第44話 過去の真実 動き出した夜
次の日の夜、ルカとソウマとトウヤは就寝前の自由時間を部屋ですごしていた。
ただルカもソウマもいつもと様子の違うトウヤを無意識に観察していた。
トウヤは明らかに意気消沈し、天井をただ眺めていた。
『お〜い。トウヤ。テストに緊張してんのか?』
『どうしました?ハルと喧嘩しましたか?』
『うるさいよ・・・。』
いつもと違うことはもう一つあった。
メンターと暗部が入ってきたことだった。
三人は顔を見合わせるた。
『ハル、シギの二人脱走した。抹殺しろ。』
三人は凍りつきメンターは目を閉じる。
『残ったものが自動的に隊員となる。試験の手間が省けた。よかったな。』
『うるせえ。』
カイクは閉じていた目を開いて三人を見据えた。
三人は言葉を求めていた。
『きいたろ?』
『ど、どういうことだよ!』
ルカが立ち上がって怒鳴り返す。
『シギとハルが二人で逃げ出した。あとは聞いたとおりだ・・・。』
『わかんねえよ!』
『ルカ落ち着きなさい。二人が脱走したというのはどういうことなんですか?』
『俺が知るか・・・。』
カイクは唇に手を当ててあらぬ方向を見ていた。
その表情からかなり状態が悪いことは分かった。
『最終試験が一日早まっただけだ。明日になればお前たちは三人になっていた。誰か二人の命を奪ってな。むしろ逃げ出してくれてよかったな。これで遠慮なく斬れる。』
『ウルサイ!黙れ!』
メンターは暗部を怒鳴りつけると蹴り飛ばした。
『どういうことだよ?二人の命を奪うって。試験ってそういうことだったのか?』
ルカは震える唇で言葉を紡ぎ頭を抱えて膝をついた。
『俺、二人を殺すなんて嫌だ!』
『どうして殺さないといけないんです!構成員になれなくたって十分戦えるのに!』
ソウマも口調を荒げ、メンターに詰め寄る。
『そうだ!何とかしてくれよ!メンター!嫌だよ!ハルもシギだって殺したくねえよ!』
『・・・お前ら何甘えてる!』
メンターはそれをただ吐き捨てた。
そして部屋の奥で黙っていたトウヤが静かに立った。
『二人死ねば、後は構成員なんだな。』
トウヤだけは剣を持って歩き出した。
『おい!』
ルカが慌ててトウヤの腕を掴むとトウヤは腕を振り払った。
『殺す・・・気ですか・・・。』
『必要だといわれればそうする。』
トウヤの目は完全に殺気立っていた。
その目に圧されて二人は黙った。
『トウヤ・・・。よく言った。お前らも行け。』
『俺嫌だよ・・・。殺したくないよ。何で、何で?五人で任務こなせば良いじゃないか。』
『仲間を殺す精神力のない人間はこの組織には要らない。そういうことだ。』
メンターは冷たい目でルカを見て出て行った。
残った二人は抜殻の様な顔をしてそこに座っているしかできなかった。
『どうすりゃあいいんだよ。』
『殺したくはない・・・。でも、死にたくもない・・・。一番弱いのは私たちですかね。』
『そんな強さいらねえよ。』
『私もです・・・。』