第90話 終章
「なんか、こうしてると懐かしいね。・・・皆変わったようで、でもどこかで繋がってて・・・嬉しいな。こういうの。」
「そうだね・・・。ハルがルカに傾いたのはすっごくむかつくけどね。」
「もちろん!トウヤが大好きなのは変わらないよ。でも、でも・・・自分でも分からないけどルカの心の温かさが好きなんだ・・・。」
「ルカの間が悪いのってさ、俺と同じようにハルを見てるからなんだろうな。だからハルが危ないときには必ず側にいて・・・ハルと二人でいるときは精一杯ハルを守ろうとしてさ、色んなところに気を張って。」
「・・・だから二人の時はほんの少しだけだけどカッコよく見えるのかな?」
トウヤはその言葉を小さく噴出した。
「あれがハルにはカッコよく見える?重症みたいだから、もう仕方ないね。馬鹿なのが玉に傷だけどいいやつだよ。あいつも。」
「何?何?」
ルカは視線に気が付き寄ってきた。
「ルカが馬鹿だって話。」
「おい!何だよ。それ!」
ルカはトウヤの肩に手を回した。
「嘘!ルカが仲間で良かったって話だよ!」
「な、何だよ!照れるじゃねえか!」
「で、いつ俺に二人で怒鳴られるの?」
トウヤが意地悪く笑うとルカは凍り付いてハルの顔を見た。
ハルは笑ってルカの顔を見ていた。
するとルカもハルの顔を見て笑った。
「いつでもかかって来い!怒鳴られてやる!」
「何かムカつくなあ・・・。ま・・・いっか。」
「よし!中華食いに行くぞ!テーブルがんがんまわしてやる!」
「うわ〜ルカキモイ!」
「キモイって言うな!」
歩いてゆく五人の姿をバネッサは見ていた。
「お母さんか・・・。女の子もいいもんだね。」
「あの子達はきっと今から色々悩んで生きていくんだろうな。きっとこれからが大変だろう。自分の生き方を考えるんだから。」
セイも後姿を見送っていた。
「命令されることのなくなった人生か・・・。」
カイクも壁にもたれ教え子の姿を見ていたが振り返ったハルの笑顔を見て自分の顔も緩めた。
「だがあいつらには仲間がいる。きっとそれが宝になる。」
「そうだな・・・。さて話をしようか・・・。」
セイの言葉にバネッサはしっかり前を向いた。
「組織を解体するには条件があります。」
「条件・・・。とにかく聴こうか?」
「ただその条件を飲んでいただければ何も言いません。」
「何だ?」
「組織の人間はほとんど死にもう数人しか残っていないでしょう・・・。そして彼らには今までの行い、そしてこれからの行いに責任を持たなくてはなりません。」
バネッサは一息ついた。
「ただ、まだ訓練生はたくさんいます。自分の意思が育つ前から人の暗闇と接するしかなかった子供たちです。ですから、その子たちにはどうか、光を与えてください。」
「訓練生だな・・・。シギからも聞いているひどい暮らしだったとな。だからあいつは組織を潰したかったんだろう。組織に残った仲間を救うためにも・・・。」
「シギはそういう奴だ。だからあの時、助けた。」
「分かった。」
長官の言葉をきいてバネッサは笑顔を浮かべ頭を下げた。そしてもう一度歩き出した子供たちに温かい視線を送った。
終章
「やっぱり組織を潰したのはお前だったな。」
「よく言う。俺一人の力ではない。お前の教え子が頑張ったんだろ?むしろ奔放に育てたお前が組織を潰したのか?シギの命を救い、こちらに届けたのもお前だ。」
カイクは少し昔を思い出した。
シギとハルが逃げ出した夜、カイクは隠しきれない焦りを初めて感じた。
シギが神の御剣の副長官の息子で、組織に潜入しているというのは数年前に調査を終えていた。
逃げ出したとなれば神の御剣にいくことは分かっていた。
今まで人を殺すことなど何も躊躇いなど無かった、最終試験についても割り切っていたつもりだった。
ただここに来てハルを失ってしまうそう思うと、初めて助けなければと思った。
自分が追いついたときにはシギとトウヤが既に戦っていた。
総裁とバネッサの子であるトウヤの能力の高さには気が付いていた。
そして決してハルには見せない残虐性も認識していた。
カイクにしてみればむしろシギが良く頑張ったと言ってやりたかった。
そして二人が倒れた。
錯乱して死のうとしていたハルに薬を嗅がせ、追跡していた暗部にトウヤを託した。
暗部は総裁直属。
先代の息子であり現総裁の息子は絶対生かされなければならず、そのまま医療班へと運ばれた。
あと、残っていたのはシギだった。
虫の息で自分を見ていた。
『・・・お前も生き抜いて強くなれ・・・。そして強くなって今度はハルを助け出してやれ。自分の力で。』
シギはその言葉を聞いて気を失った。
止血をし、抱えて進んだ。
森を抜けると神の御剣が三人いた。
何も言わずただシギを託し、その場を去った。
「やっぱり、俺は家族を手に入れてたんだろうな。」
「あの子達か?」
「ああ、守ってやらなければと思う反面、あいつらなら大丈夫だろうと・・・思う。」
「守るものがある、信じられるものがある、お前も成長したな・・・。」
「偉そうに・・・。なあ、今度こそ・・・親友になれるか。俺たち。」
カイクは黒服のまま腕を組んで壁にもたれた。
「もう親友じゃなかったのか?」
白服を着たセイも壁にもたれかかった。カイクはセイを馬鹿にしたような目で見ていた。
「そうだったな・・・。」
カイクは嬉しかった。
感情表現の苦手な自分を理解してくれる数少ない相手だった。
黙っているとセイはカイクの肩を叩き、人差し指と親指で円を作った。
「どうだ?今日は鬼嫁の目の届かないところで一杯。」
少年のように笑うセイの顔は最後に分かれたあの十七年前の日のままのようだった。
カイクは顔を崩すことは無かったが少しだけ声のトーンを上げると言葉を返した。
「そうだな。一緒に行くか。」
長い間お付き合い頂きましてありがとうございました。
たくさんの方にお読み頂いて、とてもありがたいです!
また新しいものを連載した際にはお付き合い頂けると幸いです☆




