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ゲームより大事なものは

ミトラ視点。

 記憶が戻ったのは、従兄弟に会ったとき。ひとつ下のそいつはおれと違いふつうの色彩の虎族で、おれが七つの時に両親と遊びに来た。


「はっじめましてー」


 軽い口調のそいつを見てよぎった記憶。


「ーー?」

「え、あ、兄貴?」


 お互いにボケッと見つめ合うこと暫し。


「あー、っと。今の名前ってミトラだっけ?」

「それがどうした?」


 何かを悩むようなそぶりのあと、こいつは爆弾を落とした。


「それって、つまり、乙女ゲームの攻略対象者ってことだね」

「……は?」


 そいついわく、ここはゲームの世界で、おれを含めた同学年の四人が、このゲームのヒロイン(人族)に攻略され、場合によっては逆ハーもあるという。

 ……まあ、相手が人族なら十分に逆ハーも許されはするが……。


「冗談じゃないぞ」


 こいつに会って、記憶が戻って理解した、おれの内にある焦燥。おれはあいつ以外はいらない。


「まあ、そーだよねー。兄貴にはカノジョがいたしー」

「当然だろ!」


 ……ただし、彼女といっても付き合ってた訳ではなく、おれの片想い。相手はこいつの友人だったからな。


「おれとお前がいる以上……」

「あの子もいる可能性は高いね」

「……なら、絶対に見つけてやる」


 今度こそ、彼女を手にいれる。


「あ、あの子がヒロインだったらどうすんの?」

「……そうだったとしても、あいつが逆ハーとかするか?」

「それもそっか。あるわけないねー」


 うんうん、とふたりして頷く。彼女はどっちかっていうと、一途なタイプだ。


「見つけたら教えてねー。ぼくも会いたいしー」

「わかってる」


 必ず、見つけ出す。





 そして、高校の入学式。おれのうでの中には気を失った少女がいる。


 ……一目で気がついた。彼女だ。


 どうやら猫族らしい、可愛らしい耳としっぽを持ってる。小さな手はおれの制服を握って離さない。

 おれはそのまま彼女を抱き上げて、保健室へ連れていった。保健の先生も、彼女を診て大丈夫と判断すると、おれと彼女を残して入学式に向かった。

  先生の許可を得て堂々と入学式をサボって彼女の寝顔をみつめていた。


 しばらくすると、彼女は寝言を呟き始めた。……内容はこの世界の元であろうゲームについて。

 おれが質問すると、寝惚けたまま答えている。可愛い。

 やがて目を覚ました彼女……舞桜と婚約の約束を取り付ける。あいては猫族でしかも宮の直系。うちの連中も喜んで受け入れるだろう。同系統の種族だと、強い子供が産まれやすいからな。


 すんなりと受け入れてくれた彼女は、恥ずかしそうにはにかむ。……どうやらおれが誰かは分かっていない、というよりも、そこら辺の記憶はないようだった。まあ、それは構わない。これからおれのすることは、彼女に愛されるように努力すること。そして、ヒロインからは逃げ切ることだな。


 舞桜の笑みを見つめながら、そう決めたのだった。

ミトラはゲームについては名前だけ。

妹と舞桜のことはよく覚えていました。

妹(現従兄弟)は、ゲームほどほど、兄と友人ほどほどといった感じです。

全員、自分については、かなりあいまいになっています。


とりあえず、以上でおしまいとさせていただきます。

いづれ、続きを書くかもしれませんが、書かない可能性も高いです。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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