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Eclipse Horizon ―電脳世界で女子高生が「死の戦乙女」と呼ばれるに至るまで―  作者: 野兎
第一章 青天の霹靂

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第五十話 外なる視点

 サービス開始からおよそ2週間で利用者数が100万人を超えた「Eclipse Horizon」。そのメインサーバーは巨大なビル一個では到底足りないと言われている。


 そんな超高性能、オーバーテクノロジーとも言える技術をふんだんに用いたゲームの開発は「オブザーバー社」が主軸となっている。そんなオブザーバー社の重鎮は5人。そのうち表に出ているのは社長と広報、そしてメインプログラマーのみである。残り二人はと言うと⋯いまだ闇の中なのであった。


 オブザーバー社の社長、霧島悟は表向きには冷静沈着、鉄面皮な男だと思われている。いや、思われていた。


 「もうー、急にこんなにプレイヤーが増えるだなんて誰がわかるんだよぉぉぉ!サーバーは落ちかけるし、各種方面への対応は山積みだし、もう死ぬ!!!」


 はぁ、どう考えたら二週間で利用者が100万を超えると思うんだ?しかもヒット作もお世辞じゃないけど出せていない会社のゲームだぞ?普通に考えて誰も注目しないだろ。


 「社長、どっかのバカが私たちの開発段階の情報を漏らしたからですよ。政府とつながっている〜って噂。まぁあながち間違っていないのが明確に弁明できない訳なんですけどね。」


 そう言って答えるのは我が社が誇る看板娘もとい広報の飯島香織だ。オブザーバー社の設立段階から関わり今もなお私の事務を手助けしてくれる良い人材だ。


 「ったくよぉ、早くその裏切り者を制裁したいんだがよぉ!」


 声を荒げるのはEclipse Horizonの頭脳、メインプログラマーの鮫島久々利。元ヤン気質なとこを差し引いてなお余りあるプログラムの天才。当初僕たちが開発していたヤツも一人で作り上げ、今もモンスターの細かな設定を調整している。


 「まぁまぁ落ち着いて。曲がりなりにも国家機密を流布したんですし絶対に厳重な処罰が下ってますって」


 「そんなんで誰が納得するんだ!大方あっち側の人為的な罠じゃねぇかよ。なんでアイツらの目的に左右されなきゃいけねぇんだよ。」


 「落ち着け。ここは社長としても僕がもう一度上に直談判を⋯」


 「「意味ないです!」」


 「はいぃ」


 折角一肌脱いでやろうと思ったのに無下にされたぞ。ほんとに脱いだら警察沙汰だがな。

 軽いジョークはここまでにしてもそろそろこちらの方針を固める必要があるんだが⋯


 「香織、久々利、私たちの方針はこのままゲームにしておくってことでいいんだな?」


 「ああそうだぜ、好んでアイツラの手のひらで転がされたくねぇしな。」


 「とはいっても技術提供された手前あっちの技術を使わなくちゃいけないしねぇ。というか使わないと今のクオリティのままにできないし⋯」


 「それのことなんだが、一つ朗報がある。」


 「何だ?」


 「夏イベントは僕たちが考えていいんだとよ。」


 「はっ?ほんとにか?あのめんどくさいプログラムを1から通さなくて勝手に作っていいってことなのか?」


 「そうさ。一応ゲームの世界観、設定を遵守してくれればあっちが勝手に修正してくれるらしい」


 「それが本当ならやりたいことの幅が広がるねぇ!最近はあっち側の要求ばかり呑んでたし」


 「けっ、アタシは元からプレイヤー同士での大規模なイベントはもっと後のほうがいいと思ってたのに。あいつらが急に「観測AIが〜」って言い始めたせいでよぉ」


 「終わったことばかり悲観しても良いことはないさ。大事なのはこれからさ」


 「今更カッコつけたところで泣き虫のレッテルは剥がれないからな」


 ぐぅ、今せっかくカッコつけたというのに久々利のやつ⋯だが関係ない。今の僕にはこいつらを黙らせる秘策があるからなっ。


 「ほんとにそんな口をきいて良いのかい?僕はあいつらから予測データをもらってきたのに」


 「それって本当?」

 

 「詳しく教えろ!」


 久々利たちがこんなに焦っているのは久しぶりだ。面白いな。


 「まぁまぁ落ち着きたまえ。ちなみにこれは僕の成果だから恐れ慄いてくれよ?実のことを言うと⋯⋯」


 「もう一回言ってくれ?確立存在が一柱倒されそうだって?」


 「あぁ勿論」


 「そんなわけねぇだろ!確立存在を他の雑魚mob共と一緒くたにしてねぇよな?あれは初めて1年のプレイヤーのトップでも倒せないような設計をしたはずだぞ?」


 「そうだよぉ。久々利ちゃんが死ぬ思い出調整に調整を重ねたんだよ?初めて2週間かそこらで倒されるわけなんて⋯」


 「お前らユニーク種族のことを忘れてないか?」


 「「⋯⋯⋯」」


 「そして直近のイベントの優勝者は誰だったか知ってるか?」


 「人族の⋯アイン。」


 「もう察しただろ?」


 「あーもう全く、そこまで言われたら言い返せないじゃねぇか。確かにユニーク種族で、かつありえない幸運を渡り歩けばあり得るかもな。そんな未来が」


 「だろぉ?だから僕たちがするのは唯一つ!倒されそうな確立存在に至るための依頼を作ることだよ」


 「ッ!そうだな。時間の都合上そっちはまだできてねぇ。急ピッチで作るしかねぇな。おい、香織!一緒にラボまで来い、仕事の時間だ。」


 「えぇぇ、まぁわかったよー」


 香織の手を引いて足早に去っていく久々利。隠しているようだが殺気が滲み出ている。そりゃ当然だ、手塩をかけて調整したモンスターが倒されそうだなんて言われて腹が立つに決まってる。


 これでもし万が一倒されでもしたら⋯この会議室どころがオブザーバー社のビルの一角が破壊されるかもしれない。どこの誰かなのか顔すら知らないが、プレイヤーネーム「アイン」にはぜひ負けて⋯いや死闘を繰り広げてほしい。

 久々利の溜飲を少しでも下げるために。






 



















 我は何のために生きているのか?どうしてこの様になったのか?


 偉大なる我の寵愛を受けし眷属を憎くとも打ち破った羽虫がいるという。四天王の末席であり我に一切の忠誠を向けてくれた子獅子はもうこの世を去った。我が断片が子獅子にいたというのに手助けをすることすらできなかった。


 クソッ、クソッ、クソォォォッッッ!!!!!!


 忌々しい来訪者に鉄槌を。我が羽の錆となりて悠久の時を万物に蔓延る物としよう。我達が治めしこの星を、我らが主君がおられるこの星を。不遜にも我が物としようとし、占領の限りを尽くさんとする奴らを叩き潰してやる!


 いかに彼らが力を持とうとも、矮小な存在に違いがない。我が眷属を殺した代償を、我が領土を侵犯したその報復を今に待っておけ。我が力を縛りし物が弱まった時、我は暴虐の限りを尽くさんと誓う。


 あぁ、愚かな子獅子よ。そなたの敵は必ず我が⋯


 

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