バーンを介した通行人の話
「今日、通りに出て、多くの人々から好意的に、話をきくことができた」
バーンは力強く拳を振り上げ、声高らかに言った。ただ、実際のところ、人々が必ずしも「好意的」であったわけではない。
「あの、バーン、何もこんなところで……」
と、エディ。重ねて言おう、ここは、オクトハーブ自由市の港。目の前には(ほんの少し歩けば)、黒っぽくよどむ水面が広がっている。荷物を抱えているエディやマリーナにとっては、「とりあえず宿に戻って、ひと息ついてからにしよう」と、言いたいところだろうか。
ところが、バーンは、その場の空気をまったく読むこともなく、
「いや、モンスターの脅威は場所を選ばない。分かっているだろう。とにかく……」
と、この日一日の聞き込みで得た情報を話し始めた。
こうなっては、マリーナも、エディも……つまり、バーンを除くパーティーのメンバーは、どうにも手の打ちようがない。お互いに「しょうがない」と顔を見合わせ、バーンの話に耳を傾けるのだった。
バーンの話は(そもそも要領を得て話すという能力に欠けるバーンなので、その内容を整理し、かつ、箇条書きにすると)、およそ次のようになろうか。
なお、次に示す内容は、人々の話そのままではない。バーンが、「人々から聞いた話」として、パーティーのメンバーに語ったところの内容を要約したものである。したがって、バーンの主観的な(思い込みによる)バイアスによって、話の内容が相当に歪められている可能性が非常に高いことは、念頭に置く必要があろう。
すなわち……
夜に所用で町を歩いていると、湖畔から、けたたましい悲鳴が聞こえ(多分、モンスターに襲われたのだろう)、恐ろしくなってきたので慌てて逃げた。
自分が子供の頃、湖に半漁人が住んでいて、常に湖畔を歩いている人を狙っているという話を聞いたことがある。
子供の頃、親から、「悪いことをすると、湖の怪物に食べられるぞ」と脅された。
湖に落ちておぼれそうになったことがある。たまたま季節が夏で付近に人が大勢いたので助けてもらえたが、その際、水中で何かに足を引っ張られた。
一度、禁を犯して釣りをしたことがある。その際、ものすごく大きな生物(多分、モンスターだろう)が食いついたらしく、湖に引きずり込まれそうになった。
夜に湖畔を通りかかったら、(モンスターの目と思われる)黄色く丸い光がふたつ、湖面に映っていた。
夜中にたまたま湖畔で、恐竜(首長竜)のようなものを見た。
バーンは身振り手振りを交え、汗を飛ばしながら懸命に話した。あたかも、自分がその場面に出くわし、実際にモンスターを見た、あるいはモンスターの決定的な証拠をつかんだかのように。




