7-12 「鬼さんこちら」
「ヘイお兄さん方、なんとなく嫌な予感とかしないかい?その直感は大事だぜ全力で逃げるが吉さ!」
「あっちが下山道じゃね?」
「はっはっは詰んでらぁ!」
おお……あの一瞬で危険勧告とこっちの問題点まで引き出したぞサボテンマン。流石に俺も奏さんも玲士と樹の前で堂々と戦いたくはねえし……だからといって来華に任せることはしたくない。サボテンマンは戦えるか分かんないし。
「……二手に分かれるか?俺ならアイツと鬼ごっこ出来る」
「危ないよ!」
「大丈夫!この山俺の庭みたいなもんだし!」
いや本当に大丈夫なのよ。人目気にしなくていいなら負ける気がしない。この山で俺に勝てる相手なんざ殆どいないって言い切って良いレベルだからね。
「奏さん、猿達の案内ありなら樹達連れてどれくらいの速さで逃げれる?」
「……抱えていいなら十分も要らない」
「よーしじゃあ十五分目標でちょっと行ってくる!」
「きょーくん!」
玲士の声に後ろ髪を引かれながらも全力疾走。まだ能力使うのは早すぎる、まずは怪異と出会わなくちゃ意味がねぇよなぁ?
「さぁて……今どの辺りだ……?」
「あっちー」
「おー確かにあっち……って」
にこーじゃねえ!!堂々と俺の背中に乗っかってんじゃねー!!びっくりするくらい自然にかすみが同伴してたんだけど!?
「おまっ……!何でこっちに来てんだよ!」
「たはー」
「たはーじゃねえって!!危ないだろ!」
「近いよー」
「ちかっ……ああもう!ちゃんと掴まってろよ!!」
どうしようもねえなこの状況!!今から戻るにはちょっと距離が近すぎる、幸いかすみくらいなら背中に乗ってても動き回れるから良いけど……イレギュラーなんてよくあること!諦めて接敵じゃー!
気配はギリギリまで消しておいた方が都合がいい。もう完全に人目がないことを確認して気配察知のイメージで視界を回す。あーデカいのが一匹いますねぇ……一度深呼吸してから意を決して声を出す。
「おうそこのお前。不法侵入だぞ」
あ、こっちみた。意思疎通が出来る感じ……ではないな、うん。ぐるぐる、どこ見てるのか分かんない目みたいな部分がこっちに向けられて、一瞬沈黙が訪れる。
「大人しく―――っ!」
「わー!?」
急加速は聞いてねえ!突進攻撃とか当たった瞬間消滅しそうな勢いだからごめんこうむりてぇな!!バックステップで躱しつつそのまま反転、ダッシュで逃げる!
上空に逃げることはしない、流石にバレそうだし。木々を渡りつつ、でも完全に撒かないように気を付けながら適当に距離を離していく。十分間はおにごっこ、残りの五分で討伐だからな……!
「速いねぇ」
「おうすげーだろ」
「んー……毛玉の方が速いねぇ」
「いやそれ俺ぇ……え」
思考が一瞬止まる、足も止まりかけたけどそこは本能の方が先行してちゃんと進み続ける。混乱はしててもスピードは緩めない、聞きたいことがあの一瞬で増えたけど、腰を据えてじっくり聞ける状況じゃないことだけは確実だからな。
「……後で聞くからな」
「んー?」
ああくっそ、今すぐにちょっと問いただしてぇ。十五分経ったら覚えてろよ……!




