表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/51

バラディスの依頼と勇者の覚悟

8月13日 本文中に追加の記述をしました。ストーリー全体としては、変更はありません。

ミーリャが慎吾達と生活することになった次の日、ビランツァの北の森に依頼で出向いていた冒険者が慌てた様子でギルドへと駆け込んで来た。

その男によると、北の森から大量の魔物達が町へと進行してきているらしい。

バラディスは事実確認の為にすぐに斥候を遣わし、その大群を確認している。


「それにしても・・・なんでこんな大群が向かってきていることに、今の今まで気付かなかった?」

「いくつかの小さな団体に分かれて、平野の岩場や林などに隠れていたようです」


舌打ちしながら漏らすバラディスに、報告に来た斥候の一人が言葉を続ける。

現状、ビランツァにはあまり冒険者が居ない。

リックハーンが滅亡したことにより、冒険者のほとんどが危険を感じて中央へ向かったためだ。

そのため、日常的な斥候も数を出せていない。

今回魔物に気付くことができなかったのも、それが理由だろう。


「・・・それで?魔物達の数は、千を越すってか?」

「はい。ゴブリンを初め、複数種の魔物が群れを成しています」


苦々しげに言うバラディスに、斥候が答える。


「魔物の種類は、正確に分かるか?」

「遠目で判断できたのはゴブリンの他にオーガとオーク、ヘルハウンド辺りですね。判別のつかなかったものも入れますと、十種類程度かと」


斥候の報告に、バラディスは思わず頭を抱えそうになる。


「数だけじゃなく、質も揃ってるか・・・」

「あとは、姿を見てはいないのですが・・・」


言いづらそうな斥候に、バラディスが促す。


「どうした?」

「北の森に入った者が、巨大な足跡を見つけています。サイズから言って、ジャイアントよりも体の大きなものかと」


斥候の報告が続くにつれ、バラディスの表情も苦いものに変わる。


「おいおい、まさか・・・」

「はい、恐らく・・・ドラゴンです」


顔を引きつらせながら漏らすバラディスに、斥候も固い顔で頷く。

巨大な肉体と膨大な魔力を持ち、気紛れで町を一つ壊滅させるような存在。

災害と同等と言われる『接触禁忌種』の名に、バラディスは叫び出しそうになるのを必死で堪える。


「それにしても、それだけの質と数の魔物が仲間割れ無く来てるって事は・・・」

「はい、バラディスさんの考えている通りかと」

「やっぱり、裏で糸を引いている奴が居るか・・・」


ドラゴンの事を脇におき、別の事を考えるバラディス。

魔物を操る、黒幕の存在。

バラディスは随分と前から、噂の中にその存在を確認していた。


「しかし、ドラゴンまで使えるとはな」

「予想していた以上の事態になっていますね」


相手の駒にドラゴンが居るということは、ドラゴンを魔法等が効くまで弱らせる事のできる力を持っているという事だ。

通常、ドラゴンの討伐には万単位の軍が必要だと言われている。

それほどの力を持った組織だとは、バラディスも予想していなかった。


「分かった。引き続き、魔物の情報を集めてくれ。できる限り、種類を絞り込みたい」

「了解しました。では、失礼します」


斥候は軽く礼をし、部屋から退出する。

誰も居なくなった部屋で、バラディスは椅子の背もたれに深くもたれ掛かる。

千を越える魔物の大群に、ドラゴン。

恐らくと言っていたが、あの斥候が憶測だけで報告をしないことはバラディスも知っている。


(しかし、勇者の召喚と襲撃のタイミング・・・)


斥候には言っていないが、バラディスにはもう一つの懸念事項があった。

恐らく一週間程前に召喚された勇者と、今回の襲撃との関係だ。


(魔王の時の事で、先に勇者を潰す事にしたか?)


いかに勇者と言えど、今は訓練中の身だ。

相手が芽は若いうちにと考えているいても、不思議ではない。


(どうにしろ、ひよっこを戦いに出すわけにはいかねぇ・・・)


これから始まる戦いは、初心者が出ることのできるレベルを越している。


(だが、あいつらには出てもらわねぇとマズイよな)


そこまで考えたとき、部屋の扉がノックされる。

バラディスは素早く姿勢を整え、扉の向こうへ声をかける。


「誰だ?」

「シンゴ様とエレイナ様をお連れしました」

「入れ」


バラディスが許可を出すと、扉が開いてシンゴとエレイナが入る。


「よう。昨日ぶりだな」


ふたりを連れてきた職員が退出してから、バラディスは口を開く。


「用件は・・・知ってるよな?」

「・・・ああ」

「まあ、改めて言おうか」


真剣な表情の二人に、バラディスは椅子から立ち上がって頭を下げる。

バラディスは、この町の最高戦力ーー


「この町を守るために、力を貸してほしい」


異世界の勇者と精霊使いに助けを求めた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「なぜだ!」


ティルキアの屋敷に、エレイナの声が響く。

慎吾達は今朝屋敷へ来たギルドの職員からの連絡で、バラディスの元へと向かった。

そこで聞いたのは、ゴブリンを初めとした魔物の大群がビランツァへ進行しているという話だ。

その数、千を越える程らしい。

そして、バラディスはその驚異から町を守るために慎吾達に協力を依頼した。

エレイナは、勿論その依頼に対して二つ返事で承諾するつもりだったがーー


「なぜ、バラディスからの依頼を断った!」

「ちょ、エリー。うるさいから、耳元で叫ぶな。それに、べつに断った訳じゃねえだろ。少し、保留にしてもらっただけだ」


そう、慎吾はバラディスに「少し考える時間をくれ」と言った。

魔物を相手に戦う事が普通だと思っていたエレイナは、そう言った慎吾に対して怒りを覚えているのだ。


「断ったのと、ほとんど変わらないではないか!」

「この場合は、全然ちげぇよ。細かいことは、皆が揃ってから話す」


そう言っていると、慎吾達の居る部屋に勝間、海香、ティルキアの三人が入ってくる。

今慎吾達が居るのは、ティルキアの屋敷の会議室である。

いつもならティルキアの部屋か食堂で話すのだが、内容が内容だけに今回は他の人に聞かれないようにここを使っている。


「シンゴさん、話があると聞きましたが?」

「ちょっと待て。・・・シルヴィ、ヴル」


ティルキアの質問に、慎吾は契約精霊の二匹を呼び出す。


「シルヴィとヴルにも、関係する話なのか?」

「まぁ、少しはな」


エレイナの言葉に慎吾が頷き、話を始める。


「俺達がギルドに呼び出された事は、皆が知っていると思う」

「まあ、あれだけ目立つやり方されたらね・・・」


慎吾の言葉に、慎吾とエレイナ以外の三人が苦笑いを浮かべる。


「どんな呼ばれ方をしたのか、気になるが・・・。それは、また今度にするか」

「話というのは、それに関係するものなのですか?」


話がズレかけたのを止めた慎吾に、ティルキアが聞いてきた。

このあたりの察しのよさは、さすが王女といったところか。


「ああ。ギルド長と話したんだが、ビランツァが相当危ないらしい」

「何があったの?」


険しげな顔で聞いてくる海香に、今度はエレイナが答える。


「大量の魔物が、群れをなしてビランツァへ向かっているらしい」

「そう言う事だ。それで、俺とエレイナに協力を求めてきた」


魔物の襲撃という言葉に、ティルキアの顔が青ざめる。

当然だろう、ティルキアの国は魔物の襲撃によって滅びたのだから。


「それに対して、俺はその答えを一旦保留にしてもらっている」

「どうして!?」


慎吾の言葉に、海香が非難の声をあげる。

他の者も、似たような気持ちだろう。


「それは、今回の襲撃の目的に気が付いたからだ」

「襲撃の目的?・・・なるほど、そう言う事ですか」


しかし、続く慎吾の言葉にティルキアが理解の色を見せた。


「さすがに、ティルには分かったか。なら、俺が依頼を保留にした理由も分かるな?」

「はい。魔物の襲撃に乗じて、目的を果たそうと別行動する者が居るかもしれないから・・・ですね?」


ティルキアの言葉に、慎吾が頷く。


「で、本当の目的とは一体なんだ?皆を集めたって事は、この中に居るのだろう?」

「ああ、そうだ。魔物達の裏にいる存在の、本当の目的はーー」


そういって慎吾は、一人に目線を向ける。

他の者も、それにつられて目線を動かした。

その目線の先に居るのはーー


「勝間、勇者であるお前の暗殺だ」

「俺の・・・暗殺?」


慎吾の言葉に、勝間の目が大きく見開かれた。


「・・・なるほどな。勇者として力をつける前に、潰そうという魂胆か。すると、シンゴが依頼を保留にした理由は・・・」

「そう、下手に受けて勝間がどうこうなったらマズイからな」


理解を示すエレイナに、慎吾は頷く。

慎吾の中では、この街の危機よりも勝間達の身の安全の方が優先だ。

旅の途中で魔物に襲われたと言うなら自業自得だろうが、手の届く範囲では護っていこうと考えている。


「で、でも、俺達は慎吾達と違って町には出てないぞ?」

「多分、召喚の時の魔力でバレたんだろう。バラディスのオッサンも感じたみてぇだしな」


勝間の言葉に、慎吾は肩を竦める。

召喚された後に調べた事によると、召喚魔法は特徴的な魔力を放出するようなのだ。 バラディスが知っていたと言うことは、それなりに認知度のある情報なのだろう。


「で、どうするんだ?俺かエレイナのどちらかが護衛に付くこともできるぞ?」

「で、できれば、護衛に付いてほしいけど・・・。魔物の方は、大丈夫なのか?」


慎吾の提案に、勝間は自分より慎吾達の心配をする。


「おいおい、こんなときに他人の心配か?大丈夫だよ。俺もエレイナも、そんなに柔じゃない」

「ああ。千やそこらの魔物に、遅れをとったりはしない」


それに対して慎吾とエレイナは少し呆れながらも、請け負う。


「・・・分かった。じゃあ、護衛に付いてもらうよ。でも、俺も町に行く」

「・・・なに?」


勝間の言葉に、慎吾とエレイナは眉をひそめる。

当然だ。

普通に考えて、町に出ると暗殺の可能性が段違いに上がるのだ。


「俺が町に行けば、無駄に被害を広げずに済むかも知れない。それに、暗殺者の裏をかけるかも知れないしな」

「・・・はぁ。分かった」


勝間の目に宿る決意に、ため息をつきながら慎吾が折れた。

勝間は色々と悩む割に、一度決めた事はよっぽどの事がないかぎり覆さない。

それに、勝間が言った事もあながち間違えとも言えないのだ。


「じゃあ、バラディスのオッサンにエレイナと俺のどちらかが参加するって伝えとくぞ」


そうして、慎吾とエレイナ、勝間が町へ行くことになった。

ちなみに海香とティルキアも念のため町へ行くことになったのだが、それはまた別の話。

海香「そう言えば、バラディスさんって『翼人種(ウィリンニア)』なの?」

慎吾「さあ、どうだろ?人間種って、『獣人種(ビースニア)』以外は外見から判断しにくいらしいからな」

エレイナ「そうなのか?」

ティル「はい。翼人種の羽や魚人種(マーメニア)のヒレなどは畳むことができますから」

慎「もしかしたら、試験の時の姿も幻影かも知れねぇしな」

勝間「どうにかして、バラディスさんの本当の姿を見てみたいな」

慎「そうだな」

海・テ・エ「お前 (貴方)達、そんな趣味が…」ソソソ

慎・勝「違うからな!?」



大規模な戦闘描写が来るかと思えば、まさかの襲撃前の話です。肩透かしを食らった皆様、申し訳ありません。

さて、次話はきっちり(?)戦闘になります。頑張って、一瞬で終わらないようにします。

では、また次話。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ