7-11 「昔日をみる」
「子供……!?」
「子供?」
「どこ見て言ってんの?」
おいおい思いっきり祠の隣にいるじゃん何言ってんだ奏さん達。にこーっと笑う……この辺りでは見ない顔だよな、俺が大学行ってから引っ越してきたとかじゃない限り知らない相手だ。
「……祠の方にいるんだよな?その子供」
「だからいるじゃん!祠の隣でにこにこ笑ってる子供!」
「ミ゜ッ」
「え、いつから……!?」
「きょーやにーちゃーん!子供いるんだけどー!?」
「ほらぁ!」
フミに呼ばれたから俺も急いで駆け寄る。祠の隣にいる子供、俺を見てにこにこしてるし樹以外は困惑してるし……すっげーカオス。樹は驚きすぎてフリーズしてら。しゃがみ込んで目線を合わせてみても一切瞳に揺らぎがない。
「ええと……こんにちはー」
「こんにちはー」
あ、ちゃんと喋るんだ……そりゃそうか。なんというか……物怖じしない子供だな。フミと同じくらいの年頃だろうに、全然俺達見てもビビらねえ。
「お前、名前は」
「あそぼ」
「遊ぶ?」
「あそぼ」
いつの間にか傍に寄ってきてた奏さんと来華、サボテンマンがそれとなく玲士達を庇うように位置を変える。玲士達からは俺の目元が見えないことだけ確認して一度瞬き、鏡越しに真実を見つけるように、真っ直ぐ目と目を合わせた。
「……」
「あそぼ?」
胸のざわつきはない。鏡を通しても映るのはただの遊びたがりな子供だけ。……だけど、輪郭が時折酷く揺らいで俺の視界をぼやけさせる。
「霞みてーに曖昧だな」
「かすみ」
反応あったな。絞り出すような声だったから聞こえたのこいつくらいだろうけど、何で霞で反応したかは皆目見当もつかねえ。
「かすみ!おなまえ!」
「……ん?お前かすみって名前なの?」
「かすみ!」
何だよ名前あんじゃん。何でさっきまで答えなかったんだよ要らん警戒したわ。細く息吐いて目の色戻して、そうしてから問いを投げかける。
「お前、この辺りに住んでんの?」
「すんでるの」
「よくここまで登ってきたな……」
「?」
んー全然平気そう!樹より体力あるんじゃねえかな!祠由来の異変だったら体力とか関係なく近くに現れるんだろうけどさ。
「あそぼ」
「遊ぶ!」
「フミ」
「大丈夫だよ来華」
フミが来華を宥めるように声を掛けてからかすみの手を取った。ちゃんと怪異の存在を知ってるフミが無警戒ってのは……一応大丈夫って指針になるかな。いや奏さん達は警戒解いてないからあんまり油断もよくないか。ただ……サボテンマン含んだ三人の警戒具合、結構差があるように見えるんだよな……。
来華は真っ当に警戒してる感じ、サボテンマンは警戒ってより観察してる。奏さんは……樹の方見てない?
「びっくりしたな……隠れるのうますぎじゃね?」
「うまい?」
「うまいうまい。上手すぎて変な声でたもん俺」
「樹怖いの苦手だもんね」
「樹おにーさんビb」
「ビビってねーし??ちょっとリアクションがでかいだけですぅー」
ああ全然玲士達は警戒してねーや。かすみが楽しそうに話してるのをみて思わず安堵してしまう。……何でだろうな、理由は分かんないけどかすみがああして笑っていられる未来を俺はずっと望んでいたんだ。
「とても平和、ラブアンドピースでサボテンを普及出来るなら花丸満点完璧回答だったんだが……」
おっと不穏な会話。どうせ声聞こえてないだろうからって淡々と会話続けるじゃん。いや違うな、ちゃっかり聞こえないように結界みたいなの張ってる……いつから張ってたんです?
「巻き込まないでよ」
「俺だって巻き込みたくはないさ。さすらいのサボテンは孤高のサボテンとも名高いんだぜ?ただ……サボテンにもどうしようもない自然の摂理ってのはあるもんでね……」
「何か不都合が……?」
「俺が追ってた怪異、恐らくこっちに来るぜ?」
猿達がざわめく。ピシ、と何かが軋むような気配と、滲むような頭の痛みで顔を顰めた。俺達の様子がおかしいことに気付いたフミがこっちを向いて、つられるように全員が同じ方向へと視線を向ける。
「……俺相性悪いかも」
「奏さんが!?」
おいそれ詰んでね?




