第47話 過去の真実 そして失った
『あ・・・ああ・・・。嘘!』
ハルの鼓動は自分でも分かるほど強く打ち付けた。
ハルの頭の上にシギの血を遥かに凌ぐ血が降り注いだ。
『トウヤア!』
ハルは倒れてゆくトウヤの体を掴むと傷を押さえた。
鼓動と同じ速度で溢れ出る血は二人の顔を染めた。
『勝手に・・・しろよ・・・。』
『違うよお・・・。違う。こんなこと・・・。』
ハルはトウヤにすがりつき泣きじゃくった。
『あたしの血あげるから。お願いだからあ!』
ハルは自分の銃を握り胸に当てた。
けれどそれは取り上げられた。
『メンター!』
『二人の決闘をお前は見届けた。』
『え・・・?』
『決闘の末、二人は運悪く命を落とした。』
『何言って・・・。まだ二人は生きてるんです!助けて!』
トウヤの体は自分の血で作った池に横たわっていた。
けれどハルは希望を捨てたくはなかった。
『私が悪いの!私が死ぬから、トウヤを連れてかないで!わたしの心臓でもなんでもあげるから!トウヤを助けて!』
『お前は何を勉強してきた?これだけの血を流せば確実に死ぬ。たとえどれだけ強靭な体であろうとな。』
『血はあげるから!助けて!早く医者に見せて!私の命はいらないから!』
『少し静かにしていろ。』
メンターはトウヤの側に落ちていたものを拾うとハルに渡した。
『・・・まだ渡していなかったのか。トウヤがお前あてに買ったものだ。つけてやれ。』
ローズクォーツのブレスレットだった。
『え・・・?』
『お前のために随分前に用意していた。』
それはトウヤの血で更に紅くなっていた。
メンターはそれだけ伝えると薬をかがせ、ハルはそれを握り締めたまま気を失った。
『決闘の末二人は果てた。よって残った三人を新たな構成員として認めよう。尚、部隊については今後軽率な行動を慎むよう『戒』という名を与える。以後、任務に励むように。』
暗部から三人はそれぞれ浅葱色の手袋を受け取った。
待ち望んだはずの任命式は最悪なものだった。
今まであったはずの二人の影はもうない。
三人は誰も正面を見ることは出来なかった。
ルカは唇を噛みながら左を見ていた。
ソウマは真ん中に立つ足元もおぼつかない少女を見ていた。
少女の目は完全に焦点を失い、何を話しかけても返事すら返ってこなかった。
ただ手にはローズクオーツのブレスレットだけしっかり握られていた。