みっちとゼフィー兄さん
「あれ…ここは、どこ?」
俺の背中のさっちゃんが起きた!
「ああ、さっちゃん。熱があるみたいだから、家まで送ってく途中だよ。…さっちゃん!?」
さっちゃんが、俺の背中から降りた。
「もう一人で歩けるよ…。ここまで負ぶってきてくれてありがとう。ごめんね…僕、重くなかった?」
「大丈夫だよ、さっちゃん軽いから!…本当に一人で歩ける?」
「うん…。」
さっちゃんの足取りはおぼつかなくて…。俺は、さっちゃんの身体を支えながら歩く。
「ごめんね…みっち。」
「気にすんなよ。」
その時、さっちゃんが倒れそうになった…!俺は、さっちゃんの身体を抱き留めた。さっちゃんのメガネが地面に落ちた…。
「さっちゃん!?…大丈夫?」
俺は、さっちゃんの顔をのぞきこむ。そして、さっちゃんのまつ毛の長い…黒目がちな瞳が…俺の瞳に飛び込んでくる…。ヤバい…さっちゃんの瞳に…心を奪われる!…ああ、なんて…綺麗なんだろう…!!
熱で頬が紅潮していて…瞳が潤んでいて…。本当に…さっちゃん、男なの!?…だって、何で…こんなに…!!
「みっち…?」
さっちゃんの…小さな…赤い唇が…昨日、触れたあの…薄いけど柔らかい唇が…。どうしよう…また触れたい!…俺は、さっちゃんの顔に、自分の顔を近づけて…。
その時、俺の首根っこを後ろから誰かに掴まれた…!?
「おい、お前…俺の弟から離れろ!!」
「へ…?」
後ろを振り返ると…そこには、黒髪を後ろで一つに束ねていて、怖い顔をした黒い瞳の…背がとんでもなく高い…スーツ姿のおじさんが立っていた…!?そして、そのおじさんは、片方の手で俺の首根っこを掴んだまま、もう片方の手で、俺の腕の中からさっちゃんを奪取する!!
「…痛いです!離してください!!」
「お前、俺の弟に何をしようとした?」
「ゼフィー兄さん、誤解だよ!この人は熱がある僕をここまで送ってきてくれたんだよ!」
「…ゼフィー兄さん?このおじさん、もしかして…さっちゃんのお兄さん!?」
「おじさんは、やめろ!俺は、こう見えても一応20代だ!!」
このス●ィーブン・セガールみたいなおじさん…改めお兄さんが、ゼフィー兄さん!?
―星空荘、1階食堂―
「弟から事情は聞いたよ。先ほどは、すまなかったね…。どうぞ。」
食堂のテーブルに着く俺とゼフィー兄さん。さっちゃんは、自室で寝ている。ゼフィー兄さんがお茶を入れてくれた。
「…いいえ。ありがとうございます。」
ああ…。首のあたりがまだ、じんじんする…。ゼフィー兄さん、力強すぎ…!!
洸の下宿先であり、さっちゃんのお家であるこの『星空荘』は、2階建ての建物で、1階がさっちゃんの家で2階がアパートになっている。住人は、ほぼ月影高校の学生らしい。
「弟は、昔から、あの容姿のせいか、なぜか女の子からよくいじめられたんだ…。」
「ああ、それは洸から聞きました。」
「男子校に行けば、いじめられなくなると思ったんだけど…。まさか今度は、同性からいじめられるなんてね…。」
ゼフィー兄さんは、さっちゃんに比べると厳つい顔をしていているけど、なかなか男前で…まさに和製セ●ールって感じだな…!それに、顔もどことなくさっちゃんに似ている…。声は、大●明夫みたいで渋くてかっこいい。でも、この人いくつなんだろ…?一応20代って言ってたけど…。
「そういえば、自己紹介がまだだったね。俺は、サイサリスの兄の星空ゼフィランサスだ。仕事は一般企業のサラリーマン兼このアパートの管理人だ。君は?」
「俺は、星空君と同じ月影高校1年の藤田みちるです。」
「今日は、弟を助けてくれてありがとう、みちる。これからも、弟と仲良くしてやってくれ。」
ゼフィー兄さんが右手を差し出す。俺も、右手を出して握手をする。
「はい。お兄さん。」
その時、ゼフィー兄さんの握手に力が入る!…痛い!!
「…お前にお兄さんと言われる筋合いは、ない!!」
「すみません…!!」
「ところで…さっき、弟が倒れそうになった時、弟を抱き留めた後…俺の弟に何をしようとした?」
握手にさらに力が入る!!…だから、痛いって!!
「いえ、何も!!…あの、すみません、そろそろ手を…。」
「俺の弟に何をしようとした?」
「本当に何も…いかがわしことは、しようとしてません!!だから、手を…。」
「いかがわしいこと?」
ゼフィー兄さんが、殺意を込めた瞳で睨んでくる…!!この人、絶対普通のサラリーマンじゃないよ…。何人も殺ってる人の目だよ…!どっかの軍の特殊部隊にいた人だよ!!…悪の組織とか企業を1人で壊滅させちゃう人だよ!!
誰かが玄関から入って来た!
「ただいまー!!あれ、ゼフィー兄さん今日早いんだね!…ああ、みっち!さっちゃんは?」
洸…良いタイミングで帰ってきてくれた!!ゼフィー兄さんの手が少し緩んだ隙をついて、手を抜く!
「おかえり、洸。今日は仕事が早く片付いたんだ。洸こそ、早いな?弟なら寝てるぞ。」
「みっち、さっちゃんを送り届けてくれてありがとう!…俺、さっちゃんのことが気になって部活少し早めにあがらせてもらったんだ!」
「それじゃあ…俺は、これで帰ります。」
「みっち、もう帰っちゃうの?」
「みちる、良かったら家で今日のお礼も兼ねて夕飯、食べていかないか?」
「ゼフィー兄さん、料理上手いんだよ!!このアパート朝と夜は、ゼフィー兄さんがご飯作ってるんだ。俺、ゼフィー兄さんに料理を手伝いながら教わってるんだ。」
「キッチンじゃ負けたことがないんだ!!」
「いいえ!!せっかくですが、母が夕飯用意してるんで!!さよならー!!」
毒でも盛られたら大変だ…台所が、die所になるよ…!




