夕刻の港
話が終わると、バーンは勝ち誇ったかのように言う。
「……と、いうわけだ。もはや、モンスターの存在は疑いようのない事実だろう」
「いや、しかし…… 疑うとすれば、例えば、悲鳴が聞こえたといっても、強盗に襲われたということもあるわけですから……」
サイラスは、今更であるが苦笑した。モンスターがいると思って聞いていると、どんなことでもモンスターに結びつけて考えてしまうものである。
しかし、バーンは自信満々であった。
「そうだ、確かに強盗の可能性も捨てきれない。でも、こんなに多くのモンスターの証拠があるんだ。もはや、モンスターがいるいないで議論する段階じゃない。今は、モンスターを湖の底から引きずり出すために、どうするかを考えなければならない」
「ははは…… そうですね、どうするかですか……」
もう一度サイラスは苦笑した。あるいは、苦笑する以外ないという状況。
サイラスは「う~ん」と腕を組み、考え込んだ。湖にモンスターが絶対にいないとは断言できないによ、モンスターがいるとするバーンの主張にも相当に無理があることを、バーンに納得させることはできないだろう。であれば、この町でいつまでもモンスター探しに付き合わされることになる。しかし、いつまでもといっても……
サイラスの内心を代弁すれば、おそらくはひと言、「困った」ということであろうか。
そうして困っている間にも、オクトハーブ自由市の港には船が何隻も入港し、そのたびに、(バーンが最初に激昂したところの)入港の際の儀式が行われていた。さほど大きくない船であれば、数匹の子豚を殺して水中に投げ入れて祈りを捧げ、大きな船になると、暴れる牛に船から落とされそうになりながら、数人掛かりでどうにか牛を殺して儀式を行っている。
エディは何気なしにそんな光景を眺めながら、
「今日はすごいね。さっきからお供えにされた牛や豚を数えてみたら、もう数十頭」
「そりゃ、そうよ。明日がお祭りなんだから。今日は入港する船が多いんでしょう」
マリーナが相槌を打つ。
「そうですね。それに、もう夕刻です。船員にとっても、夜になる前に入港しておきたいと考えるのが自然な発想でしょう」
サイラスが、まるで気を紛らわせるかのように言った。
「いや、港に入港する船は、この際、問題じゃない!」
と、バーン。彼の口をついて出る言葉は、さながら投票日直前の選挙運動のごとく「モンスター」の連呼である。そして、両手をポンと合わせ、
「そうだ、モンスターを引きずり出す、うまい方法を思いついたぞ! 豚や牛に大きな針を付けて、つまり、モンスター釣りだ!」
「そんな、まさか……」
と、エディ。バーンらしい単純かつ安直な思いつきに、驚くというより、あきれている様子。他のメンバーも同じ思いなのであろう、マリーナは「ふぅ」とため息をつき、ジギスムントはムスッとして何も言わない。
ところが、珍しく、いや、こういうことは初めてだが、サイラスは……




