第一話 病院でゲームが許される世界線とは?
これは、一人に少女が最強に至るまでの道。そしてプレイヤー名「アイン」が名を轟かせるまでの話だ。
「はぁぁぁ!」
私の剣撃が巨大な鷲を襲う。この世の闇そのものを固めたような刀身を熱で灼熱に染め上げて羽を焦がさんとする。
だがそんなのは想定内、というかのように鷲が魔法陣を構築していく。
「反射魔法」
刹那、私の右肩に鈍い音がなる。衝撃を返されたのだろうか。
痛みに歯を食いしばりながらすかさず足で攻撃を仕掛ける。
「全ての元凶であるお前に負けてたまるか!」
近くには他のプレイヤーが息を殺して観戦している。なぜ隠れているのか?この勝負を見ることが違法だから?それとも良い画を取るため?そんなものではない。
それは人類の持つ当然の本能、生存本能に従って戦いに巻き込まれたくないからだ。
一人のプレイヤーが呟く。
「こ、この姿は……戦乙女そっくりだ…」
今日も小さき少女はモンスターを狩る。
彼女こそ、彼女だけが最も最初に人族の価値に気づいたのだった。
時は20XX年。人々は夢を操る技術、通称「スマートリング」を手に入れた。スマートリングの普及に伴ってフルダイブ型VRゲームの浸透や医療技術の躍進などが行われた。
場面は変わって病院、ここについさっき手術による麻酔から目覚めた女子高生がいた。その名を「西崎夏帆」という。
「痛すぎだろぉ!え?包帯?うそだろ!」
目覚めたら病院で、しかも全身痛い?何だよそれ。なんかテレビのドッキリですか?って感じだよ。こんな異常な状態なのだからここでナースコールを連打してもいいでしょ。というかするわ。
ピンポンパンポォン!
ナースコールが連打され看護師が急いで近づいてくる。
「えー、西崎夏帆さんで合っていますか?少々お元気すぎるようですが、どこが異常でも?」
「この状態は何なの?どうして私がこうなっているの?」
私の問いかけに看護師さんは困ったような顔をして言う。
「まぁ命があるだけいいじゃないですか。全治一ヶ月で済んだんですから。」
は?全治一ヶ月??この状態で一ヶ月も過ごさないといけないのか?それはもはや死刑宣告だろ。少し落ち着こう。
今の状況を整理すると全治一ヶ月で動けない、全身が痛い……うん、無理だ。死刑囚の気持ちだわ。
「ちょっと看護師さん!無理です。なんか、遊べるものが欲しいですよ!」
「あら、そんなことでいいの?ゲームならできるわよ。」
「いやいやいや、全治一ヶ月の人にゲームだなんて」
「できるわよ?」
ガチっすか。なんだろう、一ヶ月間の入院生活がとてもイージーモードに感じてきた。というか患者にゲームやらせるだなんて倫理観バグってるのか?
まぁ何はともあれゲームができるし…って、あれ?ゲームやったことないな?
青春時代を思い返す。
剣道、剣道、食トレ、剣道、筋トレ、剣道……
うん、ここは有識者に聞いてみるとするか。
「今流行りのゲームとかって何ですか?」
「んー、悩ましいけど注目度だけで言うなら『Eclipse Horizon』よね。確か今日からリリースじゃなかったかしら?どう、試しにやってみたら?」
Eclipse Horizon?蝕む水平線? 何だその面白そうな名前は?
思い立ったが吉日、やるしかないな。そう思い、私は自分のスマートリングにEclipse Horizonのダウンロードを済ませた。
「じゃあ看護師さん、ゲームってどれぐらいやっていいんですか?」
「うん?あなた、ちょっと要注意だから1ヶ月間ずっとゲームよ?あなたのスマートリング医療パッチに変えといたから連続使用時間制限は取っ払ってるし、食事に関しても安心して。点滴でどうとでもなるわよ。」
「え、それって…」
「病室で筋トレし始めて入院期間が一ヶ月伸びた人みたいにならないことね。」
ん?ちょっと今聞き捨てならないことを聞いたような。1ヶ月ずっとやりっぱなし?要注意?私そこまでやばかったっけ。常識的に考えてそんなことないはずなのに。やばいな、意識が朦朧としてくる。この眠りにつくとき特有のこの感覚はダイブしてる時特有の…………
『おはようございます。こちら、Eclipse Horizon案内AI、ノアでございます。あなたは、徐々に蝕まれつつあるこの世界を探検し、浄化するためにこの星に飛来しました。ときは昔、高度な技術を保有した黄金期の人類は突如として衰退の一途をたどることとなったこの星においてあなたは残された数少ない希望でございます。どうか世界へのご助力をおねがいします。』
「あ、はい。その精一杯やらせていただきたいと思っています。というかすごいですね。」
見回すと壁一面に並んだ人形のモデルたち。あっちに見えるのは獣人?機械人?なに、エルフまでいるの?ちょっと豪華すぎないか。というか圧倒的グラフィック、ポリゴンの要素なんて一切見せないこのモデルたちはまさに23世紀の技術が集約されているとしか思えない。このまま行けば電脳の世界に永住したいと考える人も出てくるのではないのか。
「あのー、自分の種族とかはどう決めるんですか?」
『種族?あなたの身体の種類のことですか。あなた自身が自分で決めることができますよ。一応リストを乗っけておきます。時間はたっぷりございますのでどうか深くご考えください。』
《種族一覧》
獣人種・犬 【STR補正。AGIにマイナス補正。】
獣人種・猫 【MPに補正。その代わりにSTRにマイナス補正。】
獣人種・兎 【AGIに補正。その代わりにVIT、MPにマイナス補正】
エルフ種 【MPに補正。その代わりにHP、VITにマイナス補正】
機械人種 【特定の武器種を使用時にSTR、MP、AGIに補正。
その代わりに常時VITにマイナス補正。】
吸血鬼種 【夜間にSTR、MPにずつ補正。
その代わりに日中STR 、MPにマイナス補正。銀に弱い】
鬼人種 【STRに30%補正。その代わりにAGIにマイナス補正。】
竜人種 【種族特性:龍魔法の獲得、MPに補正、VIT、AGIにマイナス補正】
魔人種 【種族特性:魔導の神秘の獲得、MPに補正、STRにマイナス補正】
ユニーク種族 【ステータスへの補正はなし。その代わりに強力な種族特性を得られる】
補正【ステータスに反映される。例えば獣人種・犬の場合はこの様になる
PC ???? 【種族:獣人種・犬】
HP 100
MP 100
STR 10(11)
AGI 10 (9)
VIT 25 】
おぉー、強そうなやつが多いなぁ。機械人、吸血鬼、鬼人、竜人、魔人種はピンキリで、ハイリスクハイリターン。一方獣人種たちとエルフはローリスクローリターンてことか。無難なやつを取るかそれとも特化型になるか…悩ましいところだな。うん?待てよ。個々にあるユニーク種族って何だ?ステータスが変わらないけど強力な種族特性って。
「すいません、ユニーク種族って一体何なんですか?他の種族と違うところってあるんですか?」
『すいません、ユニーク種族に関する詳しい説明は秘匿事項となっております。しかしユニーク種族の選び方に関してはお伝えできます。こちらにございます種族ガチャにて極稀に排出されます。探索者の方々には5回種族ガチャを行える権利がございますが、いかがですか?』
ガチャ!?やるしかないだろ。この種族ガチャなるものはメリットしかない。あわよくばユニーク種族になれる可能性があってしかも5回もできる?このチャンス無駄にできるはずがなくない?
「はい!ぜひガチャをやらせてください!」
するとどこからともなく黄金の箱が飛来して…ん?これガチャポンじゃね?なんか近未来的な雰囲気の子の船内にレトロな雰囲気を醸し出すガチャポン…ミスマッチすぎるな。そんな些細なことは置いといていざガチャをやるか。よし、神に祈っていざレバーを回して……
『人族 【種族特性:マナとの親和性が高く指向性を持たせられる】(ユニーク種族)』
人族?なんかめっちゃ普通のやつが出てきたんだけど。間違いじゃない?
HITOZOKU??
まさにコモンとしか言いようがないようなこれがユニーク?ちょっくらもう一回ガチャをやろうかな。とりあえずYESボタン押して…
《人族に種族を確定させますか? YES ・NO》
あれ?これもしかして種族確定させちゃった感じ?人族に?これもしかして詰んじゃったんじゃない?
『人族ですか…【被検体のデータが著しく不足しています】
私が見た中で人族を選定した方はあなたが初めてです。貴方様の目が肥えているということなのですね。』
「あー、いやぁ、まぁそうっすね。よく言われますよ」
『では、名前を考えてください。あなたの新しい旅は今ここから始まるのです。』
もう決まってしまったことは変えられないな。ここはもう割り切って考えるしかない。もしかしたら人族がすんごい種族なのかもしれないしね。なんせ私以外選んでいないのだから。それより名前かー、一番最初、1、ドイツ語……よし決めた。
「私の名前は――アイン」
『では〈アイン〉様、この世界の復興の手助けをお願いします。この星にはモンスターが蔓延っていますがどうか忘れないで、あなたがこの星の救世主だということを―――』
私の身体が作られる音がする。いやこれは高速で移動している?眼の前が真っ赤に燃え上がり、体全体に熱が広がる。
灼熱、鉄の爆ぜる音、焦げ付く匂い、そして体全体に衝撃が広がり―――
私はこの星で目覚めた。
初めての小説投稿で不安でいっぱいですが、面白い作品にしていきたいです。読んでくれて面白かったと感じてくれた方に評価していただきたいです。お願いします!当分は毎日投稿で午後6時と7時にしていこうと思います




