優雅な朝食
ご閲覧ありがとうございます!
お腹空いたので食事回になります(適当)
「なあフィオラ…おちょばって何だよ、出会ったときからそうやって叫びながらぶっ飛ばしてくるけどさ…マジでおちょばってなに、チェスト的な掛け声ですかい?」
「大バカ!超バカ!超おバカ!の略ですよ!
最大級の私の怒りですプンプン!」
「全部同じじゃあねぇか!!何だそのミルクに練乳入れてヨーグルト添えた見たいな甘すぎる略称と同一系統縛りは!!乳酸菌は間に合ってるわコンチクショウ!」
「はいはい二人とも静かにしてて下さいね、今から食事を用意しますので。」
「あ、リベルさん…いやーすまないね、ありがとうございます…いやほんと…。」
朝から仕様もないやり取りをしていると、リベルさんが朝食を作ってくれるらしく、大人しくお互い膨れながらそれを待つことにした。
と、思ったのだが、昨日調理場を見た際に気になったことを思い出した。
そう言えばあそこにはガスコンロは愚か、IH、冷蔵庫やそれこそレンジ何かも無かったな。
ではあの時…俺がこっちに来たときに貰ったあのスワンスクッキーとやらはどうやって作ったのだろうか…。
気になって仕方のない俺は、ふと席を立ち、調理場へと向かう事にした。
その俺の様子を見てか、フィオラが不思議そうに見つめてきた。
「あら?リュウノスケさん、そっちは調理場ですよ?」
「ああ、いやちょっとな。
ここって俺の知ってる文化と違うのかも知れないから気になってな。」
「そうですか…?
ならリベルさんに頼んで料理見学でもしてみますか?
そう言えば私も暫く料理をしていないのでリベルさんの腕前を見ておきたいかもです!」
「へー、フィオラも料理すんのか、気になるな。」
「えへへ…まだまだですけどね。」
※※※
そして俺達二人で調理場へと訪れ、リベルさんにその料理までの行程と、実際の様子を見せてもらう様に言った。
フライパン等、それなりの物はどうやらあるようだが、どう料理するのか更に謎が深まる。
「成る程…その、がすこんろ?とやらは無いのですが、しっかりと調理は出来てますよ。」
「まあそうじゃなきゃ昨日のクッキーは示しがつかないしな…じゃあよろしくお願いしますリベルさん。」
俺が頭を下げると、つられてフィオラもお願いしますと頭を下げた。
ふふふとリベルさんが笑うと、着々と準備を始めた。
エプロンを付け、水回りを清潔にして、食材を取り出す。
食材は冷蔵庫こそ無いもののしっかりと氷で冷やしたり、保温したりとまあまあ管理は行き届いているので大丈夫だろう。
先ずは15センチ程のナイフを上の棚から取り出すと、見慣れない果実を捌いていく。
「リベルさん、その果物は…?」
「これですか?これは"ミルクラウンド"と言う植物の果実です。
少し食べてみますか?」
ミルクラウンド…聞いたことのない名前だ、それにその名前の通りほんのりとミルクに近い甘い匂いがする。
小さな切り身を手にとって、俺はそのまま口に頬張った。
果実を噛むと果肉が弾け、中からは苦味とも甘味とも言えるクセの少しある味が広がった。
それでも充分美味しく、食べたことのない新鮮な味がした。
「旨い…中々クセはあるが美味しいな…。」
「お気に召されましたか?それは良かったです。」
リベルさんそのまま調理を続けた。
水道はどうやらあるみたいで、そのまま水洗いをした果実の切り身をしっかりと布で水気を切る。
それを常温で置き、次に取り出したのはお肉。
何のお肉だろうか…と思い、不意に近くにあったケージを見た。
そこには昨日取った鼠花が居たと思ったのだが…居ない。
あっ…そう言う使い方もアリなんですねはい…
そのお肉を丁寧に4センチ程の感覚で刃を入れていく。
大きく切ったお肉にシンプルに塩と思われる物を掛ける。
それも更に横に置いて、先程の果実と並べる。
次に数種類の豆と、一瓶のオイルを取り出した後、それをフライパンの上に乗せた。
加熱するのだろうか、油を敷き、暖めた油で豆を炒める…と言ったところか。
しかしどう見ても火元が無いのだが…それはどうするのだろうか。
と、次の瞬間だった。
リベルさんは左手でそれを持ち、右手の人差し指をクルクルと回しだした。
その指先から徐々に赤い光が点滅し始め…やがてそれは一つの炎を作り出した。
それをぽいっと軽く投げるようにフライパンの下へと移動させると、空中で止まった炎は、加熱するためのコンロの代わりになった。
「うお!すげぇ、そうやって作ってるんですね!」
「ええ、先日の件でお分かりだと思われますが、私達は魔法を扱うことが出来るので、それを日常の道具として使っているのです。魔力の消費はありますが…負担は微々たる物ですよ。」
「成る程なぁ…道理で家電やらが無くても良いわけだ。」
魔法を日常生活に取り入れたのがこの世界と言うわけか。
科学を日常に取り込んだ現実にとって、それは世界のもう一つの可能性とも言えるんだろうな。
科学の代わりに魔法。ただそれだけの事なのだろう。
そしてある程度暖めた油に、先程の果実とお肉をたっぷりとフライパンの上で転がした。
シンプルな炒め物だ、味付けも最小限。
だが香りは素材そのものを引き立たせる事で生まれる旨味その物を、容易に想像させる程香ばしかった。
木製のヘラに似た道具で軽く炒めた後、丁寧にお皿に乗せる。
そして炒めた後に軽く磨り潰した植物の粉末を掛けて…完成だ。
飲み物はハーブティーの様な物で、鮮やかな黄色をした香り立つ物を用意してくれた。
料理に使用した道具は、流した水に植物の油脂をつけて洗い流しながら汚れを取る。
そして道具は魔法で元の位置にきっちりと早くしまっていた。実に早く便利だ。
そして勉強になった所で朝食を取ることにした。
「さあ、頂きましょうか。
二人とも席に移動してください。」
「「はーい!」」
まるで兄弟の様に声を合わせる。
でも…何だか家族みたいで暖かい気持ちになる。
家族…か。
※※※
「いただきます!」
気持ち良く食事の前の挨拶を済ませた俺は、ナイフとフォークを握る。
こう言うところは洋風な感じで文化は共通してるんだよなぁ、まあ助かるんだが。
目の前に置かれた料理を器用に切り分け、果実とお肉両方を一片に口に運んだ。
咀嚼する度にお肉からは肉汁が溢れ、果実からはほんのりとチーズに似た乳製品のコクのある味が広がる。
ミルクラウンド…火を通すとチーズみたいな味わいになるのか、火を通す事でコクや深みが出る果実とは…これは凄い。
まるで深みのある高級のチーズハンバーグを食べているかの様な感覚、素晴らしい…。
「如何ですか?」
「すっげぇ旨いです!いやぁ朝からこんなのが食べれるなんて幸せだぜ…ここに来て良かったなぁ。」
「ふふ、そんなに誉められると嬉しいですね。
作って良かったです。」
「これお母さんも大好きだったんですよ?ね!リベルさん!」
「はい、お嬢様も母上様も大変お気に召された物で、私としてもリュウノスケさんのその反応は懐かしく、とても嬉しいものです。」
「フィオラの母さんがなぁ…そりゃこれだけ旨ければ誰でも笑みが溢れるだろうよ、本当にありがとうございますリベルさん。」
側にあるティーも芳醇な香りで、とても料理にマッチしていた。
まるで高級レストランの朝を迎えたように、スッキリした気分で朝食を終えることが出来た。
食事を終えた俺は、自分のお皿を丁寧に洗い、元に戻した後、食事場へと戻った。
フィオラはどうやら自室に戻ったらしく、居ないようだった。
すると、俺が昨日起きっぱなしにしていたあの花…青く透き通った光を放っていた花を、リベルさんが眺めていたので声を掛けた。
「リベルさん、それ…昨日勝手に持ってきちゃったんですけど、良かったですか?」
「ええ、構いませんよ。
これは母上様が大切にしていらしたお花なので…ここに飾って置くのもよろしいかも知れませんね。」
その花は昨日の夜ほど輝いては居ないが、それでも充分魅力的な色合いを保っていた。
「それ…その花、名前は何て言うんですか?」
「これですか?これは…"フィオラ"です。」
「えっ!?フィオラって…じゃあもしかしてその花からフィオラの母さんが名前を取ったのか。」
「そうですね、とても美しく…儚くも力強い光で自らを照らしているこの花を…母上様は大事にしていました。
それと同時に、酷く繊細な花ですので、母上様は懇切丁寧に世話をしていました。お嬢様も、この花の様に美しく、繊細に優しく育てられました…今ではあんなに大きくなって…。」
懐かしそうに、それでいて少し哀愁を纏った表情をリベルさんはしていた。
よっぽどフィオラのその母さんを慕っていたのだろう。
フィオラへの愛もその花を見つめる雰囲気である程度感じてとれた。
それにしても…昨日な綺麗に輝いていたのだが…光らないのは何か理由があるのだろうか。
「この花は…えっともしかして何か特別な事があるんですか?」
え?と不思議そうな顔をするも、リベルさんは丁寧に説明してくれた。
「そうですね…この花は光を受けた者に、その者に取って重要な夢を見させる事があるそうです。
私は一度も輝きを見たことが無いのですが…それがどうか致しましたか?」
「あ、いえいえ!綺麗な花だから何かあるのかなーってさ!ありがとう、勉強になりましたよ。」
「それは良かったです…それではこの花の水を替えてきますね。」
そう言うと、リベルさんは外に新鮮な綺麗な水を汲みに言った。
静寂の中、少し俺は考えた。
さっきの夢…何処かにリアルで意味深だったな…もしかしてあの花が原因なのか?
だとしたら…あの部屋…俺にとって何かあるのかも知れないな。
「まあ今考えても仕方ないな、後々何かあるかも知れないし。」
「リュウノスケさーん!少し来てもらえますかー?」
と、そこでフィオラの自室から俺を呼ぶ声が聞こえた。
どうやら何か手伝って欲しいことがあるようだ。
顔を横に振り、先程の事は一旦忘れ、俺はフィオラの元へと向かう事にした。
もしかしたら勘違い…かも知れないからな。
「おう!今行くよフィオラー!」




