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弟の一大事Part1



それは、数年前、智史が小学五年生あたしが高校の時の話だった。



最近、弟の様子がおかしい。前は、家に帰っても、すぐに遊びに出かけて、脱兎の如くいなくなるのに、このごろは、部屋に閉じこもっているし、ご飯もあまり食べずで元気もない。

実は、あたしは、この年の離れた弟が生まれた時は、かなり嬉しくて、とにかく構いまくった。しかし、小学生のあたしがおぼつかない、抱っこや世話を無理やりした結果。何度も危険な目にあった為、智史にとって、あたしは、恐怖の存在でしかなく、あたしの顔を見ると怯えの表情を浮かべ泣いていた。それが、更に可愛くて、しつこく構っていた。大きくなっても、何かと弟にちょっかいをかけるのは、あたしの趣味で、嫌がられると分かってても、ついつい構ってしまうのが日課だった。←ある意味拷問

しかし、最近、何をしても反応が悪い。

(どーしたんだ?張り合いがない)

気になった、あたしはママに聞いてみた。

「最近、智史おかしくない?遊びに行ってないみたいだし」

ママは、難しい顔に変わった。

「うーん、そうなのよ…。それに学校から帰って来るのも遅くなったのよ」

「えっ?そうなの?じゃ帰りに遊んでくるとか?」

「そんな訳では無いみたいなのよ」

「学校で何かあったとか?」

「そう思って、先生にも聞いてみたんだけど、そんな事は絶対ないって言うのよ。智史のクラスの級長はしっかりしてて、団結力も抜群だって…」

「ふーん、そうなの…じゃ遊び仲間とか?」

「かしらねぇ…」

「これは、調べてみる必要があるんでない?」

「でも、帰ってきたら家から出ないし」

「確かに…。でも、学校から帰るのが遅くなったのも変だよ」

「そうね…」

ママは、かなり心配してる様子。

「あたし、後を付けてみようかな?」

「未来が?」

「そう、帰りが遅いなら、それに理由があるかもじゃん」

「確かにそうね。でも、未来の方が学校から帰るの遅いじゃない」

「大丈夫、明後日から試験前で半日になるから!」

「じゃ、じゃあ未来、そうしてくれる?」

「わかったわ!その代わり試験の成績が悪くても怒らないでね」

「そっそれは…」

「佐藤家の可愛い長男とあたしの一回の試験の成績とどっちが大切なのよ!」

「あなた、そんな事を言っても、半日帰りでもあまり勉強してないじゃないゲームばかりやって!」

「うっ…」

「まぁ、でも取り敢えず智史の事が心配だわ。ママが後を着ければ、見つかってしまいそうだし…」

「そうねぇ、ママの鈍臭い足で小学生の尾行は無理だよねぇ」

「ちょっとぉ、何て事を言うの!ママはこれでも中学の時はバスケ部で…」

「わかった。わかった。好きな人がいるからバスケ部に入って頑張ったんでしょ?ママの恋バナなんて、どうでもいいよ」

「うっ…」

「取り敢えず、智史の事が優先よ!尾行よ尾行」

「そうね!頼むわ」

「ガッテン!承知だ!」

胸を叩いて、引き受ける。

「そうそう、尾行するなら服装も何とかしなくちゃね」

ママが言い出す。

「えっ?何で?」

「だって、小学校は、家から30分もかからない所よ。誰か御近所さんが見てたら、まずいじゃない」

それもそうだ、小学生には顔見知りもいる。あたしだとバレては尾行も、おじゃんだ。

「でも、変装なんて、どうしたら…」

「あなたの服は派手すぎるのよ。私のを着ていけば?」

(えっあのダサいオバサンの服を…)

一瞬、怯んだが致し方ない。ママは二階に行き、自分の服をひと揃い用意して降りてきた。

「ちょ何これ!」

「何これって、ママの若い頃の服よ」

白のリボンブラウス、花柄ふわふわのロングスカート、しかもダサい。

「いくら、なんでも!こんな昭和レトロみたいな服は…」

あたしは、あからさまに嫌な顔をした。

「失礼ね!昭和じゃないわよ。これはね!パパと初めてデートした時の服なのよ」

ちょっとハニカミながら、当時を思い出すように語る母親

「うぇ〜、だから、そんな恋バナは、ええっちゅうねん、他にないの!」

「……無いことは、無いことも無いけど」

なんだ?この歯切れの悪さ

「サイズが…」

(はっ!)

あたしは、ママを上から下まで見た。特にお腹の辺り

「ちょっと、何、見てんのよ!」

「いや、何も…。この服でいいわ」

「後はサングラスも必要ね!」

「確かに面が割れたら変装も無意味だし」

ママは今度は、どこから出してきたのか、茶色のサングラスを持ってきた。

「これで、準備はオッケーね!」

「明後日ね、時間割を見て大体の時間に行かなきゃ!」

尾行と言う秘密裏の行為に、弟の心配を忘れて、すっかりテンションが上がる母と娘であった。



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