不仲の秘密
オクトハーブの町のシーフギルドは、町外れの一角にあった。そこに至るまでに一度、町の警備兵から職務質問を受けることはあったが、現に違法行為を行っていたわけでもないため、うさんくさい目でにらまれつつも、特にトラブル発生ということはなかった。
シーフギルドの周囲には、小さい(「みすぼらしい」と表現する方が正確であろう)家々が連なっていて、付近の路上には、あちこちにゴミや小動物の死体が転がっている。つまり、絵に描いたような貧民街あるいはスラム街である。シーフギルドの建物はこぢんまりと、周囲の家々に溶け込んでいた。
「着いたぞ」
チャーリーが言った。その背後でバーンが「よしっ」と気合いの入った声を上げる。しかし、チャーリーはバーンに構うことなく、そそくさと入口のドアを開け、シーフギルドの建物の中に入っていった。
「なんだ、あの態度は! せっかく、掛け声だけでも応援してやろうとしているのに」
バーンは大声を上げた。
マリーナは「はて」と首をひねりつつ、「ふぅ」とため息をつき、
「やっぱり、バーンとチャーリーって、仲が悪いのよね。本当に、何なのかしら」
エディもマリーナと同じ気持ちのようで、二人はお互いに顔を合わせてうなずき合っている。
「仲が良くないことは確かなのでしょう。ただ、今回の場合は、チャーリーに何か思うところがあるのでしょうか。個人的には、気になるところですね」
サイラスは何やら興味深げな表情で、バーンの後ろ姿とシーフギルドの入口の扉を交互に眺めていた。
さて、いつもトラブルメーカーとなっているバーンとチャーリーであるが、そもそもどうして二人はこうも仲が悪いのか。しかも、それでいて、どうしてパーティーを解消しないのか。
チャーリーがシーフギルドで情報を収集してバーンたちのもとに戻ってくるまでの間を利用し、この辺りで、バーンとチャーリーの仲の悪さ等々に関する事情について説明することとしよう。
チャーリーがバーンたちのパーティーに加わったのは、今から1年ほど前。実は、チャーリーがパーティーに加わるきっかけとなった事件こそ、仲の悪さのそもそもの元凶とも言うべきものだった。
当時、チャーリーを除く5人でパーティーを組んでいたバーンたち一行は、冒険の途中に訪れた町で、たまたま発生していた事件(名付けるとすれば「町一番の有力者宅における人質籠城事件」)の解決を依頼されることとなった。
事件の概要は、ハーフ・オークの魔法使いを頭目とする無法者集団が、町一番の有力者宅に押し入り、その有力者の令嬢を人質に取って籠城し、法外な額の身代金などを要求したというものである。
バーンとチャーリーにとっては、この事件が二人の不仲の原因のみならず、悲劇の始まりともなったのである。




