7-20 「ここで目覚めよう」
「へーい恭也くん完全復活かな調子はどうだい?」
「サボテンマン!おいコイツ止まってねーけど仕様です!?」
「完全拘束ってのは事前準備と念入りな足止めが必要なんだなーこれが!!!」
つまり仕様ってことだな!!本来捕縛術式じゃなくてちゃんと倒すための術式組んでた感じするし……そう考えるとよくやってくれてるよサボテンマン。術式のあれこれを俺は知らないけど絶対布袋さんタイプの苦労人だよサボテンマン。
「さて玲士くん!手筈通りちょっと下がってくれるかい!?」
「あ、はい!」
えー何か玲士とサボテンマン仲良くなってる……?俺の知らないところで仲良くなるの、別にいいけどなんか良くない。俺が言えた義理じゃないけど、俺は自他共に認める執着が重い男だぞ。
「さあて、最後の仕上げはド派手に行くのが流儀ってもんだろう!『今ここに世界を仮設しただ一度きりの晴れ舞台と定義する!星で輝き木々を幕としその生き様を演目とすれば!仮初の舞台とて最高の終幕と成る!』」
サボテンマンの詠唱に世界が応じて空間が書き換わる。んー……サボテンマンの能力なのかねこれ。異空間作れるのスゲーと思うけど……どうだろう、怪異相手だと攻撃手段があるかどうかによるのかな。詠唱ありきだと確かに準備大変そう。
「よし、取り敢えずこれで人目を気にする必要はなくなったな!恭也くん、トドメ任せてもいいかい?」
「俺?」
「そうお前さん!この術式は術者の介入を想定されてないらしくてな!」
「成程なー!」
剣出して怪異と対峙する。致命傷与えるためには大雅のスタイル模倣するしかない……訳じゃないんだよな本当は。検証も済んでるから手早く確実に行くか。
突進攻撃をギリギリで躱して少しずつ気配を馴染ませる。別に完全に馴染む必要性はあんまりない、俺は一回あの中に入ってた訳だし。輪郭は残る程度に、けれど弾かれない程度に馴染ませて……するりと怪異をすり抜ける。
「お前の核、”これ”だな?」
真っ黒な球体に刀身を滑らせる。斬れたことに相手が気付く必要はない。斬れたという事実だけ置いて、そのまま俺はその場から離脱。
「悪いが、何も知らないまま倒されてくれ」
「イェーイ!最高だぜ恭也くん!」
楽しそうだなサボテンマン。ぐしゃりと潰れていく怪異に一応警戒しながら剣は消しておく。ぶっちゃけ咄嗟の対応なら見えない壁張る方がよっぽど慣れてるんだよな。佐波が常時張ってたもんで。
「っそうだ!かすみは!?」
「ここにいるぜ?完全に俺のオプションパーツになっちまってるが」
おぉ器用に背中に張り付いてる……いや何でだよ。
ひょいと顔を覗き込もうとしたら綺麗にそっぽ向かれた。負けじと俺も回り込んで……ええいキリがねぇ!
「かすみくぅん……?ちょーっとお話したいんだがなぁ……?」
「おっと口調がパーフェクトな不審者。警察呼んどく?」
「サボさんしゃらーっぷ」
かすみが意を決したように俺の方を向く。あーあー目元赤くなっちゃってまぁ。せっかく可愛い顔立ちしてるんだから気にしろよな。
「……ばか」
「馬鹿はどっちなんだか」
「あのとき、咄嗟の判断で僕を庇いましたね?僕に精神汚染なんて効かないの知ってるくせに」
「効くだろ精神汚染なら」
「キキョウさん以外のが効く訳ないじゃないですか。しかもキキョウさんのアレ精神汚染という名の思い込みですし」
いや知らんよ。紫苑のアレ、精神汚染っていうか命令だったし。思い込みが弱体じゃない……のは分かるけどさ。寧ろ納得だけれども。
「お前が、俺を守ったのと大して変わんない理由じゃねーかな」
「……つまり、貴方にとって僕が大切な存在だった…………?」
すとん、何かが胸に落っこちて俺の表情も変なことになる。かすみはそれ見て何か騒いでたけど……そっか、ちゃんと俺、大切にされてたんだ。
「拗れる拗れる、胸ポケットに入れてたイヤホンコード並みに拗れるって」
「なぁ佐波。おれ、ずっと大切にされてたんだな……」
「はぁ?何言、って……」
かすみの言葉が途切れて、代わりに少しの沈黙と躊躇いがちな小さな手が俺の頭を撫でる。昔と逆だなぁ、いやそうでもないか、佐波の手はそんなおっきくなかったし。
「……ちゃんと大切でしたよ。巻き込みたくなくて手放すくらいには」
「そっかぁ」
「全部忘れてしまえば……いえ、きっとそんなの無理だったんでしょうけど」
俺は結局偶然とはいえもう一度色彩を手にした。色んなことがあって、色んなもの抱えたままこうして対峙することになった。伸ばした手を取り合う、ようやく嵌った記憶の欠片がきらきらと輝いている。
「おかえりなさい。恭也さん」
「ああ。ただいま佐波」




