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茜色に染まってしまえっ  作者: 朱色
3/3

温かいぬくもりにありがとう。


「すげぇ・・・」

美松茜みまつあかねが魔キラという国のお城である魔キラ城の窓から眺めた先には

元々想像している魔王が支配しているとは思えないほどに明るく活気にあふれている

家々や街の市場とそれをしきる人たち。

「当たり前だ。地球の人間たちは魔族を悪人扱いしすぎているだけで

ここにいる者達はとても穏やかで力は我らに比べれば少ないが魔力だって持っている。

確実に地球の人間どもよりかは断然優れている。」

俺の横に踏み出してきたこの男は稲葉というらしい。

肩まである銀色の髪の毛を緑色のリボンで結っており、とても美しい切れ長な顔をしている。

「じゃあ俺も地球の人間だから優れてないってことだよね。

多分、嫌、絶対に俺なんかが魔王なわけがないもん。だから元の世界に帰してよ」

俺は横に出てきた稲葉に目もくれず外の賑わう景色を見た。

「俺が王様なわけがない・・・」

何者かにこの世界に連れてこられたときから履いている靴に目を落とした。

ズキズキするこの痛み。

靴のサイズが俺の足にあってない。この靴は成長した俺の足には少しだけ小さかった。

この痛みが何もわからないこの世界で俺が迷子にならないように俺のことを離さずにいてくれる。

俺は本日何回目かわからないため息をこぼした。

稲葉はずっとこちらを見ている。嫌でも強い視線が俺に刺さる。

「なんだよ・・・何か言いたそうだね」

視線から逃れるように窓際から離れ、ベットへと足を運んだ。

「お前は正真正銘の魔王だ。だから俺も安達も時雨も

生命を捧げた。俺達は過ちを犯してはいない。」

稲葉は金色の瞳を窓の外に向けた。

窓の外にはテラスで優雅にお茶を飲む時雨。

チラチラとこちらの部屋の窓を見ては何かを想像して

ニヤニヤしている。

その側では城に迷い込んだ子猫を抱き上げている

安達。子猫に向ける笑顔は今の青空によく似合う。

俺を高いところから突き落とした人間には見えない。

あ、人間じゃなくて魔族だったっけ。

俺はそんなことを一人でひとしきり考え

ベットに体を預けるように仰向けに寝転がった。

鳥のさえずり、木々を揺らす優しい風。

ここが魔族の国とは思えないから

自分が魔王だなんて余計に信じられない。

「お前もたいがい諦めて認めろ。」

稲葉の声でも風の声でもない何かが近くで聞こえた。

勢い良く起き上がるとそこには

初めてこの国に来た時に一度だけあったことのある

美しい男がいた。

「閻魔、、、」

稲葉も閻魔の存在に気が付き

俺のもとに素早く寄ってきた。

「なんの用だ」

「お前には関係ないだろう。

お前は外に出ていろ。私は茜と話がしたい。」

目で退出を急かした。

稲葉は閻魔の言葉に逆らうことができず渋々部屋から出て行った。


「驚かせてしまってすまない。改めて挨拶を

させていただこう。閻魔と申す。以後よろしく頼む。」

閻魔は銀色の瞳をこちらに向けた。

「実は私はお前のこの部屋の真上の部屋にいつもおるのだ。

そこに小さい扉が天井についておるであろう。」

指差す先を目で追い見てみるとそこにはその言葉通り

天井に扉がついていた。

「魔王と閻魔は仕事上、近くに居るほうが

便利だからな。」

優しく微笑み俺の頭を優しくなでた。

「俺、あの、、、魔王って、、、」

閻魔は静かにうなずいた。

「お前がなぜ魔王なのか。

その理由はいつか必ず分かる。ただ今は

この国のために、君の、美松茜のちからが必要なんだ。

向こうの君の世界にも行き来できる。頼む。私達のために

魔王をして欲しい。」

「そんなこと言われても、、、俺は何にもできないよ。

人間違えだよ。」

俺は困り果てた。

「君にはこの国を守ることができる。私達は

美松茜が必要なんだ。君の力は計り知れないものだ。」

閻魔はもう一度俺の頭を優しくなで、次には立ち上がり

部屋を立ち去っていった。

俺は何も理解ができなくてただひたすらにボーッとしていた。

何もわからない状態でもただひとつ感じられたのは

閻魔の手の温もり。忘れかけていた人の温もりだった。

心地よい温かさ。

俺はベットに横になりその温もりが逃げていかないように

ギュッと手のひらで握った。


だいぶ眠っていたみたいだった。

辺りは真っ暗になっていた。

広い部屋で少しだけ怖くなった。

静かで聴こえるのは自分の吐息だけ。

少しだけ怖いけど、静けさが心地良いとも思った。

再び眠りにつこうと重い瞼を閉じようとした時

外が騒がしいことに気が付いた。

俺は眠気眼を擦りながら立ち上がり扉まで歩み寄り

その扉を押し開けた。

扉の目の前にはぐったりと横たわる閻魔の姿があった。

背中には流れるように出血していた。

側には取り押さえられている男。手にはナイフ。

その手の中にあるナイフの先には閻魔の血液らしきものが

付着していた。

「陛下!危険ですからお部屋にお入りください!!」

俺の存在に気が付いた時雨が走り寄って来て

俺を部屋に押しこもうとしたが、俺はどうしても

倒れている閻魔から目が離せなかった。

「陛下?そんなのが次の魔王か!!!呆れた!

そんなんだからこの国は!、、、お前も殺してやる!!!」

取り押さえられていた男は周りの兵士を凄い力で振り払い

固まっている俺にナイフを向け走りだした。

「陛下!下がって!!!!」

時雨が大声で叫ぶが俺はやっぱり閻魔から目が離せなかった。

気が付けばナイフを持った男は目の前にいた。

俺、死ぬのか。

そう思い目を閉じた。

しかしいくらたっても刺された衝撃は来ない。

そのかわり何かが俺にもたれかかったような衝撃は感じた。

重たい、、、

目を開けた。俺にもたれかかっているのは先程まで

地面に倒れていた閻魔だった。

綺麗な顔が痛みに歪んでいた。

俺に触れた閻魔の手はやっぱり温かくて気持ちが良かった。

閻魔を刺した男は再び兵士に取り押さえられていた。

「閻魔、、、」

小声でつぶやくと閻魔は優しく微笑んだ。

「閻魔、、、」

再びつぶやいた。でも閻魔は優しく微笑んでくれなかった。

眠っているみたいだった。

「閻魔、、、閻魔!!」

俺は泣き叫んだ。

「閻魔が、、、閻魔閻魔閻魔閻魔!!!!!!」

「陛下!どうかお部屋へお戻りください!!」

時雨が俺の肩を抱き、部屋へ連れて行こうとした。

「へっ!そいつが死んでもどうせこの国は変わりはしないんだ!!俺達を苦しめるお前らへのやり返しだ!ばーか!」

男は大声で叫び終いには狂ったように笑い出した。

「変えてやるよ、、、変えてやるよ!!!!この俺が!

閻魔たちが築き上げてきたこのいい国を俺が魔王になって

もっといい国に変えてやるよ!!!!だけどお前は

許さねえ。絶対にゆるさねーーーーー!!!!!」

赤い炎が俺の身体から舞い上がり一瞬にして黒色だった髪の毛は炎のような赤に染まった。

ゆっくりと歩き男の目の前に行き胸ぐらを力いっぱいに

掴み、廊下の窓から投げ出した。

窓から外に出た俺は宙に浮いていた。

地面に叩きつけられた男は悲痛の叫びを上げた。

天に右の手のひらをかざし大きな炎玉を作り

立ち上がり逃げ出そうとする男を逃がすまいと

その男の周りにその炎玉を撒いた。

「ひぃ!!!!化け物!!!!」

男は必死に炎玉に砂をかけている。

「化け物だと?私は魔王だ。お前こそ化け物ではないか。

人を容赦なく刺し殺すその悪行。許しはしない。

お前の命を奪ってやりたいのは山々だが、お前を葬ってしまえば貴様とやっていることは同じになってしまう。だから殺さない。

ただ、容赦なく炎をお前にくれてやる。魔王ここにありけり。」

ふっと息を吐き出した。

口からは炎の龍が流れるように出てきて男を襲った。

急いで閻魔のもとへ戻った。

そこには見知らぬ金髪の王子様みたいなイケメンが

閻魔の傷口を見ていた。

「閻魔、、、」

眠るように横たわっている閻魔の手元に膝をつき

閻魔を見つめた。

「閻魔様は、まだ生きていらっしゃいますよ。」

金髪のイケメンはそう言って俺の手のひらに

閻魔の手のひらを乗せた。

「、、、温かい。生きてる。。。まだ生きてる!!!」

俺は涙をこぼした。

「急いで救護を!!」

金髪のイケメンは兵士にそう言った。

「茜、、、」

閻魔が口を開いた。

「閻魔!!!」

俺は彼の温かい手を握り彼の名を呼んだ。

「ダメじゃないか、、、こんな時間にこんな所にいては、、、もう寝なくてはならない時間だろう。私はいいからもう眠りなさい。」

閻魔は俺の頭を優しくなでた。

「閻魔がこんなんじゃ寝れないよ!!!俺、魔王になるからさ!!俺、閻魔の手のひら大好きなんだ!!だから、、、だから!!」

ポタポタと涙が溢れ出てくる。

「ありがとう、、、陛下。いい国にしてくださいよ。

よろしく頼みますよ。。。」

「なんで、そんな死ぬ前みたいなこと言うの、、、

なんで!!!!!嫌だよ、、、嫌だよ!!!!!!!!!」

俺の体と閻魔の身体が強く光った。

「なにこれ、、、」

「すごい!閻魔様が回復していっている!!!しかもすごい速さだ!!」

金髪のイケメンが言った。

閻魔の血色の悪い顔は瞬く間に元の色を取り戻し

血の気を帯びてきている。

「んん、、、」

閻魔は閉じかけていた瞼を開け

起き上がった。

「閻魔、、、閻魔!!」

俺は嬉しくて閻魔に抱きついた。

大泣きした。

閻魔に背中をさすられている途中で閻魔が俺に

ありがとうって言った声を聞いて気を失った。


☆つづく☆




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