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第二十九話 恵の家出-1

 途中から恵ちゃん視点に変わります。恵ちゃんの出番最近多すぎるような気が…………気のせいでしょうかね?

 眠りから起きた瞬間はいったい何が起こったのかさっぱりわからなかった。自分の部屋の床に少女が二人、巫女姿の女性が一人酒瓶を持って寝ているのだ、逆に何が起こったのか推理できる人がいたら教えてほしい。


「む、起きましたか?マスター。」

「それはこっちのセリフだアルマ、一体ここで何があった。」

「昨日マスターが寝た後に私たちでこの人の待遇を決めていたのです。最初は普通に話し合っていたのですがいつの間にか酒盛りを始めていまい――」


 この有り様か、何故ここの住人は酒を平気で飲めるんだ?俺は下戸なんだけどな、さすがに酒の匂いでは酔ったりはしないが。


「とりあえず二人に起きたら隣の部屋に来いと言ってくれ。」

「了解です、マスター。」


 アルマに任せて管理人室に行く。あいつら酒臭いんだよ!どんだけ飲んだんだよ!!!




「あ、おはようございますご主人。」


 恵がテーブルに食事を並べていた。魔族は食事をとらなくても生きていけるため、食べ物は嗜好品になるのだが恵は毎日三食とっているらしい。


「おはよう、フィーは自分の部屋か?」

「いいえ、ここに居ます。」


 上から声がする、見上げると天井に立っていた。忍者かこいつは。


「驚きましたか?マスター」

「はいはい驚いた驚いた。だから早く降りてきてくれ、目のやり場に困る」


 フィーはなぜかミニスカートでいることが多く天井に立ってたりするとパンツが丸見えになる。


「大丈夫です!マスターになら見られても恥ずかしくありませんので。」

「そういう意味じゃない、いいから降りて来い!」

「はーい、わかりました」


 逆さまのまま降りてきて床ギリギリで宙返りで着地する。そのせいですぐ目の前にフィーのパンツが……。


「あれ?マスター顔が真っ赤ですよ?どうかしましたか?」


 フィーがにやにやしながら聞いてくる、確信犯なのでお仕置き部屋に飛ばす。

 お仕置き部屋はだいたい一辺二メートルの立方体の部屋で照明はなく真っ暗である。。狭いうえに暗いからそこに閉じ込められるというのはかなり精神に来るため、軽く三十分は閉じ込めとけば反省して二度と同じことはしない。魔王らしい恐怖政治だ。


「フィーさんをどこに?」

「お仕置き部屋だ。それよりも恵、話がある。」


 お仕置き部屋ときいて恵の顔色が変わる、前にも一度恵を閉じ込めたことがあるのだ。


「お話って・・・なんですか・・・・」


 かなりびくびくしながら聴いてくる、お仕置き部屋はもう完全にトラウマらしい。


「お仕置き部屋の話じゃいないから心配はするな、実は恵に頼もうと思っていた眷属選別の件だが。」

「それがどうかしたのです?」

「選抜をやめようと思ってな。」

「え?」

「さすがにこれ以上眷属を増やすのはな、あの巫女さんは眷属にしないと納まりが付かなさそうだし、これ以上増えると収拾がつかないんだ。」


 恵が選ぶ奴と言えばたぶん女性だろうし、これ以上女性だらけになるのは俺が困る。男が一人だけで女が多数というのは男の肩身が狭いからだ、今でも十分狭いのに。


「仕事なし・・・になるんですか?」

「言い方が悪いが要約するとそうなるな。」

「つまりいらない子ですか・・・・」


 ?、何かまずい気がする。


「恵はいてもいなくても同じということですか、解雇ですか。」


 は?恵は何を言って――。


「わかりました、それではさようなら。」

「は?ちょ、待て恵!」


 行ってしまった、以前もこんなことがあった気が・・・あ、そういえば。

 俺はふと恵は人に必要とされないことを以上に恐れていたのを思い出す、あの時は仕事を与えたから何とかなったんだ、その仕事を奪ったからまた・・・・。


「焔よ、何を固まっておる?」


 ニュクスたちが起きてくる、酒臭い。


「……恵がどっか行った・・。」

「いったい何があったのじゃ?詳しく話すのじゃ」


 ~理由を説明中~


「探しますか?マスター。」

「探しても意味がないだろう、何か恵の仕事になるようなことを見つけた後じゃないとまたすぐにどこかに行ってしまうだろう。」

「焔が我慢すればよいじゃろう、ハーレムを嫌いかの?」

「嫌いだ、女はとても怖い。」


 巫女さんが大笑いする、笑い事じゃないのだけど・・・昔女にひどい目にあわされたし。


「それではどうするのですか?ほっとくというのですか?」


 フィーと恵は仲がいいから心配なのだろう。声から心配という感情が伝わってくる。


「ひとまずはそれしかないだろう、あとで恵の親父さんには連絡は入れるけどな。何か恵用の仕事を考えなければ・・。」

「おいしそうなご飯ですね、だれが作ったのですか?これ。」


 巫女さんがテーブルの上に置いてある食事を見て聞いてくる。


「ああ、それは恵が作ってくれたやつだ。魔族は食事はとらなくても死なないから必要ないのに恵は必ず食べてるそうで。」

「ならばこれでいいんじゃないのでは?」

「え?」

「だから恵ちゃんのお仕事、みんなの食事係ならピッタリではないのでは?と」


 本当にこの巫女さんは・・・・・。





 --とある島国の町--

 

「ここまでくれば簡単には見つからないし考え事もできるでしょう。」


 みなさんおはようございます、こっちは今朝です。私は恵です。今南半球のとある島国に居ます。


「×××××××」

「×××××××」


 周りがしゃべっている言葉はわかりませんがわからなくてもいいのです、観光に来たわけではないのですから。とりあえずご主人から

離れたところに来たかっただけなのです。


「でも・・・ちょっと自分勝手すぎましたかねぇ。」


 ご主人が何か言いたそうな感じでしたがそれを聞かずに出てきてしまったのです。感情的になりすぎましたね、ご主人が私を必要としていないなんてことある訳ないですもんね!なんたって私はご主人の最初の眷属ですから!……でも、仕事がないです、いなくても同じ子です。


「×××××××」

「?」


 地元の人が話しかけてきてくれました、表情から察するに私が元気がないように見えたので心配してくれたみたいです。でも言葉が・・・・。


「えーと、あの、その、私はこの国の言葉がわからなくてですね。」

「!、××××××!××××××」

「××××?×××××」


 誰かを呼んできました、肌の色的に日系でしょうか。


「えー、日本語、わかる?」


 新しく来た人に片言で話しかけてみます。


「ああ、日本人ね、中国人かと思ったよ。日本人相手だから俺が呼ばれたのか。で、どうかしたのかお嬢ちゃん?」


 かなり流暢な日本語でした、日系かと思っていたら日本人だったみたいです。


「少し考え事をしていましたらそこの方が心配して話しかけてきてくれたのです、私の表情が少し暗かったので心配してくれたのでしょう?」

「なるほどね。×××××」

「!!、××××××」

「×××××」

「×××××」


 最初の方はどこかへ行ってしまいました。内容はわかりませんでしたがおそらくこの子は心配しなくても大丈夫だ的な事を言ったのでしょう。安心した表情で帰っていきましたから。


「それでお嬢ちゃんはこの島に何しに来たんだい?」

「実は――。」


 説明は省略します。なにせ全部書こうとすると結構長くなってしまうので。


「なるほど、痴話げんかしてここまで逃げてきた、と。」

「ちょっとちがいますがだいたいはそうです。ここには彼から離れたこの地でゆっくり考え事をするために来たのです。」


 ご主人の近くに居たらすぐに見つかってしまいますし、そうしたら考え事どころではなくなってしまいます。


「なるほどねぇ。……滞在中どこに泊まるつもりなんだ?」

「それはその辺の森の中で野宿でもしようかと。」


 地元のお金は持っていませんしそれしかないでしょう。この話を聞いた瞬間この人の表情が変わります。


「この森は最近おかしなことばかりが起きている、やめといた方がいい。地元の住人が入ったきり一人も出てこないし、化け物の影を見たという目撃情報もある。あの森にはこの島の人間は誰も入らない。だから森に入るのはやめてくれ、今日あった人間が明日死体で見つかったとなれば目覚めが悪い。」

「化け物ですか?いったいどのような形を?」


 なにか定番臭がしてきましたよ?どういうことでしょう。


「全長五メートルはある毛むくじゃらの化け物だそうだ、人間の勝てる相手じゃない。」


 人間でない私ならどうなるのでしょうか、ちょっと戦ってみましょうかね。眷属になってだいぶ好戦的になった事を実感した私でした。

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