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その1

私は映画やドラマの現場のスタッフをしています。撮影は様々なところをロケ地として活用します。廃墟、夜の病院、夜の学校などいかにも幽霊が出そうなとこに赴くこともあります。業界ではそう言った心霊体験をしたことがあるというスタッフも多いです。そんな現場で働いていると、霊感などほとんどない私でもごく稀に奇妙な体験をすることがあります。これは私の中で最も薄気味悪かったと感じた話です。


それは『海辺の映画館』という作品の広島のとあるロケ地で起きた不思議な出来事です。

そこはほとんど廃墟でした。かつて酒造として稼働していたそうですが、今はその機能はなく、現在は倉庫として使われているそうです。そのためほとんど人の出入りもなく、中は閑散としていました。建物内はコンクリートと木造で出来た建物で、完全に木造の部屋などもあり、一歩踏み出す度にギシギシと床が悲鳴をあげていて、かなり年季を感じさせられる造りになっていました。さらに、元々設置されてあった機材はほとんどが撤去されており、コンクリートが剥き出しの状態で、壁には機材の管が通っていたのか、大きな穴がそこら中にぽっかりと空いていました。

正直、雰囲気がありすぎて、かなり気味が悪いロケ地でした。ですが、その古い建造物がこの作品には合っていましたし、監督もお気に入りだったようで、数日、そこで撮影することになりました。

時季は真夏で、連日30度を越え、うだるような天気でしたが、不思議と建物内はひんやりとしていました。

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