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呪われし魔王の安寧秩序  作者: 鳳仙花
第二章・侵攻、そして防衛
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行動の読み

弾き飛び通う電撃。

その電撃は音だけでも萎縮してしまいそうなほどに激しく、見る者を恐怖させる。

なぜ人は突如発生する電気に恐れてしまうのか。

それはどうしようもないほど速いと理解していて、対処しきれないという認識がある脅威だからだ。

星の騎士たちは少し違う。

対処しきれないと分かった上で行動している。

いわゆる。痛みを受け入れる覚悟とでも言うべきか。

避けれぬ苦痛なら耐えるしかないのだ。


ミザルとアルコル、アケルナルの三人は地面から跳んでマントで身をできるだけ守りながら式術をばら撒いた。

ばら撒いた式術は障壁を発生させるもの。

効果は一瞬でも電撃を防ぐには充分だ。

今の雷帝は角を一本失っているために広範囲の雷撃は持続できない。

だから多くの電撃を防げはする。

しかし、ミザルとアケルナルは一度手元の武器を手放してからの行動のために障壁を張れた数は少なかった。

ただアケルナルはアルコルが近くにいたおかげもあり、過剰に障壁を発生させていたアルコルにより二人は電撃の直撃をほとんど避けることができた。

でもミザルはそうもいかずに、激痛と痺れで体を痛めた。

電撃で髪が少し焼けたのか、こげた臭いがミザルから漏れてくる。

そしてアルコルとアケルナルが着地すると同時に、ミザルは吹き飛ばされたように姿勢が崩れて背から地面へと落下した。

明らかにミザルのダメージが大きい。


「ミザルお姉ちゃん!」


すでに電撃はおさまっているために追撃はないが、アルコルは急いでミザルの元へと駆け出した。

けれど今こそが雷帝に攻撃が通るチャンスでもあった。

雷帝は多大な電力の消費により、体にまとう電撃が弱々しいものになっている。

だからミザルのことはアルコルに任せて、アケルナルは武器を拾って雷帝の方へと全力で走っていた。

だが極度に疲労していても、雷帝は決して電撃を放つことができないわけではない。

移動に使えるほどの電力はまだ足りないが、人間が扱う矢ほどの威力がある電撃を放つことは可能だった。

苦し紛れに近いが、雷帝はアケルナルの方へ数発の電撃の塊を撃ち放った。

それに対してアケルナルはヌンチャクの鎖部分となる柄を接合させて、小さな槍を手元で回して防いでみせた。

防げたのは雷帝が焦っていたおかげだ。

雷帝は少ない電力で仕留めるつもりで放ったために、アケルナルの急所になる胸を狙ったのだ。

実際、アケルナルは急所となる部分である顔や胸の方しか守っておらず、見事に雷帝の攻撃は読まれてしまっていた。

足を狙えば防がれることはなかっただろう。

接近しきる前にアケルナルは曲刀を振り引き、斬る動作に入る。

このままではまずいと雷帝はヒヒーンと馬の鳴き声を高々にあげて、前足を高く空へと上げた。

蹴り潰すつもりかとアケルナルは雷帝の前足を見上げ、注意しながらも斬ろうとし始めた。

その時、接近しきった所でアケルナルの足元に電撃が伝わった。

突如の痺れは感覚を奪い、わずか数秒でも体の自由を効かなくさせる。


「そんな…!」


アケルナルは驚きながらも視線を一瞬だけ足元の方に下げた。

すると雷帝の足元から電撃が放たれていることに気づく。

雷帝が顔を上げたために角の部分が見えづらくなっていたが、角の電撃を足元に回して地面にへと電気を走らせていたのだ。

アケルナルは見上げたせいで、そのことに気づくのに遅れてしまった。

おもわず膝を崩して、アケルナルは立ちすくんだように地面へと伏してしまいそうになる。

そのタイミングを見計らってか、雷帝は上げていた前足のヒヅメををアケルナルの顔面に目掛けて振り落とした。

しかしアケルナルの足は確かに動かないが、腕は動く。

曲刀を手に、アケルナルは雷帝の迫る前足を横から突き刺した。

その衝撃で雷帝の前足は逸れていくことになり、バランスを崩して雷帝は地面へと倒れ込んでしまいそうになる。

雷帝は踏みとどまることで転倒せずに済むが、踏みとどまる動作に時間がかかっている。

わずかな時間ではあるが、アケルナルが再び立ち上がって動くには問題ない時間だ。

アケルナルは立ち上がりながらも、小さな槍を雷帝の首へ目掛けて振るった。

それでも雷帝は僅かな電撃を体から放って、槍の振りかぶりを弾く。

そのまま一度体勢を立て直そうと雷帝は走り出して距離を取ることにした。


一方、シャルを抱えているレグルスを追って、サキュバスは何とか付いて行きながらも呼びかけていた。


「ちょっとぉ、待ちなさいよぉ!誘拐なんて感心しないわよぉ!」


レグルスは振り返りもせずに駆け抜けていく。

サキュバスの身体能力は人間と比べたら高い方ではあるが、なにも飛び抜けたものではない。

そのために星の騎士であるレグルスを追うのにだいぶ苦労していた。

翼がなければとっくにまかれて見失っていただろう。


「もう!こうなったら…!」


サキュバスは追いながら口笛を吹きだした。

その口笛は辺りに響き渡り、報せとして辺りの動物に作用する。

口笛が鳴って数秒後には興奮した野生の狐や野鳥が飛び出して、レグルスへと向って襲い始めた。

何事かと驚きながらもレグルスは狐を蹴り飛ばし、野鳥には飛び膝蹴りで撃墜した。

突然の野生の動物の突撃により、レグルスの動きが鈍くなっている。

これなら追いつけるとサキュバスは全力で翼を羽ばたかせて前方へ飛び出し、後ろからレグルスに抱きついた。

そして甘い吐息を吐きながら、レグルスに甘えるような声で耳打ちをした。

少ない言葉数だがそれはとても刺激的なもので、レグルスの思考を奪う。

思考がうまく働かなくなったレグルスは走る足を止めて立ち尽くした。

その様子にはサキュバスはにっこりとしながらも艶やかに笑う。


「あはっ!魔王様には効果なかったけど、やっぱ大人の男性には効果抜群ねぇ。私のフェロモンって便利ぃ」


サキュバスは戦う術をほとんど持ち合わせていないが、彼女の発するフェロモンは動物に強く影響させるものだ。

それは匂いや仕草だけではなく、さっきの口笛による音も強いフェロモンの作用を持っている。

そして対象の知性が高いほど、多量で効果的なフェロモンの与え方ではないといけないが、野生の動物程度なら口笛で充分だ。

これは同性にも問題なく通じる力ではあるのだが、数が多いほど効果はどうも薄くなってしまうらしい。

だから雷帝と居た時に同じことをしても効果はなかっただろうし、下手したらこの力が雷帝に先に作用して戦闘にならなかった可能性もある。

そのため使いどころが難しい力ではあった。

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