第59話 第八章 因縁
第八章 因縁
水は今日も冷たかった。
その冷たさに鳥肌が立ったが、ハルはこらえて傷を洗うと髪も洗い流した。
組織、ルカ、ソウマがないだけで回りはとても平穏だった。
けれどその静かさが怖かった。
「風邪、ひくよ。」
トウヤはハルの後ろから外套をかけ、そのまま川に入って顔を洗う、綺麗な金色の髪から水滴が垂れた。
「ねえ、ハル。王都に・・・行く?」
ハルはずっとトウヤを見ていた。
トウヤはそう聞いてから暫くしてハルの側に屈んだ。
「どうする?」
「行く・・・。」
「じゃ、支度して行こうか。」
「王都ついたらちゃんとした宿に泊まりたいな。あったかいお風呂つかりたい。それに服も汚いし、買い換えたい。」
「いいな。それ。俺、服は買い換えたい。」
装備を整えると二人は自然に手をつないで森の中を歩きはじめた。
トウヤの手はルカよりも少し細く冷たかった。
「ここ空気おいしいね。」
「そうだね。」
木漏れ日がずっと二人に優しく降り注ぎ、鳥のさえずりが心を和ませてくれた。
「追いかけられるかな・・・組織の人に。」
「大丈夫。俺がついてる。」
「うん。ありがとう。」
何処までも続いていると思った森を実際歩くと、数時間で街道に突き当たった。
街道では王都から去る商人が多く見受けられた。
「王都から出てくのかな・・・。」
「かな。」
トウヤの持っていた通交証で旅の者と偽り、検問を抜けた二人は昼前には王都に入っていた。
大通りに面した服屋でハルはディスプレイの服そのままを購入した。
「俺のは?」
「着替えたら買いに行くよ!」
宿屋は検問を通ってきた旅人を快く泊めてくれた。
王城が崩壊し閑古鳥だという。
「お湯、沸かしといて!服買ってくる!」
「わかった。」
ハルはいつものように短いパンツとグレーのニット、白いマフラーを巻いた後、ニーハイブーツに足を突っ込んだ。
「いつも思うんだけどさ・・・その丈短くない?中、見えない?」
「や、今風だよ。ね?服装、ルカ風か?ソウマ風どっちにする?」
「・・・どっちも微妙。パーカーとかあの形のジャケットとか嫌だ。」
「了解!トウヤに似合うの探してくる。待っててね。」
そういうとハルは階段を駆け下りて行った。
トウヤはハルが走ってゆくのを見て通信機を取り出した。
けれど、誰からの連絡も何もない。
目の前の崩壊した王城に目を遣る。
荘厳だった白い王城は砲撃ですすけ、至る所に穴が開いていた。
神の御剣の姿も多く見受けられた。
トウヤはただそれをハルに見せることのない冷たい目で見下していた。