第46話 過去の真実 追撃者
『何してんだよ。・・・お前ら自分のしたことわかってのか?』
『お願い逃がして!』
『ハル・・・。こいつと逃げるつもりか?逃げられると思ってんのか?この組織から。』
例えどれだけ好きな人を目にしても、止まる事などハルには許されなかった。
これしか皆が助かる方法はないのだから。
『何も聞かずに逃がして!お願いだから。』
『なんで?一緒にいようって約束したのに・・・。何で・・・・。』
『だって・・・。』
(私だって本当は一緒にいたいよ。でも、誰にも死んで欲しくないもん。ルカもソウマも生きていればいつか会えるかもしれないんだもん!)
『行くぞ・・・時間がない。』
動けないでいたハルの手をシギが取った。
それを見てトウヤは怒鳴った。
『逃げたやつは死だ!分かってんだろ!どこまでも追われ続けるぞ!一生!お前らには死しかないんだ。』
(そう、無事に逃げられたとしても逃げ続けないといけないんだ・・・。そんなこと分かってたはず。でも私が死んでトウヤが生き残れるならそれで幸せだもん。)
『・・・それでも・・・私は・・・行くよ。』
無意識に微笑んでいたのかもしれない。
きっと逢えるのがこれで最後でもかまわない。
トウヤや仲間の命を奪って生きていくことのほうが地獄だった。
『お前が・・・唆したのか?』
『最後はこいつが選んだ道だ。黙ってろ。』
『黙ってられるか!』
トウヤは剣を抜いた。
それと同時にシギは鋼線を袋から出した。
『止めて!トウヤ、私たちを行かせて!』
『お前も考えろ!これからハルがどんな扱いを受けるのか!』
トウヤは何もいわなかった。
静かにシギを見据えていた。
しかし、火花が散った。
トウヤの突きをシギがかわし、しなった鋼線に触れたトウヤの服が裂けた。
『お願い止めて!お願いだから!』
二人の目は血走り光っていた。
いつも穏やかな顔をしているトウヤが殺気に支配されていた。
今まで見せたことのない剣速。
ハルはまさかトウヤがここまで強いと思っていなかった。
縦横無尽に動き回る線の隙をつき、トウヤは何度もシギを傷つけた。シギの体から血が噴出すたびハルは首を振って、トウヤにやめて欲しいと叫んだ。
が、シギは胸を斬られとうとう倒れた。
『シギ!』
駆け寄るとシギはハルを突き飛ばす。
『下がってろ!』
後ろではトウヤが静かに立っていた。トウヤの剣からは血が滴り落ちていた。
そしてそれは二人の頭上へと持ち上げられた。
『やめてえ!』
一瞬だった。
もう満足に動くことの出来なかったシギは指先だけで鋼線を操るとトウヤの体を左下から右上へ裂いた。