目的達成一段落
ご閲覧ありがとうでござる!
ちょっと短いけど許してクレメンス!レスポンス(激寒)
「ありがとうございましたー!」
気付けばお昼過ぎ、ナイフの店は見事に大繁盛。
作り置きされていた貯蔵ナイフも全て売り切ってしまった。
最後のお客を見送り、店の中へと戻ると、くたくたになった体をカウンターにもたらせ、一息ついた。
その後ろには満足げなマルテッタさんの顔が覗いていた。
「リュウノスケ!あんた凄いじゃないか!
使い道もそんなに無い筈の変哲もないナイフをここまで売るなんて!」
「そりゃあどうも。
でも…ちゃんと売れたのには理由があるんだぜ?」
一先ず疲れた体を休ませるためにも、店裏の休憩スペースを設け、フィオラ達もそこで休憩させた。
その間に、リベルさんもマルテッタさんと同じ疑問が浮かんだようで、何分しつこく聞いてくるもので、仕方なく教えてあげることにした。
「そうだな…まず最優先に…この店のナイフの質だ。
さっき、俺がミルクグランドを捌いてたのをマルテッタさんも見てた筈だ。」
「そうだねぇ…やけに手慣れてる気がしたけど。」
「実はそうじゃない。このナイフが良すぎるせいでそう見えただけだ。
俺は確かに料理や小ネタを披露するのは得意だ、それに物を覚えるのもな。
リベルさんが以前あれを調理している現場を見よう見まねでやってただけなんだよ、それにちょっとしたパフォーマンスをつけてな。」
どうやら、俺のこの説明ではまだ納得行かない様子のマルテッタさん。
まだ気付かないのだろうか…俺がやったのはただの"真似事"なのだ。
つまり、本命はナイフの素晴らしさ。
切れ味の良さや状態を維持できる程の綺麗な仕上がりと素材でなければ、あれほどパフォーマンスをすることなど不可能だ。
確かに無理やり切るのは美しくないとの理由で、無理やりは切ってなかった。
だがそれでも精巧に切れるほど俺の腕は良くない。
そう、"無理やり切っても美しかった"場面が幾つかあったのだ。
筋を避けられなかった時や皮に接触した時、力を差ほど入れてないのに刃が通ったのだ。
…多分マルテッタさんは自覚していないだろうが、この人の作るナイフは現実ならもはや高級芸術品の類いだ。匠がよりを掛けて作り出した物と同等の筈だ。
それが売れなかったのはただ目につかなかっただけ…少し後押しして目を引く事さえ出来れば誰でも欲しがった筈なのだ。
リベルさんがここの常連なのは、それを見越しての事だろう。流石はリベルさんと言ったところかな。
それとなりにマルテッタさんに説明すると、何となくではあるが理解してくれた。
マルテッタさんも最初は戸惑っていたが、どうやら自分のそのナイフの価値を、改めて実感して貰えたらしい。
「ふう…じゃああたしは知らない内にそんな代物を作ってたってのかい?
そう言われると10年近く作り続けて来た快があったって事だねぇ…何だか嬉しいよ。」
「ああ、それにこれまでここの人間はナイフの良さを知らなかったんじゃ無さそうだ。
手に取る時の目や表情で分かる。
その価値が分かる人はたくさん居たんだ、ただ見つけられなかっただけ…遺跡の宝見たいなもんさ。」
きっとこれをきっかけにこの店のナイフは評価を跳ねあげることだろう。
まあ、そうなれば金属の需要や供給が増えて、もっと的確な価値を…ってそれまずいんじゃないか?
少し危惧だ、もしも価値が上がるとすれば金属は入手しずらくなる。
俺の作りたい物やリベルさんに作ってあげる機械にも金属は必要だ…一応聞いてみるか。
「あのーマルテッタさん…これできっとナイフも、この金属も価値は変わってくると思うんですけど…本当に貰っても大丈夫ですかい?」
と、その言葉をマルテッタさんに言うと…表情が曇った。
やはり…人間は強欲なのだ、人が良くても欲には勝てない。
目の前にある価値の塊を易々と渡すなんて事は出来ないだろう。
「手伝って貰って悪いけど…これから売れるって言うなら…ちょっと譲るのは…」
「そ、そんなぁ!」
フィオラが前のめりにマルテッタさんに言い寄る。
無理もない、このままではタダ働き…フィオラが怒るのも無理はないだろう。
俺は取り敢えずフィオラを静め、自分で掘った墓穴を埋める思いで取り敢えずはマルテッタさんと交渉することに。
「仕方ないか…まあ店の利益が優先だ、諦めるか…」
と、少し気まずくなったと思いきや、マルテッタさんは途端に笑いだした。
すると、俺の肩をパンパンと叩いて爽やかな笑顔で言った。
「そんな暗い顔しないでおくれ!
冗談だよ!あたしはそんな悪い女じゃないからねぇ、この仕事の対価はしっかり支払うよ!」
「マジっすか!」
「えっ!じゃあ!」
「ああ!好きなだけ持っていきな!金属なんかまた取りに行けば良いんだからさ!」
マルテッタさんはそう言うと、倉庫を解放し、俺達にありったけの金属を分けてくれた。
いやー…墓穴掘ったと思ったけど、どうやらマルテッタさんは俺にとってのミイラ狩りのミイラでは無かったようだ。
おっと、奥様と言え綺麗な人をミイラ呼ばわりは行けないな、どちらかと言うと御霊を祈るシスターさんって所だな。
フィオラが持ってきていた大きめの袋にその金属や鉱石を敷き詰めると、それより大きな俺のリュックに閉まった。
そのリュックに目が行ったのか、マルテッタさんは不思議そうに見つめ、訪ねてきた。
「あんたそれ…珍しい物だねぇ、何処の袋だい?」
「ん?ああ、これは多分何処にも売ってないと思うよ。」
「何処にもって…それにリュウノスケあんた、さっきのナイフ捌きや接客術、それに珍しい格好や物…一体何処の人間なんだい?」
しっかりと荷物をしまいこみ、リュックを背負う。
リベルさんとフィオラは店の入り口で手を振っている。
「俺?一応…日本って国から来たんだ。
まあ…この世界にはない場所なんだけどさ。」
「えっ、あんたそれって…」
「また来るよマルテッタさん、金属ありがとな!店の手伝いならまた呼んでくれ!」
「ちょっと!…行っちまったよ。」




