ロングボウを構えた戦士の集団
巨大なモンスターは、その巨体をゆっくりと水上に持ち上げ、バーンたち一行の目の前でオクトハーブ湖畔に上陸しようとしていた。
「みんな、ひるむんじゃない! かえって攻撃しやすくなったじゃないか」
バーンは叫ぶ。水中にいる相手より陸に上がった相手の方が攻撃しやすい、これは、理屈の上では、確かにそのとおりである。ただ、問題は、有り体に言えば、バーンたち一行よりこのモンスターの方がはるかに強く、正面から正々堂々と戦っても勝ち目はなさそうということであった。
ジギスムントは、バトルアックスを巧みに操りモンスターの攻撃を受け止めながら、
「どうする! これでは、いずれ、やられるぞ!!」
「仕方がありません。ここは、最強の戦略をもって!」
サイラスが応えた。「最強の戦略」とは、「36計逃げるにしかず」とも言うが、つまり、そういうこと。真の武人を目指すジギスムントにとっては不本意でな選択であるが、彼は突撃一辺倒の教条主義者ではない。自らの実力の程もわきまえ、退くべき時には退くことも心得ていた。
ただし、問題がある人が、一人だけ……
「逃げるだって? 何を弱気な、ここで踏ん張らないで、どうするんだ!!」
バーンは己の実力も知らず、あくまでも強気だった。
しかし、バーンの反対は、パーティーにとってまったく障害ではなかった。なぜならば、全員でバーンを押さえ込み、場合によっては紐でぐるぐる巻きにして引きずっていけば、問題はないのだから。こういうわけで、パーティーメンバーがバーンの行動の自由を奪おうと身構えたとき、
「おまえたち、何者か知らんが、そこをどけ!!!」
突如、バーンたちの背後(陸地側)から中年のオヤジっぽいダミ声が響いた。振り向いてみると、そこにいたのは、完全武装してロングボウを構えた、百人以上の人数はいるであろう、戦士の集団。
「繰り返す。しかし、これで最後だ。その場を離れなければ、おまえたちも巻き込まれることになるぞ」
戦士たちの弓は、モンスターに向けられていた(したがって、彼らとモンスターとの間にいるバーンたち一行は、攻撃の妨げとなっている)。バーンはなおもモンスターに立ち向かおうとしたが、すぐにジギスムントたちに実力行使で押さえ込まれてしまった。
バーンたち一行がその場から脇に離れると、
「よし、これより攻撃。まずは弓で攻撃だ。それ、斉射!」
隊長であろう、ダミ声のオヤジの号令一下、モンスターに向け、一斉に矢が放たれた。
「よし! このまま休まず、攻撃を続けるんだ」
矢は雨のようにモンスターに降り注いだ。ただし、モンスターの皮膚は極めて固く、ロングボウの威力をもってしても、ダメージを与えるのは容易なことではなかった。それどころか、かえってモンスターを刺激することになってしまう。




