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逃走

ご閲覧ありがとうございます!

夜中に更新だとお目に付きにくいかもですが…見つけたら是非ともご閲覧くださいませ!

あとおこがましいとは思いますが…ブックマークや評価等も頂けると幸いです。

「どわぁぁぁああ!!フィオラぁぁああ!全力で岸に戻ってくれぇぇえええ!!!」


「ひぃ!!分かりましたぁ!」


「キャァァアア!食べられるぅぅう!!」


「う、うう狼狽(うろた)えるな小娘ぇ!食べられてぇのかぁ!?」


「やだぁぁあああ!!食べられたくにゃいぃぃいいい!!!」


「うるさいですー!集中できません!!」


 正に今この瞬間、巨大なその影に追われながら必死に岸を目指す。

 フィオラが全力で船を岸へと向かわせ、俺は上の追ってくる影を見ながら、喚(わめ)いて抱き付いてくるミッシェルの相手をしていた。


 良く見ると、その影…大きな鳥は、クチバシに何かを加え、モグモグとその口を動かしている。

 それに気付いたミッシェルが、先程まで喚いていたとは思えない勢いで、それに向かって叫んだ。


「あーー!!それさっきまで私が食べてたお菓子!!ちょっと返しなさいよーー!!食べ物の恨みは帰ってくるんだよーー!!」


「俺達が食べ物にされそうだよッ!!てかそう言うならお前はメテロンの所で食べ物の恨み買ってるじゃあねぇか!それが返って来たと思って大人しくしろぉ!」


「うわぁぁあんん!!わだじのおがじぃぃいい!!!」


 何と言う食に対しての執念だ…もっと他の所にその執念を使えよな、てか鼻水汚ねぇな!!


 涙と鼻水をズビズビ垂らしながら、彼女は未練たらしく…大きな鳥がモグモグと食べるお菓子の最後を見ていた。ここまで来ると最早可哀想だな…。


 と、そこで船がどうやら岸辺に近付き、もうすぐ陸に上がることが出来そうだ…一度態勢を取り直さないと相手する物も出来ない。


「もうすぐです!捕まって下さい!」


 フィオラが両手を前にかざし、勇敢な立ち姿で魔法を駆使しながら船を全力で操作している。

 俺とミッシェルは真剣に船体にしがみつき、その速度のせいで吹きすさぶ水飛沫(みずしぶき)を顔に受けながらも必死に前を見た。

 後数メートル、それで陸にたどり着く…速度は落とさずに座礁(ざしょう)する形で上がれば素早く陸に戻れる筈だ。


 船体…このオオブネダケは傷んでしまうかも知れないが、命には変えられまい。


「そのまま突っ込むぞ!フィオラも此方(こっち)に!」


「はい!わわわ!」


 速度を維持したまま前進する船を移動する時、彼女がバランスを崩しかけたので、急いで支え、俺とミッシェル、そしてフィオラの三人で衝撃に備えた。


 岸が近付き、制御を失った船体は激しく揺れる。

 三人で固まりながら、その荒ぶる船の上で必死に身を堪えていた。


「来るぞ!俺に捕まれ!」


「っ!」


「あわわわ…っ!」


 二人を両脇に抱え、頭を守る形でその瞬間を待った。

 その船体は水面を離れ、やがてその速度のまま陸へ。


 そして、ドン!と何かが船底にぶつかる音がし、ガタガタと船体を擦り、砂埃をあげながら物凄い速度で陸を滑った。

 とてつもない衝撃が襲う、彼女達に怪我をさせないように目を見張って状況を見る。

 速度は大体90キロ位出てるだろうか…まだ陸を滑り続け、次第に湖から離れる。


 後ろを見ると、その速度には流石に追い付けないのか、巨鳥は随分と後ろを飛んでいる。

 これなら暫く追い付けないだろう、後は…この船からどうやって降りるか…だな。


「速度が収まってきた…そろそろ降りないと…。」


 冷静に前方を見ると、遠くに石壁が見える。

 この速度だと、それにぶつかるのもそう遠くは無い筈だ…本格的にまずい。


 そこで周りを見たところ、すぐ先に植物の蔦が絡まり、群生したヤドリギの様な形になった部分が見えた。


 ここの植物は全体的に柔らかく繊維性が強い、きっとあれなら飛び移ってもそうダメージは少ない筈だ。


「フィオラ、ミッシェル。

あの蔦の群生が見えるか?あの植物のマット見たいな奴に飛び乗る…そうじゃなきゃぶつかって大惨事だ…行けるか?」


「大丈夫…です!それに…お母さんのこの服もあるので、衝撃には強いですから!」


「わ、私も行けるよ!」


「よし!せーの、でみんなで飛ぶぞ!」


 陸を滑る船体が、次第にその植物の横へと近づく。

 身を構え船体から手を離すと、三人で手を繋いでそのジャンプの瞬間を見計らった。


 後少し…3…2…1…今しかない!


「せぇ…のっ!!」


「えいっ!!」


「わわっ!!」


 俺の合図で思い切り船体を蹴り、三人同時に宙へと体を投げ出した。

 速度の反動で体は傾き、そのまま着地…とは行かないが、それでもタイミングは完璧(パーフェクト)だ。

 そのままガサッと身を植物のクッションに任せ、そして…無事にその離脱は成功した。


 滑り続けるオオブネダケは、その後岩の壁に衝突し、先頭から中枢に向けて大きくひび割れ、程なくしてバラバラに砕けてしまった。

 離脱出来なかったらどうなっていたか…身震いがするぜ。


 いち早く起き上がった俺は、周りに影が無いか…安全かどうか確認し、それを終えると、彼女達に手を差しのべて起き上がる手伝いをした。


「立てるか?二人とも。」


「ありがとうございますリュウノスケさん…ふぅ…どうなるかと思いましたぁ…。」


「怪我は無いか?ミッシェルも大丈夫か?」


「ありがとぉ…痛たた…私が付添人なのにリードされちゃったねぇ…ごめん!」


「無事なら誰がリードとか助けるとか関係ないぞ、大事なのは命だからな、理念とかじゃないぞ。」


「ヒュー!良いこと言うねリュウノスケ!」


「だぁ…構ってやりたいところだけど、そうも行かなさそうだ。」


 俺が上空の少し遠くを指差した。

 そこには見失った俺達を探していると思われるあの巨大な鳥が咆哮をあげながら飛び回り、旋回を繰り返している。

 ここに留まり続けてもいづれ見つかる…何処かに隠れないと。


「まさか奇襲されてしまうなんて…危なかったですね…。

あっ!リュウノスケさん!ミッシェル!あそこの植物が見えますか?」


「んー?何あれ?デカイ…豆?」


 フィオラが俺達から見て湖から西の方角、そこに大きな豆…だろうか。そのまたしても巨大な植物を目指そうと提案した。

 巨大な物から身を隠すにはそれに相応した大きさの物が確かにいいのかも知れないな。


 目には目を…歯には歯をって言うけどさ。


「よし、取り敢えずあの植物の側まで向かうぞ。」


「はい!見つからない様に慎重に行きましょう!」


「うう…何だか私全然役に立ってないような…?」


「行くぞー貪食(どんしょく)娘ー。」


「ねぇそれ酷くない!?風当たりまで悪くなってない!?ねぇねぇ!」


「今度は鈍足(どんそく)娘って呼ぶぞー。」


「うぅー…無事なら良いって言ってたじゃん!このおにー!きちくー!どーてー!」


「最後のは関係ねぇダロォ!?!?」


 何だかんだふざけながら、乱れた意識を元に戻しつつ、フィオラが見つけた大きな植物の近くへと慎重に向かっていった。


 後そこに向かう途中で物凄くミッシェルをペチペチした。理由は敢えて言わないがスッゴくペチペチした。後悔はしていない。


※※※


 無事巨鳥に見つからずにその植物へ到達した俺達は、その植物の隙間…どうやら空洞があるらしく、その中へ入って一度状況を整理し始めた。


 あの魔物を退けるにあたっても、目的の"グジラボール"を探すにあたっても、今のこの状況で何か急げばボロが出る…今は焦らずに冷静に事を運ぶべきだ。


「この植物は『ハウスビーンズ』って言って、その種子にこの様な空洞を作って地面に接地するんです…発芽する前だからこの様に臨時空間として使えるんですよ!でも…少し暗いですね…。」


「ん?おう、それなら任せな。」


 俺はリュックから取り出した懐中電灯をつけ、それを更に持ってきていた汎用スタンドにくくりつけ、薄暗いその植物の中ではそれを逆向きにして…更に持ってきていた反射鏡に逆さに当てる。

 そうすると、周りの壁に乱反射した光がその空洞の中を充分な明るさにした。


 興味深そうに懐中電灯やスタンドと言った小物に目を向けているミッシェル。

…何かこれフィオラも同じ反応だったな、やっぱり懐中電灯とかってそんなに面白そうに見えるんだろうか…。


「ねぇねぇ!何でこれ光ってるの?火は?何処に付いてるの?リュウノスケねぇったら!」


「やかましいなぁ、これは電気って言ってだな…ってこれはフィオラの時にやった下りだからカットだ!」


「えっ何それ、カット?えっ?えっ?」


「それはともかく…さて、あの馬鹿デカイ鳥をどうやって退けるか…考えないとな。」


「あー!無理やり話進めた!酷い!」


「うるさいんじゃい!」


 ため息を付きながら話を戻す。

 退けるか…そう考えると俺のハンドガンでもあの巨体にダメージが入るか分からない。

 フィオラの『リバーシブルステッキ』の力ならどうだろうか?魔法なら多少聞くのではないか?


 俺は早速フィオラに提案をする…だが、彼女はうーんと考えながら迷っている様だ。


「確かに足止め程度なら私の魔法でも出来るかもです…でも初めて見る生き物ですし…魔法は効くのかも分かりませんから…どうでしょうか?」


「うぐっ…確かに効かなかったら余計に怒らせて作戦はパア…誰かが注意を引かない限りはフィオラが襲われちまうか…。」


 フィオラが襲われれば、自衛手段も運動能力も平凡な彼女では無事とは限らない…だとすると無闇に攻撃を仕掛けるのは愚策…どうするか。


 悩んでいると、あっと何かを思い出したかの様にミッシェルが手をポンと叩いて提案を仕掛けてきた。


「そうだ!あの鳥…もしかして食べ物を狙ってるんじゃ無いかな?

ほら!私のお菓子取ったでしょ?」


「まだ根に持ってたのか…いい加減諦めて…」


「ちーがーうーのー!

だって私達を食べ物だと思って襲うなら…お菓子じゃ無くて先に私達を襲えばいいと思わない?」


「ん?…確かにそう言われればそうだな…。」


 確かにミッシェルはいい部分に気がついたのかも知れない。

 俺達を"獲物"として見ているのであればそのまま襲えば良いものを…なぜ先にお菓子…まあつまり食料を狙ったのか?


 偶然食料に目が行っただけ…と言うのもあるかも知れないが、一理あるかもしれない。

 フィオラもどうやら一理納得している様子だ。


「そうか…だとしたら何か食料で誘導して隙をつけば…攻撃なり逃げるなり、また倒すなり出来るかも…って訳か。」


「ふふふ、良く分かってるねリュウノスケ!どう?良いと思わない?」


「そうか…確かに良さそうだな…だが?。」


「まだ何かあるの?」


「確証が無いだろ?」


「えっ…まあ無いけど…えっ?何?何で私の事見てるのねぇ?」


 いや、正確にはミッシェルを見てるのでは無い。


 ミッシェルの…持ち物(・・・)を見ているのだ。

 その何処にあるか、何を持ってきているのか分からないそのミッシェルの持ち物(・・・)を…。


「えっ…?まさか…リュウノスケ…?」


「なあミッシェル…お前今日は何を持ってるんだい?うん?」


「いや…そのぉ…えへへー何も…。」


「フィオラ、頼んだ。」


「了解です!ミッシェル!大人しくしてて下さい!」


「えっ!?ちょっとフィオラ!?嘘でしょ!?あはは!くすぐったい…やめてって!そこには何も無い…あっ…。」


※※※


 ギャーギャーと無くミッシェルからありったけの持ち物(たべもの)を剥ぎ取った俺は、フィオラにミッシェルの行動を封じさせ、取り敢えず準備に掛かった。


 食べ物をありったけ手に持ち、それをまとめる。


 なぜこんなことをするのか?


 勿論…その理由は"奴が食料を狙っているのかどうか"を調べるためだ。


「うわぁぁあああんんん!!リュウノスケのばかぁぁあああ!!私のおやつぅぅううう!!!」


「諦めろ…お前の食料は犠牲となるのだ…。」


「きちくぅぅうう!!おばかぁぁあああ!!

どーてーおとこぉおおおお!!!!」


「だから最後のは関係ねぇダロォォォオオ!?!?全く往生際が悪いな…。


 じゃ…フィオラ、帰ってくるまでそいつよろしくな。」


「気を付けてね…リュウノスケさん。」


 俺は泣き叫ぶこの小娘の食料を幾つかまとめ、できるだけ大きく匂いが分かるものを選別し手に持った。

 ジーパンのポケットにそれを突っ込むと、外で旋回し獲物を探しているあの巨鳥の元へと近付くことにした。


 もしも…食料に目が行き、俺を見逃す様であれば…見解は当たりだ。


「失敗すれば俺が危険だが…まあ女の子をみすみす危険に晒すよりはマシだよな。

はぁ…とんだ厄日だぜホントに。」


 これが成功すれば何かと道は開けてくる…今はそれを信じてひたすら苦悶に耐えるしか…ない。

 俺はこの見解が正解だと信じて、その危険な実験を…始めた。

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