第34話 裏切り行為
「ハル!ちょっと来い!」
メンターだった。
ソウマはその後ろからついて戻ってきた。
「お前らどうして鷹紋家のこと報告しなかった!ましてや、お前は神の御剣と接触しているらしいじゃないか!」
「・・・すいません。」
メンターはハルの胸ぐらを掴んで引き寄せた。
「すいませんじゃねえ!自分が今暗部に目をつけられてること位分かってたんだろ!」
「・・・はい。」
メンターの顔はいたって冷静だったが声から察するに感情が高ぶっているのが分かった。
「今日、一人捕まった。誰が捕まったかぐらい分かるだろう!」
「え・・・?」
「暗部が捕らえてきた。相手もろともな。」
(嘘・・・早い・・・。そんな。)
「お前は謹慎してろ!暗部には俺が話をつけてくる。」
「謹慎て・・・。」
「そうです、ハルは神の御剣に目をつけられてるだけで。」
「お前らは通常に任務につけ。ハルは隔離して閉じ込める!」
「そんな!待ってくれよメンター。」
ルカがメンターとの間に割り込もうとしたがメンターは白黒の写真を投げつけた。
「こいつが会っていた神の御剣は、シギだ。」
「え・・・?」
「まさか・・・。」
「嘘だろ?」
二人が凍りつくのが分かった。
落ちた写真には宿屋に連れ込まれた写真が何枚もあった。
角度によってはまるで二人には肉体関係があるようなものもあった。
「シギ・・・って・・嘘だろ・・・?」
ルカは動揺して震える手で写真を拾った。
そこには二人の顔がはっきり映っていた。
「シギって!何で隠してたんだよ。」
ルカは我を忘れハルに掴みかかった。
先ほどの優しさは完全に消えうせてしまっていた。
「こいつのせいでトウヤが死んだんだ!こいつに殺されたんだぞ!お前分かってんのか?お前とシギが逃げさえしなければ!」
「止めなさい!ルカ!」
「止めんな、ソウマ!俺たちどんな思いしてきたと思ってんだ!」
「分かっています!落ち着きなさい!」
「何でここまで三人でやってきて、またシギが出てくるんだよ!なんでトウヤじゃなくてシギなんだよ!」
突き飛ばされハルは壁で背中をうった。
息が詰まったが、それよりも自分のせいでまた心がバラバラになった方が心が引き裂かれるように痛かった。
「何で黙ってた!何で言わなかった!俺たちのこと信用してないのか!お前まさかまたシギと!」
「違う!それは無い!それはないんだよ!」
「だったら、何だ!」
もう一度掴もうとしたルカをメンターとソウマが止めた。
「離せってば!」
「よしなさい!ルカ!」
けれどルカは堪えられない怒りを何かにぶつけようとしていた。
ハルはその場に座り込んで呟いた。
「・・・ごめん・・・。」
「とにかく処刑が始まる。お前らも来い。」
メンターの冷たい言葉がハルの耳に入った。