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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season14 Le choix《ル・ショワ》 ― 選択 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season14 Le choix《ル・ショワ》 ― 選択 ―
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Prologue 静かな午後

[ショッピングモール・映画館/午後13時]



凪(なぎ)と環(たまき)は、お気に入りのアニメの劇場版を観るため、柊(しゅう)と3人でショッピングモールにある映画館へ出かけていた。


「やっぱり混んでましたね〜」


凪(なぎ)がロビーを見渡しながら言う。


「ですね。早く出て正解でしたね」


「すごい人だな……」


柊(しゅう)は少し驚いたように周囲を見回した。


「このアニメ、子どもから大人まで楽しめますからね。

 むしろ大人のほうが多いかもしれませんよ」


「確かに……あんまり子どもがいないな」


「楽しみですね〜」


環(たまき)がにこりと笑う。


「じゃあ、僕、飲み物とポップコーン買ってきます!

 柊(しゅう)先輩と環(たまき)さん、何飲みます?」


「う〜ん、コーラにしようかな〜」


「俺も同じで」


「了解です!買ってきま〜す」


「凪(なぎ)くん、こぼさないでくださいね」


「は〜い!」


凪(なぎ)が軽やかに売店へ向かう背中を見送りながら、柊(しゅう)はふと思い出したように環(たまき)を見た。


「そういえば、環(たまき)。

 この映画館だったか? 凪(なぎ)と会ったの」


「そうです!この映画館で、それもこのアニメでした。

 柊(しゅう)、よく覚えてますね」


「まぁな……」


「ここで凪(なぎ)くんに会わなかったら、柊(しゅう)に会えてなかったかもしれないですね……」


「そうだな……」


環(たまき)は少し考えるようにしてから、にっこり笑った。


「凪(なぎ)くんは、わたしたちのキューピットですかね」


「っ……環(たまき)、よくそんなことサラッと言えるな……」


柊(しゅう)は頬を赤らめながら視線を逸らす。


「柊(しゅう)、顔が赤いですよ〜」


「からかうな」


言いながら、柊(しゅう)は環(たまき)を引き寄せるような仕草をした。


そのタイミングで、ポップコーンとドリンクを抱えた凪(なぎ)が戻ってくる。


「柊(しゅう)先輩、何やってるんですか〜。

 こんなところでイチャイチャしないでくださいよ〜」


「いいだろ。夫婦なんだから」


「うわ〜、それ言われると何も言えませんね〜」


環(たまき)はトレーをのぞき込みながら言った。


「凪(なぎ)くん、これって……」


「あ〜、これは柊(しゅう)先輩と環(たまき)さんので、こっちは僕のです!」


「え?これ、2人分ですか?」


「そうです!カップル用のドリンクで、ラブカップです!

 ストローが2つ入るんですよ〜」


「そんなのあるんですか!」


「なんだそのネーミング……」


「最近できたみたいで、店員さんにおすすめされました」


「凪(なぎ)……買うとき、余計なこと言っただろ?」


凪(なぎ)はにこっと笑う。


「余計なことなんて言ってませんよ〜。

 ラブラブカップルのドリンクで、って言っただけですけど」


「それが余計なんだって……」


環(たまき)は笑いをこらえきれず言った。


「まあまあ、いいじゃないですか〜。

 ラブラブなのは間違いないんですから〜」


「っ……環(たまき)……

 そういうこと、サラッと言うなよ……」


「あれ?違いました?」


「……そうじゃなくて……いや、そうなんだけど……」


環(たまき)の天然なひと言に、柊(しゅう)が完全に言葉を失い、凪(なぎ)は吹き出した。


「環(たまき)さんの天然っぷりには、さすがの柊(しゅう)先輩も勝てませんね〜」


3人の笑い声が、ロビーに溶けていく。


そのときはまだ、この穏やかな午後の先に、静かで見えない戦場が待っていることを、誰も知らなかった。

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