湖に何かいるという
チャーリーは、興奮して大声を上げるバーンをよそに、「ふぅ」とため息をつき、
「おまえはいいな。モンスターさえいれば、万事OKなんだろ」
「何を言ってるんだ。モンスターがいれば、やっつける。それは当然じゃないか」
と、バーン。少々会話がかみ合っていない感もあるが、それはそれとして、
「確証はないが、湖に何かいるという話はあった。祭りだか儀式だか、そのクライマックスが狙い目らしいが、話としては、その程度だな」
チャーリーは、そう言うと、ニヤリ。
すると、バーンは「おおっ」と、気合を込めて拳を突き上げ、
「やっぱり、モンスターはいるんだ! 間違いない。混沌のモンスターをやっつけ、町の人々をモンスターの恐怖から解放しよう。それが我々の使命だ!」
バーンの頭の中は、既にモンスターのことばかりである。ところが、他のメンバーは非常に懐疑的であった。
サイラスは「う~ん」と腕を組み、
「もし、本当にモンスターなら、公式な記録にも、少なくともモンスターの痕跡のようなものは残ると思うのですが……」
のみならず、マリーナも、モンスターがいるという話にはまったく賛同できないのであろう、
「そりゃ、湖に、『何か』はいるでしょう。それがモンスターかどうかは別にして……」
実は、運河と湖の神のお祭りを明日に控え、街のメインストリートは露店で埋め尽くされるのだ。しかも、昨日より露店の数は更に増えているはずである。本能的にショッピングや買い物の魅力に抗することができないマリーナにとって、今日は、あえて言えば「天下分け目の天王山」であり、モンスターどころではない。何が何でもメインストリートにくり出さなければならないという、まさに正念場なのだ。
マリーナは恨めしげな視線でもって、じっとチャーリーを見つめた。
チャーリーは、そんなマリーナの視線に気付いたのか、あるいは別の意図があってか、
「しかし、今日は出ないな。今日に限っては、モンスターを期待するだけ無駄だな」
「なにぃ? チャーリー、それはどういうことだ!?」
今度は、バーンが納得できない様子。
「『とういうこと』って…… それは、つまり、そういうものなんだよ」
チャーリーはそう言って、ニヤリ。そして、手早く朝食のサンドイッチを口に詰め込むと、大蛸亭のマッチョなオヤジを呼び出し、宿泊費及び朝食費を支払い、
「とりあえず、今日は…… そうだな、メインストリートにくり出すか。バーンよ、情報収集が必要なんだろう。今日なら、通行人から、いろんな情報が聞けるぞ」
マリーナは、そのチャーリーの言葉を聞くと「きゃあ!」と歓声を上げ、大喜び。すなわち、チャーリーの発言(提案)は、メインストリートでショッピングと同義なのだ。マリーナはエディと手を取り合い、喜び合っている。サイラスとジギスムントも「うむ」とうなずき合い、賛成の様子。ひとりバーンだけは不満のようだが、流れには抗しきれないようだ。




