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ザ☆旅行記 外伝 バーン・カニング列伝  作者: 小宮登志子
第3章 運河と湖の神を祀る神殿
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シーフギルド

 チャーリーはチッと舌打ちし、

「しょうがねえな……」

 と、立ち上がり、おもむろに大蛸亭の出入口に向けて歩き出した。

 バーンも大喜びして駆け出し、「さあ、みんな、自分とチャーリーに続け」とばかりに、腕をグルグル振り回している。

 マリーナ、エディ、サイラス及びジギスムントは、当然のごとくチャーリーの「NO」という答えを予想していたので、思わず、唖然(目が点という表現がピッタリだろう)。ただ、シーフギルドに行こうとする二人をそのまま放置するのも何かと心配なので、仕方なく後を追った。


 道すがら、バーンはご機嫌に、チャーリーの肩をバシバシとたたき、

「おまえ、本当は、いいヤツだったんだなあ。いつも、こんな調子でいてくれれば、喧嘩になんか、ならないんだ」

 しかし、チャーリーは眉間にしわを寄せ、チッと舌打ちするだけ。「鬱陶しいから話しかけるな」と言いたいのを、こらえているかのような態度である。

 二人の後について歩くマリーナたち四人は、みな一様に不思議そうな顔をして、「はて」と首をひねっている。

「今までお互いに毛嫌いしていたのに、どうしたのかしら。それに、こんな時間から出かけるなんて、本当に、冗談じゃないわ」

 マリーナは不平を漏らしつつ、ため息をついた。エディも「そうだ、そうだ」というように、何度かうなずく。

 しかし、サイラスは苦笑しながら、「まあまあ」とマリーナとエディをなだめ、

「そうですね。確かに、いつもの二人ではない。ただ、だからこそ、あの二人の間に何があったのか、あるいは、何があるのか、気になるとは思いませんか」

 すると、マリーナとエディは、図らずも(あるいは偶然にも)声を合わせ、

「思いません!」


 バーンたち一行が向かっているシーフギルドとは、文字通り、シーフを構成員とする会員制の相互扶助組織であり、商工業者の間で結成される職業別組合のシーフ版とも呼べるものである。ただし、強盗や殺人などが非合法とされるのは、どの世界でも同じであり、表向きは、身辺警護、債権取立、迷宮探索補助などを行う「なんでも屋」として活動を行っている。

 大抵の場合、一つの町には一つのシーフギルドが置かれ、所属するシーフに対し、情報の提供、シーフ技能の教育訓練、シーフ用各種ツールの販売等が行われている。基本的には、ある町のシーフギルドに所属していれば、シーフの身分的特典として、他の町のシーフギルドにおいても様々な便益を受けることができる。

 なお、町の統治者は、重大犯罪に至らなければ、シーフギルドをシーフに対する事実上の監督機関として利用しようとする場合が多く、むしろ持ちつ持たれつの関係になることも往々にしてある。

 ただ、実態として、シーフは非合法活動に従事することが多くなることから、扱う情報には、いわゆる裏情報(「ここだけの話」みたいな)も増える。この町のシーフギルドが有する(裏)情報の中に、モンスターの存在を裏付けるものがあることを、バーンは期待しているのだが、果たして……

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