5-6 ワイバーン退治へ 2
総員70数名を見送る為に道の両端には関係者の家族や知人・街の住人達が手を振って討伐の無事と成功を祈り皆が手を振って送り出してくれていた。
人波に隠れるようにシェリーの姿があった、共にその顔を確認すると彼女とタローはしっかり頷き合い笑顔で別れを告げて行くのであった。
ああ タローさんが行ってしまった、、必ず無事に帰って来て下さい そしたらキス以上の事で貴方を戦いの疲れから癒してあげますから、だから無事に帰って来て、、
何やら決心したような顔で彼女は去っていく遠征隊の行進を暫く見つめているのであった。
町の郊外に出でからは隊列を組みなおしていく。先頭に斥候のグループが10名、その内半数が少し先に進み何か異常が無いか確認しながらの行動になり残り半数が待機しながら、時折先の先行組と交代していく手配になる。
本隊の先頭はこの町でトップクラスの冒険者であるBランクのドレイク氏を中心にする10名、その後ろにタローがいるグループへと続いて行く。そして最終尾に補給隊が続いてくる。
「・・スタンレーさん あの山を越した先にワイバーンの巣が?」
彼のグループには見知った顔が何人かいた、何れも二人か一人の単独で動いている者達であり、行軍の最中に自己紹介を皆と交わしていく。その中でもスタンレーとはふとした事で森の中で共同で魔物を退治した事もあり、酒場で酒を飲みあった仲でもあった。彼はもう一人の相棒のクックとは兄弟で今回の遠征に参加していたのだ。
「ああ そうだ、昔何回かあの山を越えてワイバーン退治に出かけた事があってな、、」
中年の彼は懐かしそうに語り始める、まだ前回の襲撃事件が起きる前の話らしく、2パーティで1体のはぐれワイバーンを退治した事があったと語ってくれた。ワイバーンを倒すのは本体ではなく翼を先に狙い地上戦に持ち込めばいいと語っていたのも彼であった。
「・・クックはまだワイバーンとの実戦はないのだろう?」
「ああ 兄貴からの情報しか知らねえ、あの時はまだ冒険者になりたてだったからな、、」
他のメンバー達も半数以上が未体験の様だ、ほぼ3日もかけて遠征してのリスクとの兼ね合いもあり、ワイバーン狙いは宝くじと同じで当たればもうかるが危険のリスクもかなりある。
それが堪らずに好きだと言う者と他の魔物を狙う方が確実だ の極端に分かれる魔物でもあった。
一人二人で魔物退治が出来るのはかなりの強者であり、それでも倒した後の持ち帰りを考えると二の足を踏む事になる。
「・・なぁ スタンレー、彼等の巣は今回少なく見積もっても30体はいると報告が上がってはいるらしいが、、本当にこの人数で大丈夫なのか?」
同じグループのタローと同じく主に一人での行動が多いランスがボソッと呟いた。
「うん? ランス心配はもっともだが、、奴等は夜目があまりきかないからな、そうは言っても此方も暗闇状態で攻めるのでリスクはあるな。特に足場が悪いのと、誰かの攻撃が誤って味方を、、そんな恐れも確かにあるな、、」
それと今回は全滅が目的ではなく、異常発生した分を何とか目減り出来れば、、と言う作戦でもある。無茶な殲滅命令が出るとは思えない。
「「「うーん 同士討ちの危険性がありか、、慎重に攻撃が必要か、、」」」
他の者達からも何かを感じたのか黙り込んで考え込む者もいた。
夜中に岩山を昇り巣に近付く、、考えればこれだけで難渋しそうな行為でもある。現場は良く知らないが落石や最悪落下の可能性もあるだろう、、そんな考えが浮かんでいるのであろう。
・・うーん 俺もそんなに夜目が利かないし、これは少し対応策が必要かな?
タローはその現場を想像しながらよい手段が無いか検討してみることにした。
そんな彼がふと思いついたのは町から出て二日目の夜の事だった。
・・そうか灯りは厳禁と思っていたが、鳥や獣は赤や青色系の光には反応が鈍かったよな、、
何かの本で覚えた記憶であったが、これは使えないかと試作品を作ってみる事にしてみた。
明日には目的地に到着予定だ、、今夜しかテストが出来ないな、、、
暫くして完成した品を持ち出して、皆が寝静まった夜中に動き出したタローであった。
目的地に着く間の魔物の数は通常に比べかなり少なくなっている様で、確かにこの先に異常時が発生していると全員が認識するしかなかった。
3日目の行軍が始まり、半日ほど進むと林が途切れて岩山地帯が始まる。ここで一旦皆の動きが止まる。
「・・これ以上は近づけない、奴らに見つかる可能性が大だ!」
林の中へ戻り隠れて夜を待つのだ、見張りを立てて皆が夜に備えて体力を保存する事になる。
「・・くそ 少し寒いのに火も焚けないからな、、」
「冷たい飯を食べられるだけ上出来だ、、」
じっとしていると流した汗が高地で冷めて来て体力を奪われることになる、汗が浸み込んだ服を着替えて
腹に食料を詰め込み始めた冒険者達だった。
・・なあ タロー、、何なんだそのけったいなテントは?
暇を持て余した冒険者が彼のテントを見ると集まってきた。
「これですか?、、ああ 迷彩柄と言ってこんな緑の多い中で敵に気づかれにくくする為ですよ」
正確にはツェルトタイプに分類されるが、近くの木にロープを渡して、其の上に乗せているだけの簡易テントであった。
「「・・前後に見晴らしの良いタイプなんだが、、迷彩柄 と言うのか?」」
通りすがりの冒険者達が必ずと言っていい程にその柄について説明を求める。一通り説明すると感心とも納得ともつかぬ顔で頭を振り振り去っていく。
昨夜は少し遅くまで森の中をうろついたから少し寝たかったが、、
新作のテストを兼ねて魔物を求めて森の中を彷徨っていたのだ。
・・テストは上々だったな、後で副ギルマスと相談して見るか、、
暫くして副ギルマスを探して、彼の休息地にお邪魔する。
「・・これで夜中の岩山昇りを安全に?」
当然彼も夜中の無岩山登りが危険に満ちているとは知っていた、しかしそれしかワイバーンの元へと近寄る手段はないからだ。
「・・ええ 昨夜魔物相手にテスト済です、かなり近寄るまで魔物は反応しませんでした、、」
「・・この赤いライトが有効と言うのか?」
「はい 先頭に上る何人かに装備させて、後の者はその移動した後から続けばいいと思います」
「・・お前はこんな魔道具を何処で手に入れたんだ?私も初めて見るぞ、、」
彼が用意したのはヘッドライトであり、これなら両手も使えるし赤いライトによりそれなりに前方の確認も取りながら登る事が可能だと 提案をした。
「・・ふむ 面白い、、夜間に岩登りは危険だと分かってはいたが、これなら落下事故も防げるか?」
岩山登り以外にも魔物達に対峙した時は強い通常の光を浴びせて目くらましにも利用できると説明する。
「・・よし 今から主だった者と先頭を行く者を集めて最後の作戦会議をする予定だった。タロー君お前もそこに参加しなさい、、」
あっ ああ そうだよな品だけ渡して済む問題じゃないよな、、
彼の説明を聞いて皆の反応や質問に答えねばならないからだ。
「「「はぁーー?!夜中でも安心して昇れる魔道具?!」」」
彼は最初からひとつひとつ丁寧に説明を繰り返す。
「「・・・昨夜にテストは完了したんだな?」」
各班のリーダーたちは慎重だ、初めての魔道具でもあり、最悪自分達の命もかかっているとなれば当然でもあった。
「・・提案がある、効果を疑うわけではないが今夜出発前に俺達もテストをしてみたい、、」
夜になり直ぐに昇り始めるのではない、なるべく深夜、、ワイバーンも熟睡している時を狙いたいのだ。
魔道具の話は一旦ここまでにして、巣にいるワイバーンとの遭遇時の対応法も更に検討されていく。相手も味方も暗闇の中での総力戦だ、仲間と逸れてチームワークの統一も困難な状態になると思われるからだ。
「・・総攻撃は全員での弓矢攻撃から始める、、そして1~3班がまず突撃の開始だ、4~6班が支援の弓攻撃を続け その後総力戦になる。これでいいか?」
副ギルマスが皆からの意見を纏めて最終確認に入っていく、接近戦の口火は魔法の得意な者が戦端を開き後は個々の力とグループの力で押し通す。つまり力技へと移行する事になる。
小難しい作戦は無だ、脳筋揃いの冒険者に細部を求めても逆効果にしかならない、各リーダー達は問題なしと力強く頷く。
「・・後はもう少ししたら、この魔道具のテストに出かけるので何人分用意できる?」
今あるのは3個作製したが、結果によればもう少し作る必要がありそうだ。最低各班に1個手渡せればいいのかもしれない、、
当初は昇る為にしか考えてはいなかったが、戦闘中に魔物の目くらましに利用できるなら急いで増量すべきだと判断したタローであった。
「タロー君は魔道具の製造も可能なのかな?」
突然背後から副ギルマスの声がして、彼がじっとタローの顔を凝視していた。
うん?!少し目立ち過ぎたかな、、でも皆の命がかかっているからな、、、
「・・いや 余計な詮索だったかな、、皆が少しでも生還の可能性があれば縋るしかないな、、是非とも皆の為に協力をお願いしたい、、」
彼が深々と頭を下げて協力依頼をしてきたのだ、ギルマスから何やらタローの件で吹きこまれていたようで余計な詮索は敢えてしないという方針の様だと感じていた。
「・・頭を上げて下さい、皆さんの為に出来る事は全てするつもりですので、、」
そろそろ夕闇が近づいて来た、渡してあったヘツドライトのテスト開始時間が迫ってきた。




