# 第六十八話 六人目の生徒
五人が席についた翌日のことだった。
教室の扉が、また控えめに開いた。
立っていたのは、実技棟でよく見かける、真剣な目つきの少女だった。
「私も、参加させてもらえますか」
少女は、そう言って、深く頭を下げた。
名を、ネリアといった。
平民出身で、実技の成績は、学年でも上位に入るという。
だが、推薦や評価の場面になると、いつも、身分を理由に、正当な扱いを受けられずにいたらしい。
「噂を聞きました」
ネリアは、静かに続けた。
「型にはまらない教え方をする先生がいると」
「歓迎する」
私がそう答えると、ネリアは、初めて、少しだけ、表情を緩めた。
こうして、六人の生徒が揃った。
トビアス、カイル、フィオナ、エドモン、ロイ、そしてネリア。
誰一人として、似た背景を持たない、寄せ集めの六人だった。
だからこそ、画一的なカリキュラムでは、どうにもならないだろうと、私は考えていた。
まず取り組んだのは、一人一人との対話だった。
何が得意で、何が苦手か。
何に、心を動かされ、何に、傷ついてきたか。
それを丁寧に聞き取ることから、すべては始まった。
トビアスは、暗記は得意だが、実践になると、途端に萎縮してしまう癖があった。
いじめの記憶が、身体に染み付いているのだろうと、私は推測した。
カイルは、そもそも、何のために学ぶのか、目的そのものを、見失っていた。
フィオナは、実力は確かだが、感情に任せた発動が多く、精密さに欠けていた。
エドモンは、驚くほど広い知識を持ちながら、それを人前で披露することを、極端に恐れていた。
ロイは、要領はいいが、深く突き詰めることを、意図的に避けているようだった。
ネリアだけは、すでに、確かな実力を持っていた。
彼女に必要なのは、技術ではなく、正当に評価される場そのものだった。
私は、それぞれの特性を、紙に書き出しながら、一人ずつに合わせた学び方を、組み立て始めた。
同時に、実技の指導は、私一人の手に負えるものではなかった。
そこで頼ったのが、拠点で育った、あの面々だった。
「実習の手伝い、頼めるか」
私がそう相談すると、レクシアもマレアもサジタもアウラも、二つ返事で引き受けてくれた。
「面白そうです」
レクシアは、そう言って、早速、実技の日程を確認し始めた。
こうして、王立アカデミーの片隅、あの埃っぽい教室から、誰も見たことのない授業が、静かに、動き出すことになった。




