4-3 店主からの紹介状
「・・手作り品だと、、あんた薬師だったのか?」
いやいや 師匠指導による合間の製作品の在庫なんです。
再びその説明に呆然と聞き入るスタンレーであった。
「飲んでくれ 飲んでくれ! 命の恩人だ!!おい みんなも飲んでくれ!」
辞退するタローを無理やりギルド内の酒場に連れ込んでの宴会が始まった。
大物のブラックパンサーと他の魔物を苦労しながらギルドに運び込み、換金した結果はかなりの金額が手に入るとそれを彼は気前よく近くにいる冒険者達にもお裾分け?を始めた。忽ちギルド内は大騒ぎの宴会となっていく。
「・・そうなのか まだこの都市に到着して日が浅いのか、、いや 凄い男が来たものだな。是非ともこのまま長くこの都市に留まって欲しいぜ、なぁ クランク!」
彼の親しい仲間なのかクランクと呼ばれた同じく中年の冒険者もしきりに縦に首を振って。タローの事を詳しく聞きたがった。
「「「何だって あの古代の森で修行をしたのか?!」」」
彼等もその場所と何が起こるかの情報は聞き及んでいた、悪名高い場所として、、、、、
「「あの 森の奥にお前の師匠が住んでいる?!何者なんだ その人物は、、、」」
流石にその名と詳しい場所は教えられない、当分師匠は世捨て人同然の生活を送るだろうから、周りを騒がせてはならないからだ、、、。
「うーん 凄い御仁がいるものなのだな、、、」
半分絶句しながら彼等は困惑している様だ。
「凄い師匠に教わったのだな、、そうだアレは魔法銃なのか?」
あっと ドタバタで口止めを忘れてしまったな、、、。
彼にだけわかるように口に指を当ててお願いポーズをする。
おっと 何かあるのかと彼も気付いたようだ、話題を違う事に直ぐに変更して会話は続いて行く。
「成る程、、冒険者も引退ではないが別の職も併せて今後は行っていきたいのだな、、」
彼は反面感心していた、自分はこの年まで冒険者として生きていたが少しづつ体のキレが弱まってきたこの頃であった、今更他の職など考えられなく体が動かなくなるまで細々と今の家業を続けて行くしかなかった。
それをこの若者は、まだ20にもなっていない者が色々な手に職を考えて毎日を送っている。自分の若い頃は先の見えない事には見えぬふりをして過ごしてきた。そして その結果が今に至る、未来の見えない焦りとの戦いが始まっていたのだ。
「・・凄いな、、何も考えず毎日楽しく過ごせればいいと俺は考えてきたのに、タローは既に先を見据えてその若さで暮らしているんだな、、」
「いえいえ、、己の実力を正確に振り返ってみての行動ですから、、、」
・・それが出来ないのがその他大勢の俺みたいな奴なんだろうな、、、
今更元には帰れない、何とかあがいて今後も暮らすしかないと彼は無理やり自分を納得させていく。
「・・そうだ 薬剤関係に興味があれば一人紹介できるぞ、どうする?」
「本当ですか?それは嬉しい情報です、是非にとも、、、」
実際は彼はスキルにより材料があればある程度の物は作成できる、しかし薬剤関連の基礎からしっかり教えてもらえれば今後にも役立つはずだ。
何の事は無い、、紹介された先はこの前飛び込み訪問で知り合った、あの裏筋のお店であった。
「あん?冒険者のスタンレーからの紹介?あんた薬剤作りにも興味があったのかい?」
「はい 正かネネさんのお店とは、、、」
彼女は注文した薬草類を確認しながら驚いた顔で彼を見つめる。
「そうね、、薬草採取だけでなく製剤にも、、少し話を聞かせておくれ」
店の奥に入るように指示されて簡易な応接室にて色々な話をする事となった。
「・・前の師匠に興味本位で教わっていたのかい?その作った物は持っているのかな、あれば見せてごらん」
各種ポーション関係は魔法袋の中に収めてある、何種類かのポーションを取り出して見てもらう。
暫く興味深く彼女は眺めながら深いため息を吐いた。
「・・これ趣味の範疇じゃないよ、、かなりの効能じゃないか。そして、、、もしかしてあんたの元師匠はエルフじゃないのかい?」
え?!そんな事も分かるのですか、、、、
「ああ、やはりか、、ほぼ同じ薬草で作るのだけど、何故か製法に違いがあるのか効能的にはエルフ産が一枚上なんだよね、、、」
これは驚いたね、、しきりにため息をつくネネさんであった。
実際は今ある物は自分の虚空庫にてスキルで作成した品であったのだ。
「・・あんた本格的に調剤を習ってみるかい?」
基礎関係を少し覚えておきたいとは思ったが、本格的となると数年は覚悟しなければならない世界でもある。この地には後数ヶ月滞在して他の都市へと移動する予定であった。
「あと数ヶ月で出て行くのかい?、、、次の行先は決定してるの?」
彼女としては優秀な薬草採取家が見つかったと喜んでいた最中でもあった。
「私としてはこのまま居ついて欲しいのだけれどもね、、何か事情があるなら仕方ないね」
済みません 大した事情ではなく、この異世界を少しでも体験しておきたくて、、、。
「次の行先は決定してないんだね?ならば心当たりがあるのでその時には相談に乗るよ」
店主より有難い言葉をもらい、残り数ヶ月をこの地で頑張る毎日となった。
やがてこの都市から出て行く日が来る、つかの間ではあったがこの都市にて何人かの知り合いにも恵まれる日々であった。
明日にはこの土地から出て行くと最後の挨拶の為に見せに訪問したタローであった。
「・・そうかい 出て行くのかい、短い間だったけど助かったよ。礼を言うね、、そして次の場所は決めたのかい?」
「いえ 気が向いた場所で住んでみようかと、、、」
「ふーん ある意味羨ましい生き方だね。まぁあんただったらどこでも生きられそうだけどね。所でこれは必要かな?」
彼女が机の下から出したのはどこぞの店の紹介状であった。
「まだ決まってなければここの店を紹介するよ、場所はここから西に約100キロほど行ったルーラックと言う町なんだけど静かな環境であんたの好きな薬草採取にも適した場所だよ。行ってみるかい?」
少し考え込むタローであった、次は違う可能性の職を選択してみようかとも考えていた。しかし考えれば慣れ始めた今の職をもう少し続けてもいいかと思う気持ちもあった。紹介状があればすんなりその店にも溶け込めるかもしれない。
「・・有難うございます、頂いておきます」
「そうかい 店主も場所もきっと気に居ると思うよ、頑張ってね?」
紹介状を受け取り彼は馬車の予約をしに歩き出した。
「ふふふ 頑張れ妹よ なかなかの掘り出し者が今から尋ねて行くよ、、、」
可笑しな含み笑いを始めた店主のネネであった。
「・・うーん 段々のどかな雰囲気になってきたな、、しかしお金が減るのではなくかなり増えてはきたな。有難い事だ、、、、」
馬車に揺れる事3日目に目的とした町へと到着した。
「うーん 座りっぱなしは腰に響くな、、もう直ぐ夕方か 店屋を尋ねるのは明日にしよう」
目の前にある宿屋へと彼は向かい始める。
翌朝は暫くのんびりとしてから、町の探索を兼ねてゆっくりと歩き出す。
「思ったより小さな町だが意外と住みやすそうな感じはするな、、おっとここにも規模は小さいが冒険者ギルドがあるんだな、、それなりに魔物がいるのかな?」
この地区は強い魔物は現れない、代わりに初級用のダンジョンが外れにあるそうだ。其の為か冒険者の姿がちらほら目に付く程度ではあるが、、、
「・・ダンジョンか、、まだ入った事は無いな。今度暇があったら一度は行ってみようかな?えーと 確かこの町では2軒しか薬剤関係の店が無くその内の一軒が紹介状の、、、おっ この店かな?」
「・・こんにちは、、おっと先客だな、、」
冒険者と思われる者達が何やら買い込んで支払いをしている最中であった、そんな様子を見ながらふと店主に視線を向けると、、、
あれ?若い方だよな店主じゃなくて従業員なのかな?
なかなかの美人さんでテキパキと仕事を熟しているように思える。この店員さんを目当てに若い冒険者達が集まりそうだな、、、
そんな事をぼーっと考えていると彼の番となる。
「次の方、、こんにちは どの様なご用件で?」
笑うと更に花が咲いたように艶やかに見える。
「あっ 初めまして、トソン都市から来たタローと申します、店主のネネさんから紹介状をお持ちしてきたのですが、、、」
そこまで言うと何かを察したように更に綺麗な笑顔が彼に向けられた。
「はいはい 何やらネネ姉さんから有望な人がいるから紹介したいとチラリと連絡が、、その紹介状を預かりますね」
・・何と言った お姉さんから連絡だと、、、するとこの人が店主でネネさんの妹・・かな?
ふんふん かなりの薬草採取の腕と調剤にも知識が、、、、、えっ もう姐さんたら、、、、。
何だ何だ、、色々と書かれているような、少し彼女の顔が赤くなったのが気になるが、、、、
「・・はい 了解です。本当に姐さんたら、、あっと御免なさい、それでは今日からでもお願いします。少し薬草関係が不足しているんです」
・・採用と言う事でいいんですか?
「はい 姉さんの人を見る目は確かですから、それと宿泊先はこの店の二階を利用して下さいね」
・・宿泊付きですか?! それとお姉さんの人を見る目はそれ程でも、、、
当初のタローに対する対応を思い出したのだ。
「はい ここの二階を利用してもらえれば、、あっ 私は実家がありますからご遠慮なく、、」
成る程、、少しドキドキしたけどそう言うオチですね、ならば宜しくです。多少薬草代が低めでもゴロゴロできる部屋があるのは助かります。
タローは今後最低半年ほどはこの店で頑張ろうと考え始めていた。




