1話 死にました☆
☆
俺は赤井鉄平。
高三生で、明日共通テスト。
俺は今、自分の部屋で1人パン1Tシャツで、徹夜で世界史の勉強をしている。
「うう、パフレヴィー朝建てたのは、、、、、誰だっけぇ。あぁ、レザー=ハーンだぁ。第一次世界大戦で連合国がブルガリアと結んだ条約わぁ、、、、トリアノンだっけぇ、ヌイイだっけぇ、サン=ジェルマンだっけぇ。ヌイイだったぁ。プガチョフの農民反乱を鎮圧したのは誰だっけぇ。フリードリヒ2世だっけぇ、カルロス1世だっけぇ。エカチェリーナ2世だったぁ。国も違うじゃん。もうダメかもぉ。」
今、こんな感じ。
共テ前日にこれはマズイよね。
流石にさ、勉強はしてたんよ。
でも、頭打ったら世界史だけ全部忘れちゃって。
え?
もう一回頭を打てば治るんじゃないかって?
ははっ。
そんなわけないだろう?
もしそうなら、記憶喪失なんていう病気はこの世に存在しないだろうよ。
「はぁ。」
なんか、辛いなぁ。
今まで、徹夜で勉強したことなんて、ほぼ無かったのに。
なんで"ほぼ"かって?
そりゃ徹夜したことがあるからに決まっておろう?
あれは中1の頃、夏休みに旅館に行ってた時だった。
夜に漫画を読んでたら、母親が急に課題テストの範囲の単語帳の問題出して来てさ、ほぼ答えられなかった。
そしたら母親がキレて、『徹夜で覚えなさい』だって。
ふっ。
しょうもない。
自業自得だ。
あの頃はまだ子供だったもんで、俺もキレていた。
喉が渇いた。
お茶ならさっき飲んだのに。
なんで?
口を開けてハァハァ呼吸してたのかな。
勉強に必死で。
それで、口の中が乾燥しちゃったのかな。
手元のコップの中は空。
………。
ヤカンのお茶を入れにいくか。
キュィィィィ
俺は肘置きがボロボロになった椅子から立ち上がる。
「あっっれっ」
ダダァン
慣れない徹夜のせいだろう。
目眩がした。
それでぶっ倒れて頭を強打。
そして、その衝撃で舌を噛み切る。
痛い。
痛い。
口から勢いよく流れ出ていく鮮やかな赤色の血。
それと同時に、勢いよく遠ざかっていく意識。
ああ。
つまらない人生ではなかったけど、つまらない死に方だったな。
☆
気づくと一面真っ白なところにいた。
ここは、どこだ?
俺の体はない。
自分の身体を認識できない。
所謂、意識だけが存在している世界。
『すごい死に方だねぇ、君』
どこかから声がする。
どこかから?
いや、違う。
俺の脳、、、はもう無いんだった。
俺の意識に直接語りかけてくる声。
………!
声が出ない。
なぜ?
ああ、口も声帯も肺もなかったんだった。
意識に声が語りかけてくるなら、俺が強く意識すればいいのか?
『誰ですか?』
『うーん、所謂神的存在だね。じゃあ、いきなりだけど問題!バグダードを建てたのは?』
『いきなり何ですか?そんなんアッバース朝の2代目カリフ、マンスールに決まってるじゃないですか』
『両シチリア王国を建てたのは?』
『ルッジェーロ2世』
『ミュール紡績機を作ったのは?』
『クロンプトン』
『カンタベリー物語を作ったのは?』
『チョーサー』
『955年に東フランク王国オットー1世が侵攻してきたマジャール人を撃退した戦いは?』
『レヒフェルトの戦い』
『グプタ朝2代目の王は?』
『サムドラグプタ』
『ボストン茶会事件で落とされた箱の数は?』
『342箱』
『ロベスピエールがよく通っていたレストランは?』
『カフェ・プロコップ』
『オーストリア=ハンガリー二重帝国の正式名称は?』
『帝国議会において代表される諸王国および諸邦ならびに神聖なるハンガリーのイシュトヴァーン王冠の諸邦』
『トゥール・ポワティエ間の戦いのウマイヤ朝側の総大将は?』
『アブドアッラフマーンイブンアブドゥッラーフアルガーフィキー』
『ナンダty』
『ダナナンダですよね。一体何なんですか?』
『戻ってるだろう?』
何が?
俺の体は戻ってきてないぞ?
俺の部屋に戻ってきてないぞ?
『世界史の知識だよ。戻ってるだろう?』
確かに。
戻ってきている。
俺が覚えたこと全て。
前回の共テ模試で100点を取った俺の世界史力が戻ってきている。
なぜ死んだ後?
もっと早ければ、いや、頭を打たなければ共テできっといい点数取れただろうに。
悔しい。
悔しい。
『悔しそうだね。じゃあ、その気持ちを次の世界にぶつけてきてね』
次の世界?
一体どういうこと?
『どこかから観てるよ。じゃあね。赤井鉄平さん』
『まっ、』
辺り一帯は光に包まれた。
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