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6-10 子爵との話し合い

遅筆申し訳ありません。

何度かの押し問答の末、彼は根負けした様にオイルライターを丁寧に受け取り何度もお礼を言われる始末であった。

こんな彼が本気で認めた領主の子爵に明日面談が出来る、どんな人物であるか一気に関心が高まったタローであった。



翌日は面談日となり、彼は身綺麗な服に白銀色の防具で上半身を纏い、足元は高価な皮での長靴を履いてトーマスさんと共に領主の館へと向かうのであった。


 ほう、、地方と言いながら流石領主の子爵としての邸に相応しい造りだな、、


決して華美な造りではないが大きな洋館2階建ての邸はそれなりの威厳に包まれてい.る。

待機している門番に来訪目的を告げると邸内へと案内された。何室かある内のひとつの応接間に通されて

この家の主が来るまで待機する事となった。


 ・・トーマスさん この部屋は商談用の部屋なのでしょうか?


室内の装備品も左程周りを圧迫する装飾品も少なく、落ち着いて談話する部屋として使用されそうだと彼は感じていた。


「・・そうですね 前にも何回か面談に及びましたが、この部屋が利用されましたね」


やがて入り口のドアが静かに開いて中年の落ち着いた紳士とその後ろに護衛と思われる目つきの鋭い人物が部屋の中へと入って来た。

その姿を確認するとトーマスとタローは静かに立ち上がり出迎える姿勢を取る。


「・・ああ 気にせずに座っておくれ」


にっこりと微笑みながら彼の指示により二人は再びソファーに座り込んだ。



「子爵様 本日は面談のご配慮を頂きまして 誠に有り難く、、、」

「ははは、、そんな堅ぐるしい挨拶はしなくても、、うん 今回は護衛の方も一緒に?」

「はい 先ずはご紹介したく、横に居ます彼は実はこの様ないで立ちですが、冒険者としても籍がありますが、現状は魔道具ギルドに在籍しております。魔道具の製造に於いても今かなり評判の高いバルベラ工房に所属する人物で名を・・・・・」


トーマスさんの紹介で彼の素性と名を明かされて、彼は改めて着座のまま深く子爵に対して頭を下げた。


「ほう?冒険者との二刀流と言う事かな?そしてバルベラ工房と言えば前回私が依頼した例の品を製造しているあの工房だな?」

「はい 隣国にて商談しバルベラ工房に出向いてオイルライターの件を交渉してみましたところ、、」

「・・その件は無理であったのでは?前回お前につい依頼してみたが、私としても自分の趣味と言え調べるとかなりの高値での売買品でもあった。今の私は個人の趣味よりこの領地の安定に向けての対策等に投資すべきであったと反省して居る。無理な事を依頼して済まなかったな、これに懲りずに引き続き領民への円滑な物資の手配を頼むぞ」


バルベラさんは金貨60枚前後にて商人達に卸していたが、当然末端には更に上乗せした価格での販売となる、子爵が手に入れるとなると最低でも金貨80~100枚にはなる物と思われるのだ。それに対して自分が提示した価格は精々金貨40枚であった、正直それ以上は今の経営的には余裕がなく、自分の趣味として出せる限界の金額でもあったのだ。


「・・いえ 実はこの品は先方との話し合いで金貨40枚にての購入が可能との事になり持参致しました次第で、、、、」

「何と、、それは本当の事なのか?どうすればそんなにも安い価格にて、、いや 君の手腕によるものだとしても破格値であるが? これは恐れ入った。私の入手情報を遥かに下回る価格での、、、、いや 待ちなさい、もしかして君の利益なしのただ働きになったのではないか?」


実際には実購入金額は金貨50枚で、実質は金貨10枚分不足ではあるのだが、、、


「・・ははは 確かに先方との話し合いで金貨40枚にての商談で求めまして、実質にはただ働きに近いですが、商人の立場として子爵様と今後も末永いお付き合いのお願いを希望しておりますので、どうぞお気になされぬ様に、、、、」

「・・・ふむ 此度のその気持ち忘れぬ様にするぞ。無理難題を済まなかったな、、、」

「もったいないお言葉を、、」


子爵も過去の苦しかった時代を経験して、普通の貴族とは違い世の中の裏をそれなりに理解している様であった。


「それと この商品に関しては此処に居ますブライトより説明させて頂きます。彼はこの商品の開発にも関わっておりますので、もしご質問等がおありなら適任者かと思いますので、、、」

「ほう 彼がこの品の開発に関わっておったのか? 良しなに頼むぞ」

「はい それでは自分から、、、」


タローは一通りの使用方法を子爵へと話し出す。大まかな説明は子爵も聞いてはいたが、タローの話す内容をしっかりと理解しようとする姿勢にタローは感心して接して入た。

ライターはそれ程使い勝手は難しいものではなく、恐らくは他の上級貴族が自慢げに皆の前で使用しているのを何度となく見ていたものと察せられたからだ。


「・・・以上で御座います、何かご不明点等はありますでしょうか?そうそう これを持参してきてまいりました。今回の御挨拶代わりにお納め頂きましたら幸いです、、、」


そう言って彼は魔法袋に入れて用意してあったライター用のオイルが入った容器とライターの発火石を何個かテーブルの上に置いて行く。


「・・おう これは済まぬな、、このライターに必要な備品と聞いているが、結構入手が困難と聞いておる、、すまぬな」

「・・今工房でもこのオイルの生産にかかりきりで御座います、もう暫くすると皆様にご迷惑をおかけすることなく流通するものと、、、」

「うむうむ 助かるぞ、、肝心のオイルを切らすと無用の長物になってしまうからな ははは、、」


そう言って彼は上機嫌に実物を手に何度かライターにて点火作業を繰り返して微笑んでいた。


「・・良い出来だな、後は馴染みの業者にライターの装飾を頼むとするか、、ブライトと申したな、良い品を持参してくれて礼を言う。何か褒美を取らせよう、そう言ってもこの貧乏貴族では大した褒美も出せぬのだがな、、先ずは遠慮なく何か所望の品を申して見よ、、」

「有難いお言葉を、、さすれば一つお聞きしたい事があります、、」


 ふむ? 子爵は品ではなく 尋ねたい事があるとの返答に少し訝し気に相手を見つめる。


「・・・実はレイモンド子爵様は先にお亡くなりになった勇者ケンタロウ氏とは昵懇の間柄と聞き及んでいます、、、」

「・・確かに 我が父が勇者グループの一員として魔王との最終決戦に参加したのでな、、」

「ならば少しお聞きしたい事があります、、その勇者メンバーにエルフ族の女性でキャロルと言う人物をご承知でしょうか?」

「おう キャロル嬢か、無論知っておる と言っても実際に会ったのは私の幼い頃であったが、後に勇者から昔話で何度も名が出て来た人物であった。魔法だけではなく剣や弓も達者と聞いておる、、」


それがこの場で何の関係があるのかと 彼はタローを見つめる。


「・・はい 実は縁がありまして、私の冒険者時代にある事から彼女に私は弟子入りをしまして、、」

「・・・なんと キャロル嬢がお前の師匠とな?」


流石に展開が飛び過ぎて彼は混乱している様だ。当然隣で聞いていた商人のトーマスも唖然として聞き入っていた。


「キャロル嬢は武人でありお前の指導にあたったのか、、なれど今はお前は魔道具士として生計を立てているとは、、、」

「・・その辺は後日都合が合いましたら詳細にご説明させて頂きますが、、本題は 私の師匠であるキャロルと勇者ケンタロウ氏との間で何か密約束事があったと小耳に挟んでおりますが、、」

「・・亡き勇者とキャロル嬢の間で、、、はて? いや あの件か?、、、、、」


何やら思い出そうとして彼は少し考え込んだが、何やら思いついたように顔を上げる。


「・・良くは詳細を知らぬが、そもそも彼女がこの国の首都に住まなかった理由は、勇者の所望する品を探しに世界を旅する事になったと、、、其の件で勇者は後につまらぬ事を彼女につい頼み、彼女を縛り付けてしまったと苦痛の顔で申していたのを記憶にあるな、、、」

「・・・おそらくはその件ではないかと自分も考えます、、」

「・・それが何であるのかをお前は知っておるのか?」

「・・・はい 実はその品であろうと推測される物を自分は持参しております、、、」

「なんと! それは何の品なのだ?」


思わず体を彼に近寄せる子爵に、、、


「・・誠に申し訳ありませんが、勇者ご本人様に直にお届けする物でして、、、、」

「・・・・・相分かった、無理は言わぬ。しかしその本人は現在、、」

「はい、、そこでご相談ですが、、、勇者様の奥様がまだご存命と聞き及んでおります。奥方様にその品をお届けしたいのですが、お力をお借り出来ませんでしょうか?」


師匠のキャロルは勇者の死を聞いて最早その品を届ける意味も無くなってしまい、彼にその品を遺族に届けるように預けてまたあの森に引きこもってしまったのだ。


「・・成る程 そこにこの話はつながっていくのか、、、当然今のお前では門前払いで会う手段がない筈だな。良かろう、、儂からの手紙を持参すれば奥方様に面談も可能になると思う。其れで良いか?」

「誠にお手を煩わして申し訳ないのですが、、是非とも一筆をお預かりしたく、、、」

「構わん、奥方様にしたためようぞ、、それと今の話は此処に居る者は他言無用だぞ?」


そう言ってトーマスと子爵の護衛に目配せを行う。当然二人は他言はせぬと何度も頷く。

使者として勇者の奥方に品物持参する事がもし漏れたら、その品を狙う良からぬ者たちが出る可能性がある。万一品を奪われれば奥方様が嘆く事にもなるからだ。そう判断して子爵は他の者達に口外無用を誓わせたのであった。


「・・ならば暫く待機せよ、手紙を書くのでな、、、」


そう言って子爵は部屋から一旦退出するのであった。




「・・・何とブライトさんはあの女傑の弟子でもあったのですか、、、」


トーマス氏と二人だけの部屋となり、彼は深いため息を吐きながら小声で彼に囁く。


「・・はい 黙っていて申し訳なかったのですが、其の件も内緒でお願いします、、」

「勿論です 絶対に他人に話しませんから、、」


彼は改めて誓いながら、タローとの不思議な縁も感じていたのだ。


「そうだブライトさん、ここでの商談が終われば私は首都の近くの町まで戻りますので、そこまで馬車でお送りしますよ、、」


タローはその有難い話に乗る事にした、トーマスも護衛としてタローとの同行を望む事であり、何より道中の話し相手がいることは有難い事でもあるのだ。


暫くして子爵は再び部屋へと戻り、彼に手紙を手渡し二人は商談を終えて邸から退出する。明日から首都方面へと二人の旅は続く。


遅筆申し訳ありません。

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