第五十一話 山の民と森の民-7
「あれ?確かにここだったよな?ドワーフどもは確かにいるし間違いないはずなんだが……」
さっきのキャンプ跡に転移してきた。
が、あのエルフがいないんだよ。
どう考えても首謀者なのがいないとなると困るな。
他のエルフもいないしどうなってるんだ?
……ドワーフだけでも連れていくとしようか。
それじゃあ伸びてるドワーフを一ヶ所に集めて一気に治療、もとい改造する。
火傷と足を改造した後にまとめて転移する。
転移したのを確認した後に俺自身もさっきまでのところに転移しなおす。
再び喧嘩現場に到着。
そして真っ先に俺の眼に入ってきたのは膝を地面について頭を抱えている姫さんの姿だった。
「……長老、詳しく話を聞かせてくれないか?ちょっと今の状況が理解できない。俺は少しの間離れていただけだったのにどうしてこんな状況になった?」
確かに説得(精神攻撃)とは言っていたが……
ここまでひどいことになってるなんて聞いてない。
「長老、早くこの状況を説明してくれ」
「せっかちは損をしますよ?でもこの状況で困惑するなという方が無理な話ですか。それでは簡単に説明しましょうか」
長老が分かりやすく説明してくれる。
まとめて話すとこんな感じだ。
まず最初に長老は自分らがエルフたちの先代女王を殺す理由がないことを話したとのこと。
それでも止まらないのは明らかなのでここで何とエルフたちの一部が結束してしていたことを明かしていたらしい。
それで姫さんが動揺したので一気に姫さんが知らない情報を明かして畳みかけた結果こうなった、らしい。
「はぁ。で、長老はこれからどうするつもりだ?取りあえずドワーフの方は持ってきたが……」
「ああ、エルフたちの方は回収されてしまっていたのでしょう?」
「なぜそれを知ってるんだ!?」
長老なんでもお見通しすぎだろ!
正直怖いわ!
こんなに怖いと思ったの玉依さん以来だよ!
……いや、玉依さんのほうが怖いけどさ。
「いや……いや………」
姫さんは何かつぶやいてるしもうやだこの状況。
「エルフたちだけが回収されていたということは私たちがやっていたことはばれていたということですか……こうなったら本格的にあなた様のお力をお借りしなければならないようです」
「えーとだなぁ。取りあえずさっきから言っていた今回の出来事について詳しく聞かせてくれ」
「わかりました、今は私たちを信用してもらうことが第一となりましたので全てをお話ししましょう」
そして長老は話を始める。
「まず最初にですが……これは気付いておられるようですがエルフと我々ドワーフの一部が結束し一族の長になろうと企てている者たちがおります」
ああ、それは知ってた。
というか前提として考えていた。
「…ですが実はドワーフの方は私の手先だったのです。彼らの動きを私に教えてくれていたのんですよ」
これは初耳。
「彼らの報告によると今回の出来事は“とある人間”が引き起こしたものだそうです。その人間はここから東南東の方角にある小さな村に住んでいるそうで……もうお分かりですか?」
「つまりその人間があのエルフを唆して今回の事を起こしたと?」
「察しが良くて説明が楽ですね。これだから頭の良い人と話すのは楽でいいですねぇ」
正解だそうだ。
ここから東南東……あいつか。
「俺の力を借りたいということはその人間が“アンデット”を引き連れて来ることを恐れているんだな?」
長老は驚いた表情を見せ、こう言った。
「…そこまですでに知っておられるとは……ともかく知っておられるのなら話は早いですな。力を貸していただけますか?」
「……ついで、にな。だが俺がそいつ等を潰した時にはドワーフの一族は俺の傘下に加わってもらうぞ」
「構いません、一族が人間に乗っ取られるのはどうしても避けねばなりませんから。何より後ろ盾ができるのは私たちにとっても喜ばしいことなので」
つまり敵も倒せて強力な後ろ盾も得られて一石二鳥というわけか。
この長老、一度玉依さんとどっちが賢いか競わせてみたいものだ。
でも俺にとっても悪い話じゃない分やっぱり玉依さんほど腹黒ではなくてもいい勝負にはなるだろう。
「それで、いつごろ人間が来るのかはわかってるのか?」
「それがなんですが、実は武装した人間達が敵の人間の方に向かってるという報告がありましてですね」
ああ、闘技場でに軽く流した情報をもとにその場所を何とか見つけ出せたんだな。
もうちょっと早かったら俺が行かなくても済みそうだったんだが。
無能な奴らめ。
………俺が場所のヒントすら教えなかったのも原因の一つだろうが。
むしろよく見つけたと言ってやるべきか?
あいつら人目につかない陸の孤島というべきところに住んでるからなぁ……
それは置いといて、だ。
「つまりその人間どもが敵の方を攻めるからそれが終わるまでは大丈夫だと?」
「そういうわけですね。もっとも人間どもの方に勝ち目はないでしょうが」
「そうだな、死体を相手にしてるのにただの人間が勝てるわけがないだろう。しかし俺個人としてはその敵を調べたいのでそいつらと戦闘が起こり始めるのも面倒くさいな」
「研究熱心なのですね。……どんな研究なのかは追求しませんが」
「懸命だな、下手に訊いていたら狂気に陥ってたかもしないからな」
「それはそれは、怖い怖い」
「「はっはっはっはっはっはっはっはっはっは」」
場が和む。
研究とはいっても解剖なんかはしないから安心しろ。
ちょっと精神面や記憶から情報を引き出すだけだから。
「さて、それじゃあ俺は早速向かうとしよう。…ここは任せてもいいか?」
「この輪があれば向こうも手出ししてこないでしょう。さすがに現族長を殺すような行為はできないでしょうし」
「なるほどな、じゃあここは任せた、たぶん一日程度で戻って来られると思うが……もしかしたらもっとかかるかもしれん。その時は何とか頑張ってくれ」
「一日だけでも大変なのですがねぇ……まぁ経験の甘い子供なんかにやられたりはしませんよ」
長老は笑みを浮かべてそう言ってきた。
これなら安心だな。
俺は敵の方へと向かうとしよう。
こうしてあの人じゃない人間たちの方へとつながります。




