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切り札はそばにいて。続くことは終わることに似てる

向こうから、こちらへ。

こちらから、向こうへと。


ただそれだけの事であるはずなのに、橋は別の場所から別の場所へと渡るだけの存在には昔からとどまってなどいなかった。


橋は昔から、何かを秘めていたのだろう


それを、昔や現在も一部の人は知っていたし、唐突に知ることになるだろう。


橋渡しなんて言葉は、繋ぎだけ往来するだけならば、道を冠する言葉であったっていいはずなのに、わざわざ橋を使っていたりする。


吊り橋効果なんてものにいたっては、わざわざ吊り橋を使って実験をしているのだから。


橋が内包、あるいは暗喩するものは別の世界への憧れ、あるいは恐怖という事だろう。


橋を渡った先にいる高貴な恋人。

橋を渡らなければ手に入らないもの。


ただ踏切るには怖くて、それで理由を着けた。


渡る前に邪魔をし金品を要求する賊。

渡った途中に転ぶと寿命が縮む橋。

渡っている時に、振り返ると厄にみまわれる。

恋人の事を思うと橋にいる女の幽霊に祟られる。



渡らない理由をつけるためか、本当にあったのかは分からないし、確かめようもない。


ただ踏切がつかない気持ちは、よくわかる。


「意外に怖い!」

「やかましい!井上早く渡れよ」


 

後ろから押しそうなやつがいるとさらに怖いというのは黙っておこう、キュアトロールに知られたらそれこそやりかねない。


「なんだあいつら」


どうしたものかと思っていると、キュアトロールの苛立つ視線を追うよう、に吊り橋の向こうを見てみると、小中大と並んでいる女性達が見える。


「アイドル志願の魔王三姉妹じゃない?」


黒光りするようなマントに、大きな女性にいたってはこちらからでもわかるほどの立派な角があるし、城がある方向からきているし、

トリプル役満とまでは行かなくても、ほぼほぼ確定だろう。


「なんかこっちに向かってきているな」


小さい女の子がトントンと吊り橋を軽やかに渡るのを見ているとなんか自分が恥ずかしい。


キュアトロールと僕の横をあっという間にすり抜けて、渡り終えた女の子はニコニコと此方と向こうに手を振っている。


その手振りに応えるように続いて、中ぐらいの普通の女の子がギイーギイーとそれなりに吊り橋を揺らしながら此方へと向かってくる。



「姉が待っていますからどうぞキュアトロールさんお渡り下さい、そちらのかたも」


渡り終えた中ぐらいの女性に促され、吊り橋を渡ろうと数歩進んでふと思う。


じゃあ向こうで待っていれば良かったんじゃないかと。

小さい女の子が渡らなくても、良かったんじやないかと思う。


何よりドシンドシン、ドーンと揺らし、吊り橋がガラガラと崩れるんじゃないかと思えるほどの勢いでここに向かってくる大きな女性。


そしてあり得ないほど大きな角を向けながら走り、デカイ山羊の怪物を彷彿とさせる。


まるで大きな女性の鼻息までもが、再び死ねだの殺すだのと幻聴じみたものが聞こえてくる。


「走るな、暴れるな、吊り橋が落ちる」

「喚くな井上、大丈夫だ山羊くらい魔法少女キュアトロールが、ぶちのめす」


キュアトロールが頼もしい。


キュアトロールの背中にうっかりトキメキを覚えそうになる。


再び死ねという文言+キュアトロール+

大きな山羊+吊り橋=がらがらどん


確定的にお前のせいじゃねぇか!



反面もしなぞらえて魔王三姉妹が準備していたならキュアトロールは負ける事が確定的じゃないか。


そんな心配を現実にするかのように、あと数歩大きな山羊が鋭く重く踏み込めば、キュアトロールの目を貫くだろう。


「フェイバリットシステム発動」 


発動しても誰かが召喚されたわけではなかった。


だけど、ピロロと小さくても澄んだ笛の音色が徐々に激しくて凶暴的になってもどこか澄んだ音がキュアトロールをとりかこんでいた


キュアトロール頑張れ、負けるなとまるでキュアトロールを応援する誰かの声も混じり始めた。


「なるほど、こんな魔法少女が勝つシチュエーションをお膳立てされたら勝つしかないよなぁ井上」


キュアトロールは笑い大きな山羊を、揺れる吊り橋を軽やかに飛び越えついでに角を腕力でただへし折る。


「悪いなぁ魔王、今世はお互いそういう役割だったみたいだな」


キュアトロールは最後にやたらキラキラしたエフェクトを纏った拳を大きな女性の顔面に叩き込んだ。



「まぁその傷じゃあアイドルは無理だし、魔王三姉妹はスカウトはなしってことで」

「そうだな、それじゃあ帰るか井上」


魔王三姉妹も見えなく、山羊たちの鳴き声も聞こえない普通の町並みを目指し帰路につく。


「いやーキュアトロールが積年の恨みとか谷底に投げ入れると思ったわ」

「まぁ一応魔法少女になるキッカケの恩人みたいなものだからな」

「は?」

「いや、端的に言うと真っ直ぐ強者や運命切り開いてて、羨ましいと思って気づいたら魔法少女になっていた」

「浅っ」


魔法少女ってそんな簡単になれるのか。

いや、僕がいう事でもないか。


「いいんだよ、キラキラして皆に夢と希望とか愛とか振り撒いてりゃ」

「お前が基本的に振り撒いてるのは、暴力と迷惑だ」

「まぁまぁ お前がなんだかんだ言って私を信頼してるんだろ、フェイバリットシステムで私好みのシチュエーションとか中々わかってきたじゃないか」


フェイバリットシステムで発動したのはきっと魔法少女が勝つシチュエーションじゃなくて、弁慶と牛若丸が出会うシチュエーションじゃない?


まぁそんなことより口に出たのは悪態のようなものだった。


「お前が切り札とかどうなんだろ、もっと可愛い娘がいい」

「じゃあアイドル探すついでに、探せば中々いないだろうな、井上は変態だから」


かえってきたのも、いつもとかわらない悪態だった。


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