2話 捕まった☆
面白いと感じてくださった方は、評価、ブクマをしてもらえると嬉しいです!
☆
光が開けると、俺はどっかの城の城壁の上に死ぬ前と全く同じ姿で立っていた。
少し高めの城壁。
そこから見える景色は、絶景と言える最低限であった。
周りは緑に覆われており、遠くには山脈が見える。
綺麗であっても、絶景というには物足りない。
服は死ぬ前と同じ、Tシャツとジーンズ。
すごく、景色に合わない。
「誰だ、貴様は!」
後ろから聞こえる罵声。
少し安心した。
ここの言語は日本語のようだ。
今俺がいる場所は明らかに日本ではないが。
振り向くと、そこには6人の兵士がいた。
皆、腕は太くガタイがいい。
目に傷を負っている人も何人かいる。
歴戦。
そう思わせるような兵士たちだった。
「あー、えーっと。赤井鉄平と申します。」
もしかしたら日本と文化は違うのかもしれない。
もう一言付け加える。
「赤井が名字です。」
そう聞くや否や、一斉に剣を抜く兵士たち。
赤井って名前は禁忌だった?
この人たちにとって敵だったのか?
「名字があるということは、お前は貴族だと言いたいのだろう?だがな!うちの国には"赤井"のような貴族家は存在しないのだ!ならばお前は他国の貴族か、平民のくせに貴族を名乗る不敬者。捕えるしかないな!」
そして、だいぶ乱暴に縄で捕えられた。
ロープには、ところどころ結び目がある。
これが至る所で噛み合って、少し解けにくくなっている。
もしかしたら、キープ的な意味もあるかもしれないが。
「ついてこい!」
男はそう言い、俺をどこか、きっと地下牢だろうが連れて行っている。
実は俺、少し安心している。
それはいったいなぜか。
手に穴をあけられなかったり、秒で殺されなかったからだ。
何でそんなことを考えるのかって?
それは、元寇だ。
日蓮書状には次のように書いてある。
"去文永十一年十月ニ、蒙古国ヨリ筑紫ニ寄セテ有シニ、対馬ノ者、カタメテ有シ総馬尉等逃ケレハ、百姓等ハ男ヲハ或ハ殺シ、或ハ生取ニシ、女ヲハ或ハ取集テ、手ヲトヲシテ船ニ結付或ハ生取ニス、一人モ助カル者ナシ、壱岐ニヨセテモ又如是"
超雑に訳すと、
"ある時、モンゴルから船が来て、対馬勢は応戦はしたけど敗北。農家とかの男がいたら秒殺か生け取り、女は手に穴を開けて捕虜にした。そんなこんなで、1人も無事では済まなかった。"
なぜ俺は秒で殺されなかったのか。
推測だが、名字を別に名乗ったのが良かったのかもしれない。
もし、俺が貴族なら、そんな俺を殺すのは不益でしかない。
時と場合によっては戦争状態になるのだから。
男達はいきなり止まった。
牢屋についたのもわからないくらい、世界史にのめり込んでいたのだろう。
え?
元寇は日本史じゃないかって?
元寇は世界史にも出てくるし、それ以前に日本は世界の一部なのだ。
当然だろう。
「ついたぞ!入れ!」
「痛っ」
俺は地下牢に投げ入れられた。
両手が結ばれていて、うまく受け身が取れなかった。
だが、首を立たせることで、頭を打つのは防げた。
もう、世界史の知識を失ってたまるか。
自然とそう思っていたのかもしれない。
俺は前世、まぁまぁいい子にしていたもんで、牢屋に入ったことはない。
もちろん少年院にも。
初めての投獄。
大きな恐怖と少しの好奇心。
懲役とかさせられるのかな。
それとも、実験台にさせられるのかな。
いきなり死刑でギロチン行き、時代感的にまだなさそうだが、なんてことはないだろう。
ちなみにギロチンは1792年にフランスで正式に"人道的"な処刑器具として取り入れることが認められた。
"人道的"ってどこがやねん、って思う人もいるかもしれない。
だが、実はギロチンは"比較的人道的"なのだ。
ギロチンより前の時代では、ヨーロッパでの主な処刑方法は火炙りとか、斧、剣による断頭、車裂き、銃殺であった。
銃殺は案外人道的。
パァン、チーンで済む。
火炙りは無論すごい苦しい。
熱いし、痛いし。
車裂きなんて言うまでもないよね。
斧、剣による断頭は実は、ギロチンよりやばい。
どちらも首を斬るのにどうしてかって?
ギロチンは刃の重さで一発。
だが、斧とか剣はそう言うわけにはいかない。
場合によっては何回も斬りつけないといけないし、間違えて首以外を斬ってしまうこともある。
そんなんと比べたら、ギロチンは"比較的人道的"なのだ。
今はこんな感じでヘラヘラ、世界史の事を考えている俺。
その余裕がこの後すぐに無くなるとは、思ってもいなかった。




