態度をとっていたのに、今度は真剣な表情で私の目を見ながら言った。


「セリアはどうしたいの?」


「私がどうしたい?」


「彼とどうしたいの?彼のことをどう思ってるの?」


「それは……」


 どう思っているのか。そんなことは聞かれなくても答えは出ている。でも、それを簡単に口にすることはできない。それはとても特別な言葉で、安易に口にしてはいけない言葉だと思っているから。


「言えないんだね」


「……」


 私がずっと黙っていたからか、察したようにティアラが言う。すると、私の右手に自分の左手を重ねてきた。

 思わずティアラのことを見つめると、ティアラはこの木の上から見える一番遠くの景色を見ているようだった。


「セリアが言えない理由、何となくわかるよ」


「ティアラ?」


「昔からずっと一緒だからセリアが考えていることなんて、大体分かるよ」


 そう話を切り出したティアラが私の方を向いて、頭をポンポンと叩いてきた。


「セリアにとっての“好き”はきっと、私が思ってるよりもずっと特別な言葉なんでしょ?」


「えっ――」


――思わず『なんで?』という言葉がでそうになってしまった。


「誰かを好きになる……。それは特別なことで、それを分かっていても口には出せない。口に出してしまったら認めることになるから。だから、ちゃんと自分の中で“特別”だっていう判断がついてから、言葉にしようと思ってるんでしょ?」


「ティアラはどこまで知っているんだ?」


 怖くなるほど、私が自分の心に抱いている考えと一致していた。本当に私の心を覗いたように、私の心の声が聞こえているようにティアラは、私の全てが分かっているようだった。


「セリアはクールで表情とかも出にくいけれど、だからこそ分かることもあるんだよ。本当に可愛いくらい表に出ることがあるんだよ」


 その一つが、この前ヨグを抱きしめていたことだと言うティアラ。


「セリアが好きっていう言葉を、その想いを何よりも大事にしているのは分かっているけど、伝えないと相手には伝わらない。

 心の中に留めておいていい好き何て無いから、早く伝えた方がいいよ」


「わ、私はあいつのことを好きだと言ったつもりは……!!」


「あるよ。だって、セリアがそんなことで悩んでいるの何て初めてでしょ?」


「それは……」


 確かに思い返せばティアラの言った通りかもしれない。私がこんなことで悩んでいることなんて初めてのことだ。


「今まで出会った人では感じなくても、彼には感じることができた。それを理解しているなら、もう答えは出てるんでしょ?」


 ティアラは最後の最後まで、私に答えを出させようとしていた。それも無理に吐かせるのではなく、優しく背中を押すように追い風をかけるように、私に勇気を与えるように。


「ありがとうティアラ。私はもう悩むのは止める」


「その方がセリアらしいよ」


「ああ」


 私もそう思う。こんなことで悩むのは私らしくない。だから、この気持ちも嘘なんかじゃない。わざわざ慎重になることもでなかった。ただ、認める勇気がなかった。


 でも、その勇気をティアラがくれた。だから私は今日、ヨグに伝えよう。今の私が抱いている全てを。

読んでいただきありがとうございます!!


次回もよろしくお願い致します。

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