16. 卒業パーティーの顛末
「リーズ! うっ、嘘だろう? 婚約解消だなんて……。 」
「違いますわ。私は、『解消』ではなく『破棄』と言いました。アンサー様の不貞による婚約の破棄ですわ。」
「何をっ!! 俺は不貞なんかしていない! サナがエミリアを虐めていたのは、俺への一方的な恋慕のせいだ! 俺はエミリアとは何も関係ないがサナが勝手に勘違いしたんだ!」
アンサー様、私先ほど貴方への恋心を全否定しましたけど、もしかして忘れてます? しかも油断してうっかりエミリア様のこと呼び捨てしちゃってますけど?
「先ほどアンサー様は、『エミリア様の体に傷痕が残っている』と宣言しましたわね? ドレスの上からでは見えないその傷痕をアンサー様が見たというのが不貞の証拠です。」
……確かに。ドレスの上からでは見えないような場所なんて、婚約者以外の男性に見せたりなんて絶対にしないわ。いえ、たとえ婚約者だとしても普通は見せないわ……。
アンサー様もその意味に気づいたのか顔を真っ青にした。
「ちっ、違うんだ。俺は見ていない! そんな傷痕見ていない!」
「それではアンサー様は、レオン公爵令息の正式な婚約者であるサナ伯爵令嬢の名誉を毀損するために、公衆の面前で偽証をしたということですね。」
リーズ様の言葉にアンサー様の顔色は青を通り越して真っ白になった。……不貞を認めるか、偽証を認めるか。どちらに転んでもアンサー様はもう終わりなのでは?
「リーズ様酷いです! リーズ様も私と同じで転生者ですよね? 飛び級してまで悪役令嬢になりたくないって気持ちは分かったから、私はリーズ様を見逃してあげたのに! だから代わりにサナ様をアンサー様ルートの悪役令嬢にしようとしてるのにどうして邪魔するんですか?」
エミリア様……。また意味の分からないことを……。
リーズ様は、顔色ひとつ変えずに首を傾げて周りの令嬢達に話しかけた。
「この方は何を言っているのです?」
「……さぁ。私にはわかりません……。」
周りの令嬢達も皆困惑したように首を傾げていた。やっぱり皆エミリア様の言葉は理解できないわよね! ちょっと安心。
「とぼけちゃって! 意地悪してひどいです! でももう良いです。リーズ様とアンサー様は婚約破棄するんですよね? これで私はアンサー様と婚約出来るのでハッピーエンドです。うふふ。」
エミリア様がいつもの可愛らしい笑顔に戻った時、それまで黙って事の次第を見ていたトム王子がご発言をされた。
私達の学年には第二王子であるトム様がいらっしゃる。私なんかはお話もしたことがないけれど、お兄様は卒業までの1年間一緒に生徒会に入っていたので仲が良いらしい。さすがです。お兄様。
「もう開始時刻を過ぎているから卒業パーティーを始めたいのだが。」
そう言った後でトム王子はアンサー様に向かって言った。
「だけどアンサーは卒業パーティーよりも屋敷に戻った方が良いんじゃないか?」
「なっ!? トム王子それは一体どういう……。」
「ブルーノ伯爵が騎士団の経費を着服していたことが判明したから今頃屋敷にも捜索が入っているんじゃないか。」
「父上の横領が……。」
アンサー様はそのままその場に崩れ落ちた。
トム王子は護衛にアンサー様を会場の外に連れ出すように命じた後で、卒業パーティーの開始を宣言された。
パーティーの開始と同時にレオン様は私の前に跪いて右手を差し出した。
「お姫様。僕と踊っていただけますか?」
私の頬は一瞬で真っ赤になった。
「シークレットルートの公開スチル……。嘘でしょ!? まさかレオン様が隠しキャラなんて……。」
私の真正面に立っていたエミリア様が呆然としたように、また意味不明なことを呟いたけれど、もはや聞こえなかったことにして、私はレオン様の手をとった。
レオン様とのダンスは夢のように楽しくて、たまらなく幸福だった。
ダンスの後でレオン様がトム王子に話しかけられている時に、私はリーズ様に声をかけられた。
「サナ様。レオン様とのご婚約おめでとうございます。」
「リーズ様! ありがとうございます。それに先ほどは助けていただいて本当にありがとうございました。」
「私は私のしたいことをしただけですわ。
サナ様。今度私にお時間をいただけますか?」
「……私ですか?」
「答え合わせのようなものを致しましょう。」




