植えた物 o
鍬を物置から取って来ると、他の精霊術士がやってきた。
「うわ、もう始めてたのか。早いなトルク。」
紺色の髪のロビーが足を速めて、物置から鍬を出してくる。その後に、濃い緑の髪のリーンが種の入った袋を抱えてきた。それを目視で確認しながら、トルクは空いた方の手で頭を掻く。
「いや、掃除の時に集めた落ち葉を運ぶついでにこっちに来たんだ。」
鍬を肩に担いで、トルクは2人を見比べる。ロビーとリーンも本日耕す場所と、その傍に居た妖精を確認した。よっと片手を挙げて挨拶をしている。ロビーはすらっと細身で背が高い。リーンはそれなりの肉付きで、背も人並みだ。トルクも人並みの体格なので、似たようなものだ。ロビーはすっきりと髪を切っているが、リーンは対照的にぼさぼさに伸びた髪を後ろでまとめてくくっている。
じゃ、よろしくと妖精は姿を消した。
「それじゃ、やろうか。」
袋を置いたリーンが、鍬を手に取った。3人は顔を見合わせ、並んで土を耕し始める。
「なんか今日の土、妙に固くないか?」
ロビーが額の汗を腕で拭う。鍬に両手を乗せ、その上に顎を乗せながらリーンがのん気な口調で応えた。
「そうだなー。この間結構収穫多かったみたいだから、土の妖精も疲れたんじゃないのかな。」
鍬の先で、トルクは土の塊を崩す。
「なるほど。しっかり土をほぐすように言ってたな。」
ロビーはざくざくと掘り進めた。一筋のくぼんだ道ができるように土を避けて行く。大分進んできたころを見計らって、リーンは種の袋を掘った場所のすぐ横に持ってきた。トルクは袋の口を引き、中を覗く。
「芋だよー。種芋。」
へらっとリーンが笑う。
「あ、そうかそうか。今度は芋か。」
何度か頷いて、トルクは入っていた種芋を手に取った。手近な場所へ入れていく。トルクとリーンが種芋を置き、ロビーが土をかけた。
街の中を流れる川。そのほとりに、水浴び場がある。洗濯をしたり、洗い物をしたり、中に入ったりできる。
ところどころに雲が浮かんでいるものの、空はよく晴れていた。柔らかな暖かさで、風も感じられない。建築物の立ち並ぶ街の中では、強い風が通る事はほとんどないのではあるが。
畑仕事の後、トルク、ロビー、リーンの3人は水浴び場へと来ていた。手はもちろんの事、ひじや顔にも泥が飛んでいる。雑談をしながら歩いてきて、水面の前まで来ると川の水に手を突っ込んだ。




