4-5 波乱の一日?
彼等の前に人数分のポーションを差し出す。冒険者にとってポーション関係は常に必要な部材だ、多くても邪魔になる品ではない。
その後は薬草関係の情報を聞き出し、懸命にメモ書きしていくタローであった。
翌朝冒険者達と別れて、昨夜の情報に一番近い場所へと移動する、念の為に場所確認と薬草の数も確認したいからだ。
ここか、、情報通りだな。これはランバー草の群生とシチリア草か、、少し採取していこう。
虚空庫へ在庫として押し込むと彼も今回はここまでと帰路へ急ぐ事にした。
ええと 方角はあっているな、、、
手持ちの磁石で方角を確かめながら急ぐ彼であった、森の中は油断すると直ぐに方角が分からずに同じような場所をぐるぐると廻って遭難と言うケースがある。
そんなときの用心に彼は虚空庫のスキルで磁石を何個か作っておいたのだ。
「只今 帰りました!」
数日後の夕方に彼は帰りついて一息入れる。
「お帰りなさい 遅かったわね、、何かあったのじゃなくて良かった、、」
彼女もそろそろ帰り支度を始める時に彼が帰りついたのであった。
「済みません、、初めての場所ですので、調べながらの移動が意外と時間がかかり、、、」
「いいんです 怒っている訳じゃないのです、少し心配してたので。薬草採取はどうでしたか?」
「はい お陰様で順調に集まりました。途中 冒険者の方と出会い、薬草の群生場所とか教えて頂きまして助かりました」
「ああ 冒険者達は新人の頃は大抵薬草取りの経験がありますからね」
「はい でも町外れにあるダンジョンの影響か森の近場でもそこそこ薬草は採取出来ますね」
「ええ でもその影響で私達の依頼がなかなか時間がかかってしまい、、」
これが町外れのダンジョンが中級タイプなら確実に新人達の仕事は薬草採取がルーチン作業になる筈なのだが、、、
「成る程 確かにそうですね、タローさんのお蔭で薬草採取はタイムラグが無くなって本当に助かっています。それどころか珍しい薬草も入手できるので私達も作り甲斐があります」
そう言うと綺麗な笑顔を見せてくれるシェリーさんだ。
「そうだ 冒険者の方達が言っていましたが、シェリーさんの人気が高いのですね?中にはシェリーさん目当ての冒険者も多くいるとか?」
「そんな人気など、、でも皆さんが来店していただいて有難いのは事実です」
「いえ 腕も確かだと見なさんが褒めていましたよ、そう言えばお姉さんも同業ですし、何かこの職に繋がりの家系なんですか?」
「ええ、、元々は母がこの仕事を隣の都市で行なっていたのですが、私達三姉妹の内長女の姉と三女の私が興味があり幼い頃から良く母を手伝っていましたから、、その流れかな?」
ほう 三姉妹とな、、二女の方は主婦業で家庭に入っているらしい。それとお姉さんとの年の差があると思えば そう言う理由か、、、
「でも 少しお姉さんと離れた町での開業は寂しくないですか?」
「此処の地は母の元々の出身地なんです、昔からの人は母の事を良く知っていまして、此方に来ても皆さんから良くしてもらっていますから、あまり寂しさは感じていないですね」
その後も二人は暫し楽しげに語りあい、やがて彼女は母方の実家へ帰っていった。
さて 今日は少しのんびりさせてもらおう。
お店の開店準備だけ少し手伝って朝から彼はこの町へふらりと出かけてみることにした。
波乱の一日が始まるとは思わず、彼は能天気に外へと出て行く。
あっと もう一軒の薬店に少し顔を見せてみるか、、
シェリーさんももう一軒の店にも顔を出して欲しいと言っていたな、、商売仇?なのに優しい娘だ。
こんな田舎町では互いに助け合っているのだろう とそんな事を考えながら店を覗いてみる。
うん? あの方が店主かな、、 初老の女性が何やら準備に追われている様だ。
本来はとっくに店を開けている時間帯と思われるが、その店主は失礼だがテキパキとは動いてはおらずに多少大儀そうに動いていたのが気にかかる。
「・・おはようございます」
もう少しして入るべきか一瞬考えたが、此処まで来てまた訪問するのも面倒だし彼は入り口のドアを押し開けた。
「あっ いらっしゃいませ、、ゴメンね準備に時間がかかって 何が欲しいの?」
その初老の夫人は人懐っこい顔で彼を迎えてくれる。
「・・実はご挨拶で参りました、私はシェリーさんの店で薬草採取を頼まれているものでタローと申します、、、、、、」
此処に来た目的を彼は話し始めた。
「はいはい 聞いているわよ。かなりのやり手だと噂も伝わっているわよ、、」
流石に田舎の町の情報網は早い、知らぬはタローだけだった様だ。
「・・シェリーさんからもこの店にも薬草を下ろしてあげて欲しいと依頼がありましたので、何か入庫が困難な品がありましたらお手伝いいたしますが?」
「あらそうなの、シェリーは優しい子だね、、なら少し甘えてみようかしら?もう私は年だから手のかかる調剤はきつくなっているの。これからはあの子が私の代わりに頑張ってくれるでしょうから。私の必要な品は一般的な薬草で、、、、、」
その薬草なら虚空庫の中にたっぷりと在庫はある。まずは手始めに各10本づつをカウンターに積み上げる。
「・・あらあら 凄いわね、、、、いいわね品もしっかりとして新鮮だわ。時たま若い冒険者達が集めてくれるけど、こう言っては何ですが採取が荒っぽいのが欠点ね。貴男は若いのにしっかりとした採取をしてしてくれているわ。助かります、、、ではこれが代金 今後も何か必要があれば連絡しますので宜しくね」
丁度馴染みの客が訪問して来た、商いの邪魔をしたら申し訳ない、後日また訪問しよう。
さて あっ 忘れてた、、辺境の町のギルマスから次に落ち着く先で冒険者ギルド長へ手紙を届けろと言われていたよな、、もう都市は二ヶ所目だけどいいか、、、、
「こんにちは、、、私Cランク冒険者のタローと申します、、此方のギルマスに手紙をお届けに来ました
、面会は可能ですか?」
「私どものギルマスにですか?はい、、大丈夫だと思います いつもゴロゴロ、、いえ 少しお待ちください」
おいおい 見かけは可愛いが性格に少し難かな?
「お待たせしました どうぞ二階に上がって頂ければギルマスがお待ちしています、、」
あまり大きくない建物なので二階に上がって部屋を探せばすぐに見つかる。
「・・失礼しまーす」
「はいはい、、どうぞ入ってそのソファーに座って下さい、、」
中より軽い感じの声が響き、彼は恐々と部屋の中に入っていく。ここのギルマスはスラリとした40前後の優男?風の方であった。辺境の町のギルマスはかなりワイルドな感じであったが、、、
「ほう あの町のギルマスはトーマス氏ですな?少し接点がありました。お元気なのですか?」
元気と言えばあれ以上元気な方はそうそういないのでは?
「ははは 確かに、してお手紙とは?拝見致します」
ネイストと自己紹介された此方のギルマスは手紙を受け取ると、興味深く読み始める。
「ほうほう あの古代の森で勇者グループの一人であったキャロルさんの下で修業とは?それは恐れ入りました、大変なご苦労をされたのでは? うん?最後のこの一文章は、、、なんと!」
途端に少し穏やかな顔が急に引き締まり書かれた文の意味を真剣に読み解こうとしている。
「・・・成る程、これは他のギルマスに連絡が必要とされた理由ですか、、」
暫くは空を見上げそしてタローをマジマジと見入りながら、、、
「承知しました、、貴男がこの町にいる限り私が全力でバックアップいたしますので、何かあれば直ぐに私へと相談して下さい。・・それとこの手紙は貴方にお返しいたします。場合によっては他の都市で暮らす可能性があるとの事、移動された場所のギルマスにこの手紙を都度お見せください・・」
何が書かれていたのだ?かなり真剣な表情だが、、全力でギルマスがバックアップ?! 意味が解らずに狼狽えるタローであった。
「・・済みません 多分な対応に驚いています、何かこの手紙に書かれていたのでしょうか?」
「うーん どう言えばいいのか、、はっきり言ってあなたの出自関係と言えばお分かりですか?」
私の出自?! 何故にあの町のギルマスが? あっ いつだったか、夕方師匠は少しギルマスに話があると出かけられた時があった、、そんなにかからずに帰って来たのであまり気にしていなかったが、、もしやあの時に師匠とギルマスが私の件で話し合っていたのか?
自分の出自関係となると 答えは一つしかない。師匠は早い段階で私が異世界人ではないかと考えていた節があった。当初は自分も白を切っていたが、、、、。
「・・そうですか、そんな事が書かれてあったのですか、、ご配慮有難うございます。なれどこの件については、、」
「それ以上は話さなくて結構ですよ、あなたの立場もあるでしょうから。秘密は守ります、しかし上層部に知れると大騒ぎになりますので 貴方もこれからもご注意の程を、、、」
ふう、、時限爆弾並みの手紙の内容であった訳だ、、、
流れる汗を拭きながら彼はギルマス室から出て行く。
・・参ったな この時代に異世界人の勇者がまた現れたとは、、、
一人頭を抱えるギルマスがいた。




