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問題編

共通プロローグ企画参加作品です。




 夜半に降り出した雪は眠るように横たわる一人の女の上へ、まるで薄衣を掛けたようにうっすらと積もった。

 一面の白に反射した光が彼女の黒髪を照らしている。

 音すらも包み込む静かな雪の中、一人の男が近づきそのまま彼女の脇に屈み込んだ。

 それに合わせ装身具が冷たい音をかすかに鳴らす。

 男は剣をしまうと目を閉じたままの女の息を確認し、彼女を抱え上げた。

 青白い頬に血の気はないが、少なくとも生きている。急がなければ――。 

 力強く雪を踏みしめ、男は足早に来た道を戻っていった。 





 ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆




大方、こんな具合が、一つの事件の終わりで、もう一つの事件の始まりやったんやろうな。

あん?自分は誰だって?

アラン=ゴストワール、しがねぇ警察の一課所属の刑事や。その割には、ロマンチックな文章だって?

元々、文学部から法学部へ転入してエリートになり損なっちまった奴やからな。

 は?小汚い古○任○郎か、痩せた刑事コ○ンボ見てぇやって?

 異世界からの連中は揃ってそう言いやがるな。

 ついでに言うなら、自分の口調が関西弁っぽいってのもな、確かこの国の西部の生まれだが。

おう、異世界の連中は大概、こっちに来たらここ十年はこの警察にお世話になんだ。

 お前さんみたいに事件の参考人になんのは珍しいけどな。

 多分、元の世界に戻れんやろが、罪は罪やからな。

 ・・・なんや、だんまりかいな。

 一応、女性の日記が残ってるからやりやすいんだが、概要行くぞ。



 ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆



 私は、今日見覚えの無いこの部屋で目覚めたの。

 窓から見えた外は、雪が降っていた。

 そして、記憶が全く無くて・・・正確には、『私』が誰かが解らなかったわ。

 残っている一番古い記憶が直近だろうけど、雪原で気を失っていた私をレオンが拾ったところから。

 モノの名前なんかはわかるけども、自分に関する記憶が無い状態。

 ベッドとクローゼット、棚だけの寝室らしき部屋に閉じ込められているのかわからないけど、鍵の掛かったこの部屋に『私』が誰かを示すものは無かった・・・と思う。

 姿見があったから、それで外見がわかったぐらいかしら。

 ぱっと見真っ黒な闇色っぽい色合いの腰を超えた紫みのあるロングヘア。

 瞳は、ハシバミ色。可愛いよりも綺麗系な3:7だとは思うけど、自分の顔って言う自身は無いわね。

 着ているのは、地味な下着とネグリジェとでも言うのだろうか、コットンかリネンのパジャマワンピースだった。

 若干サイズが大きくて、丈含めてあまっている。

 一応、若干私が、小柄といっても自分では買わないだろうと思うような、そんな感じ。

 う-んと、彼シャツっていう感じが一番近いかしら?

 女物だけど、手の先が全くでないし、下手しなくても方がずり落ちそうって言う意味合いで。

 どうやら、私の名前は『リサ』と言うらしい。

 旦那様らしき、超イケメン―――レオンがそう言って来た。

 多分、夕方かな、仕事帰りっぽい感じで剣を吊ってたから宮仕えかもしれない。

 金髪碧眼でこれで、白馬に乗って来てたら、正しく王子様って感じ?

 話からすると庶民っぽいけど。

 




              ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ 



 なにかおかしい。

 目覚めてから数日が過ぎたんだけど、何かおかしい。

 一日中、寝っ放しなのは病み上がりのせいだとしても、おかしい。

 レオンが、奥さん=私のことを話すとき、あの人は私を見ていない。

 勿論、覚えていないから、その違和感かもしれない。

 だけど、それだけじゃないかもしれない。

 全く覚えていないって以上に、別のところ見ているかもしれない。



              ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ 



 レオンが、寝ている時に別の人の・・・最愛の人を呼ぶようにだけど、私じゃない人のように『リサ』の名前を呼ぶ。

 思い出してはいけないかもしれないけれど、思い出したいとは思う。

 けど、思い出してしまったら、この生活が終わってしまうかもしれない。

 ・・・・・・もしかしたら、朝に渡されてる薬が何か関係あるのかもしれない。

 それをのんだら、眠くなるんだしタイミングを見計らって、飲まないでいてみよう。

 トイレに流せば、解らないだろうから。

 うん、思い出して後悔するくらいなら、そのほうがいい。



 

              ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ 



 私の両親が、レオンの奥さん『リサ』さんを殺したらしい。

 と言っても、殺人ではない。

 私の両親は、病院を経営している。

 結構大きな病院で、その一人娘が、私・リーゼ=バルシュミ-デ。

 そして、その担当患者の一人が、『リサ』さんだった。

 ローリスクな治療ではもう、命が危うくて一か八かの治療で、どうにかしようとしたらしい。

 でも、ダメだった。

 それを恨んだレオンが、私を誘拐したらしい。

 ・・・どうしよう、それでも、私はレオンを嫌いになれない。

 だって、記憶が無い私なんて赤ん坊みたいなものよ?

 なのに、なのに、優しくしてくれて・・・それでどうして嫌いになれるの?



            ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ 



 オレは、真名瀬利史まなせ・としふみ

 医者の家系で旧家な本家に生まれた次男だ。

 兄貴が利和としかず、姉貴が利世りぜ、双子な妹達が利沙と利穂の五人兄弟の真ん中だ。

 若干、シスコンをこじらせてて、マジに小さい頃から『娘(姉妹)を嫁にしたけりゃ、俺を倒してから行け』と親父とタッグを組んでるぐらいだからな。

 私立中学に入ってそのまま、高校上がって大学で遊んで、大学でついでに法医学学んだらそっちに進んだ変り種のひよっこだ。

 うん、珍しいのは知ってる、一つ先輩がアラサーだから。

 どこにでもいるわけじゃないけど、まぁ、居ないこともない新米だ。

 盆正月に帰れば、兄貴の子どもと妹達に小遣いお年玉をせびられるしな。

 ・・・・・・一つだけ、特異なことをあげれば、姉貴がオレが十歳の頃に行方不明になったこと。

 ついでに、誘拐犯からの連絡もないし十年以上経った今でも遺体は見つかってないこと。

 それでも・・・・・・それでも、忘れかけていたんだぜ?

 二十も半ばも過ぎて、異世界トリップする医者ってどこのなろうだよ!!ってとこ。

だけど、オレはオレのしたことを後悔してないし、することはない。







            ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ 






   さて、ここで、問題です。

   

   Q1 リーゼは、どうなった?

   Q2 異世界トリップ青年・真名瀬利史は、何の事件の参考人になった?



   そして、利史はどうするでしょう?

   

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