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イケメンを拾うと世界が変わる  作者: ろみ


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異世界での就活 2

 翌日研究室にフーさんと行くと、入り口でメリー先輩が土下座していた。

「昨日の数々のご無礼、平に、平にご容赦を。今日より心を入れ替え、全身全霊をもってナツ様にお仕えする所存です」

「無礼の内容については改めて聞かせてもらうが、その心意気や良し。存分に励みなさい」

「フーさん、勝手にお返事しないで」

 メリー先輩の態度が激変している。

 清川家ではぽわぽわしているセイだけど、セイは魔王陛下なので突然研究室に現れたらそりゃびっくりしちゃうかー。でも私自身は偉くもなんともないんだけどな。

 時々セイの目の前で倒れたり、具合悪くなる人がいるんだけど、セイが言うには魔王は魔力の影響がすごすぎて周囲の人達に色々な体調不良を与えてしまうのだそう。

 魔王の言葉にはもっと魔力が乗ってしまうから、迂闊に声を出せない。だから寡黙キャラだったというわけでした。

 魔国において全ての動植物は多かれ少なかれ魔力を持っているのだけど、私とちーちゃんは魔力がほぼゼロ。なので魔力の影響もほぼ皆無。

 だからセイと自由にお話しできるのだって。

 実は元の世界の、地球の人達も殆どの人が多かれ少なかれ魔力を帯びているそうなので、私とちーちゃんは魔国でも日本でも特異体質になるのだそう。

 魔力が強さに直結するという魔国ではデメリットでしかなさそうだけどね。

「メリー先輩」

「ひいぃ!わたくしめの事はどうぞ、メリー、メリーと!」

「ナツ様、これに気遣いは無用。どうぞ下僕となさってください」

 なんか、メリー先輩はフーさんの事も怖いみたい。メリー先輩の後ろでは、研究員の人達もメリー先輩の怯えように困惑している。

 ちなみに研究員の皆さんはセイを認識する前に失神しているので、昨日セイが来たことを知らない。トーコちゃん曰く、知らせない優しさもあるとの事。

 しかし、メリー先輩の怯えっぷりが可哀相になってきた。昨日の先輩後輩の距離感が心地良かったんだけどな。

「メリーさん」

 メリー先輩あらため、職場の同僚メリーさん、という事で。

 メリーさんがおずおずと顔を上げる。

「昨日みたいに、また色々教えてもらえると嬉しいです。これからもよろしくお願いします」

「身命を賭してナツ様のご希望に沿いなさい」

「もう!フーさん!」

 スーツの裾を引っ張ると、私にはニッコリ笑顔を見せてくれるフーさん。

 メリーさんがまた体ビクンってなってるから、もう少し優しく。

「それでは後ほどお迎えに上がります」

 綺麗な一礼とともにフーさんが姿を消すと、床に溶ける様にフーさんが態勢を崩す。

「メリーさん、大丈夫?」

「・・・ナツ様、おやさしい・・」

 メリーさんの瞳にうるうると涙が盛り上がる。

 クールビューティーの涙、可哀そうだけど可愛い。

 メリーさんが復活したなら研究所のお掃除とか片付けは私の出る幕はないと思うのだけど、一応私で手伝えることはあるかメリーさんに聞いてみた。

「それでしたら、一つお願いできればと・・・」


「くっっさっ!!!」

 研究室に隣接している倉庫に案内された私は、小さな木箱に詰められた何種類もの草を一つずつ嗅がされている。

「こちらは廃棄ですね。次はこれです」

「臭いっ!!」

 茶色く乾燥した草は20年前の薬草のなれの果てで、薬草は新鮮なうちに使うものもあれば乾燥させてから使うものもある。茶色く乾燥しているもののうち、腐って使えない物の選別を手伝っている私です。

「ちょい臭」

「こちらはしっかり乾燥させて確保ですね。ナツ様、助かります」

 なんとメリーさんは人ではなくて魔道人形なのだそう。そして20年前の最新モデル、メイド型魔道人形2号のメリーさんには嗅覚がないのだそうだ。メリーさんは恥ずかしそうに、はにかみながら教えてくれた。

 ツンツンのメリーさんがデレて以降、やることなすこと全部かわいい。

 旧式なのでと謙遜するメリーさんだけど、私にはメリーさんは人にしか見えないので十分すごいと思う。

「・・・何をしている、ナツ」

「ブランさん」

 私の体を張った利き薬草も一時間を超えた頃、開け放たれた倉庫の入口でイケオジ宰相且つノエイデスさんのお父さんのブランさんがこちらをうかがっていた。

 お召し物は黒のハイネックインナーにシルバーグレイのスーツ姿で普段よりはカジュアルな感じ。

 今日のブランさんも安定のイケオジです。

 倉庫全体に雑多な植物の匂いと腐敗臭が混じり合ったなんともいえない匂いが充満しているためか、ピタッと入口に留まりこちらには近づかないブランさんだった。

 ちなみに私は鼻がわりと鈍く、臭い匂いに強いという特に使い所も無い特技があり、今回研究員の方々を差し置いてこの大役を仰せつかったのである。

「薬草の仕分けです」

「そうか、ごくろうだったな。少し一緒に休憩しないか」

「ナツ様、薬草の選別は一段落しましたので後はお任せください」

 メリーさんもこう言ってくれるし、イケオジのお誘いを断る理由はない。

 トーコちゃんに報告を入れて、私はブランさんからお茶にお呼ばれした。


「・・・すごい!!」

 ブランさんに案内された場所は空中庭園とでも呼ぶべき、大樹に抱き込まれたような中庭だった。木漏れ日が柔らかく降り注ぐ素敵空間が広がっている。

 ファンタジーと近代文明が混じり合った不思議な世界だなーと、異世界であることに改めて感じ入ってしまう。足元には花も咲いているけど、草原の切れ目に石畳が見える。石造りの建築物の上に長い年月を掛けて草木が芽吹いたようなそんな場所だった。

 庭園の端までいくと眼下には空が広がっていて、あちこちで見るでっかい白い鳥が悠々と飛んでいる姿を見下ろせる。

「こ、こわ・・・」

 匂いには強いが、高いところは少し苦手な私は足をガクガクさせながら優雅にテーブルについているブランさんの元に戻った。

「ほっほ。ナツちゃんは好奇心旺盛じゃの」

「ほっほっほ」

 ブランさんのお茶会には小さい可愛い双子のお爺ちゃんが先客にいらっしゃった。

 私より頭二つ分くらい小さい、二人とも白いあご髭を長く伸ばして深緑のローブを纏ったにこにこ笑うお爺ちゃん達。

 ちなみにサラサラストレートあご鬚がトランお爺ちゃん。

 クルクルふわふわあご鬚がドッドお爺ちゃん。

 私の職人気質のかっこいいお爺ちゃんとは違うタイプの、見ててほっこりする癒し系が二人。薫り高い紅茶とつやっつやのアップルパイも美味しい。イケオジの所作も、どこを切り取っても美しい。最高のティータイムです。

「ナツ、仕事は慣れたか」

「ううーんと、研究室のお仕事はしばらく無いみたいです」

「うむ、そうか」

 今日の利き薬草で数か月分のストックの整理ができるそう。

 次は3か月後位にねー、とトーコちゃんには言われた。

 また無職に振り出しである。

「それなら毎日わしら爺とお茶をしてくれんかのう」

「ほっほっほ、今日からわしらお友達じゃよ」

 可愛いお爺ちゃん二人のお願いを断る理由もなし。

 左右から差し伸べられた小さなしわしわの手を喜んでキュッと握る。

「ほっ」

「ほっほぅ」

 お爺ちゃん二人は垂れ下がった瞼を一度驚いたように持ち上げて目を丸くした。

「これはこれは」

「ほっほっほ」

 何?と思ったけど、お爺ちゃんたちはほっほほっほ笑うばかり。

 ブランさんは一度方眉をひょいと無言で上げたけど、特に何も言わず静かに紅茶を口に運ぶ。どんな表情もイケオジですが、なんなん?

 私が頭を傾げながらお爺ちゃんの手をそれぞれニギニギしていると、いつのまにかセイが私達のテーブルに向って歩いてきていた。

 近くまで来たセイがおもむろにパーカーのフードを外して顔を見せる。

おお、セイの眉間にくっきり皺が。

「ううむ、目が回るぞい」

「何をするんじゃ、当代」

 お爺ちゃん二人がパッと私の手を放してテーブルに突っ伏してしまった。

「奈津に触れるな」

 うーん。セイが心配してくれてるのは分かるんだけど、その心配と牽制が全方位無差別なんだよね。このお爺ちゃん達、ブランさんのご紹介だし、悪い人達じゃないと思うんだ。

「セイ、私、お爺ちゃん達と仲良くしたい」

 私がセイをじっと見つめると、セイが眉間の皺をそのままに目線を反らす。

 だ、だめかなー?

「・・・フッ」

 ブランさんが思わず、といった様に笑いをこぼす。

 すると、セイが更にパーカーのファスナーを下ろして、おもむろにパーカーを脱ぎ捨てた。

「うげえぇ」

「アップルパイが口から出るぅ」

「・・・陛下、脱衣はどうかご容赦を」

 お爺ちゃん達に加えブランさんの顔色もとうとう真っ青に。

 セイは発語と脱衣で臣下に制裁を加えるタイプの魔王様なのである。

 王城会議の一幕を思い出すに、パーカーを脱いでもお爺ちゃんとブランさんは失神しないので、高魔力を持っている方達なんだろうなーと思う。

「ふう、ひどい目にあったわい」

「寿命が500年縮まったわい」

 アップルパイをもどすのは不憫なので、セイにはパーカーを着てもらい、フードを被らせて、さらにフードのひもをぎゅっと縛った。

 セイの皮膚の露出面積が減ると周囲の人は楽になるみたい。

 ひもをぎゅっと縛ったら、ブランさんが腕を組み、口元を隠したまま顔を上げなくなってしまった。魔王陛下を面白い感じにしてしまいすみません。

 お爺ちゃん達二人は楽になったようで良かった。

 そしてセイの席が無いので、私はセイの膝の上に問答無用で抱っこされる。

 これねー、事あるごとにされるので私も抵抗を諦めたし、周りも無表情でスルーしてくれます。

「当代はヤキモチ焼きかの」

「ナツちゃんを独り占めはズルいのぅ」

「うぐぅ」

 セイがぬいぐるみよろしく私の四肢を折り曲げてハグしてくるので、私の口からもアップルパイが出そうになる。

 しばらくして気を取り直したらしいブランさんが面を上げた。

「陛下、ナツに城の出入りを許すのであれば、ナツの専属の護衛を考える必要があるかと」

「・・・この二人が適任と?」

 セイの問いかけにトラン爺とドッド爺が力こぶを作るモーションを見せる。かわいい。

「建国記の双翼本人です。より高位の者に対して影響力は強い。ナツに取り入ろうと考える者共の抑えになるでしょう。精霊化が進んで、少々、かなり、幼児退行を起こしてはおりますが、強大な力は未だ衰えておらず、世のしがらみもない。柔軟にナツを守れましょう」

 お爺ちゃん達が今度は反対の腕でそれぞれ力こぶを作る。かわいい。

 セイがしばらく固まって考え込んでいる。

「許す」

「「いよっしゃああ」」

 セイの一言にお爺ちゃん二人が両手を振り上げ小気味良くハイタッチした。動作が見た目に反して若々しいというか力強くてびっくり。

 ええと、お爺ちゃん達が城内で付き添いしてくれる、という感じかな。お爺ちゃん達がこんなに喜んでくれるなんて、嬉しいしありがたい。そして精霊化とか建国記とか、消化しきれないワードがあった気がするけど、異世界だもんね。そんな事もあるよね。

「わし、ナツちゃんと毎日会いたいなー」

「ほいじゃあ、お近づきになっちゃおう」

 大樹の根元にトランお爺ちゃんがトコトコと近づいていく。大きく隆起している大樹の根っこにおもむろに跨って、トランお爺ちゃんはむんと気合を入れた。その途端飛び散る白と蛍光緑のハレーション。

「ううっ、まぶし・・・!」

 まともに弾ける光を直視してしまった。苦しむ私を抱えてセイがよしよししてくれる。

「殴る?」

「殴らないで」

 セイは気軽に周りの人に制裁を加えないようにしていただきたい。思いの外お達者そうなお爺ちゃん達だけど、お年寄りは大切にしないと。

 ようやく視力が回復すると、トランお爺ちゃんの目の前に可愛い木枠のドアが出来ていた。サイズはお爺ちゃん達専用みたいで、私がくぐるにも少しかがまないといけない位小さい。

「よっこいしょ」

 掛け声とともにトランお爺ちゃんがドアを手前に引く。そして振り返ってセイを見る。

「当代、繋げておくれ」

「お願いじゃから、繋げておくれ」

 お爺ちゃん達が何やらセイにお願いしている。

 体内の息を全て吐きだす勢いでセイがため息をついた。

 セイのため息って初めて見たかも。自宅では色んな感情と表情を見せてくれる様になってきたセイだけど、これは、ちょっと困っているのかな?

 膝抱っこされたままセイを見上げていると、セイがチラリとこちらを見下ろす。

「奈津、あの扉と神域を繋げる事が出来る」

「わし等、ナツちゃんの家にすぐ遊びに行けちゃうぞ」

「わし等、ご近所さん」

「え、嬉しい」

 そんなの、とっても楽しそうじゃん。お爺ちゃん達とニッコリ笑い合っていたら、頭のてっぺんにセイが顔を埋めてきた。頭ぬくい。

「分かった」

 しばらくするとセイは私を膝から降ろして立ち上がった。

 大樹の根元の小さな木の扉に手をかざす。トランお爺ちゃんが開いた扉は、最初灰色の渦がぐるぐるしていて向こうが見えなかった。

 それが突然、画面が切り替わった。

 ドアの向こうにはとても見覚えのあるピンクとクリーム色の空が見える。整った緑の芝生が連なったその先には、小さな二階建ての家。その小さな家の庭先で何か作業をしている女性と子供がいる。

 女性がこちらに気づいた。女性と子供がずんずんこちらに近づいてくる。女性が木枠のドアを屈んでひょいとこちらを覗き込んだ。

「なっちゃん、何してるの?」

「ちーちゃん」

 可愛い木のドアから姿を現したのは、小脇に抱えたザルにご神果を山盛りにしたちーちゃんだった。そして屈みこんでいるちーちゃんの下からクルム君が顔を出す。

「ナツとセヴェルカルム様!」

「ほっ。次代も来たのぅ」

「ほっほ。ほっぺがまろいのー」

「あら、可愛いお爺ちゃん達。こんにちは」

 美人に可愛いと言われてお爺ちゃん達も嬉しそうである。

 ちーちゃんとクルム君が小さなドアを潜り抜けてくる。

 ちーちゃんは山盛りのご神果をお好きなだけどうぞとドッドお爺ちゃんにお勧めしている。クルム君は両手に持ったご神葉をトランお爺ちゃんにお見せしている。

 早速ご近所付き合いが始まった様子である。

 4人の交流を見守っていたその時、カシャーンとガラスが割れるような音が響き渡った。

「あら、失礼いたしました」

 今日はノースリーブの白いリブニットに水色のフレアスカートを合わせたカジュアルなフーさんが、優雅にスカートの裾を捌きながらこちらに歩いてきた。

「閣下申し訳ありません。結界が少し壊れてしまいましたわ」

「無理に結界内に押し入ればそうなるな。それと、少しではなく全壊だな」

 和やかに会話をするフーさんとブランさん。結界があったなんて全然分からなかった。ブランさんと目が合うと、フッと渋い笑みを浮かべる。

「城内には色々な考えの者がいるからな」

 それはそうだろうな。私とちーちゃんが嫌な思いをしないで魔国で暮らしていけるのは、セイやフーさんや幹部の皆さんに手厚く守られているからなのだ。

「気を付けます」

 私が神妙に返事をすると、ブランさんはよしと一つ頷いた。

 増えた人数分の椅子とお茶の手配をフーさんが始めた。

 フーさんの指示に従って、もこもこに苔むした手足と体を持つ50センチ位のお人形達が力を合わせてよちよち椅子とか運んでいるんですけどー?目が小さなお花だったりドングリだったり、鼻が木のボタンだったり、頭全体に小花が咲いている子もいたりして、見ているだけで胸がいっぱい。多幸感半端ない。ずっと見ていられる。

 少し息を荒げてしまったのか、セイがなだめる様に横抱きにした私の背中をトントンする。興奮してすみません。

 私の向かいにちーちゃんに大人しく横抱きにされたクルム君がいて、幼児と同じ扱いなのもまたお恥ずかしい・・・。

 この緑の子たちも魔道人形なのだそう。とっても異世界ファンタジーぽくて良い。

「フロントゥイネかの」

「久しいのう。最後に会ったのはたしか、先々々代の即位式だったかの」

「両翼のお二方も、お姿がだいぶ・・・御可愛らしくなられましたが、お元気そうで何よりでございます」

「お主は変わらんのー」

「ほっほっほ」

 お爺ちゃん達とフーさんはお知り合いだったみたい。知り合いの輪が繋がっていく感じで楽しい。

 一仕事終えた緑の人形達は、大樹の日影が途切れた日向で円陣を組んで座っている。

 光合成?可愛すぎて震える。

 落ち着けとばかりにセイが私の背中をトントンし続けている。

 この場で一番偉い魔王陛下にお世話され続ける私。

「陛下、神域と箱庭の結界を同化できますか」

 セイはコクリと頷くと、右手を軽く一振りする。

「さすがでございます、陛下」

 ブランさんとフーさんがほう、と感嘆のため息をついている。

 もちろん私とちーちゃんは何が起きたかさっぱり。

「ナツ様、チヒロ様。陛下が神域と同等の結界をこの庭園まで敷かれました。この場まででしたら、供の者もなしで自由にお越し頂けますよ」

 ポカーンとしている私にフーさんが説明してくれた。

「ナツちゃん、これを持ってての」

 トランお爺ちゃんがローブの中からしゃらりと銀の鎖を引っ張り出した。華奢な鎖には白銀の細長い笛が付いている。

「この庭に来たらこの笛を吹いての」

「わし等すぐにここに来るからの」

 試しに吹いてみるとピルルと小鳥のような可愛らしい音がした。目の前にいるのにお爺ちゃん達がお茶目に「はーい」と手を上げるので笑ってしまう。

 私は可愛い楽しいお爺ちゃん達がすっかり大好きになってしまった。

 大好きな人達ばかりのお茶会、楽しかった。

 今日は魔王の業務も早めに切り上げていいらしいので、みんなでこのまま一緒に帰る。せっかくなのでトランお爺ちゃんの可愛い木のドアを潜って帰る。ちーちゃんが先にドアを抜けて、向こう側からクルム君を受け取る。私もよいしょと潜り抜けて、本当に神域の自宅の近くに出た。セイとフーさんはあっさりと転移で私の隣に現れた。

「またの」

「すぐにの」

 名残惜しいけど、またすぐに会えるよね。

 お爺ちゃん達とブランさんが手を振る姿を見ながらそっと木のドアを閉めた。


「奈津は人たらしだと思う。それに奈津も会う人会う人、簡単に好きになりすぎ。俺は気が気じゃない。奈津はひどい」

「ええー」

 その夜、謂れのない言いがかりをつけられ、再びセイにぬいぐるみよろしく四肢を折られハグされる私なのだった。


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