第38話 憎むべき悪性
グウェナエルの一家は、元々『ダープ』出身の貧困者だった。
底辺に近い熟練度しか持たず、向上の見込みすら無い一家は、目上の者に媚を売り、残飯を拾い集めて、辛うじて生き長らえていた。
だが、そんな生活の中でも、両親から沢山の優しさと愛情を注がれて育てられたグウェナエルは……例え、どれだけ貧しくとも、この人たちだけが居れば良い……そして、いつかは自分が努力して稼いで、両親に楽をさせてあげよう……そんな想いを持ち、勉強や鍛練に明け暮れていく。
そんなある日のこと。
グウェナエルは、両親と悪性持ちの異端ギルドの人間が密談しているのを盗み聞きしてしまう。その内容とは……人身売買。熟練度の向上率が高い自分を売りに出せば、大金が手に入り、今の生活から脱却出来るというものだった。
受け入れる訳がない……これまで、自分を大切に育ててくれた両親が、そんな提案を呑む筈がない、絶対に……グウェナエルは、そう信じていた。
目の前の両親が────二つ返事で、承諾するまでは。
貧困者の子として生まれ、悪性持ちや権力者には良いように使われ、敵ばかりだった世界の中で、唯一の味方だった両親に裏切られたグウェナエルは……奴隷として売られた日を境に、変わった。
所詮、人とはそういうモノだ。
強者は弱者を虐げ、欲を満たす為ならば簡単に理性を捨てる。愛とか友情とかは、些細なモノでしかない。信頼関係なんてモノは、ただの虚言癖の産物だ。その象徴が、『悪性持ち』……いいや、人は誰もが『悪性』の素質を持っている。
ならば、自分がその因果を断ち切ってやろう。
『悪性持ち』を徹底的に叩きのめし、自身が抑止力として力を誇示すれば、その力に恐れをなした人々は、『悪性』に覚醒することを自主的に抑制するようになる。
何度でも言おう、『悪性』は排除すべき存在だ。
それを実現させる為には……何としてでも、子皇の座を奪取しなくてはならないのだ。




