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いいえ、メンタリストですから。

 時を止めて、ようやく厨房の前まで帰ってきた。


 私は自分の懐中時計を見やると、あと1分の余裕があることを確認した。したり顔になって、ゆっくりと閉じる。同時に時間が動き始めた。


「さて、朝食の準備と行きましょうか」


 私は悠々と厨房に歩いて行った。しかし……


「きゃああ!!」


「ど、どうなさいました!?」


 私は慌てて中に駆け込む。今の声は明らかに、妹様の声だった。


 厨房の中を覗き込むと、白い床の上にヘタレる妹様の姿が。赤と白と黄色いドレスを着た、本当に子供の姿の吸血鬼だ。背中から枝のようなロープのような翼を生やしている。羽根には電飾のように飾りが付いていて、どれも宝石のよう輝いている。


「む、ムニエルが増えているの……咲夜」


「ムニエル?」


 私は白いキッチンの上を覗き込んだ。たしかに、そこにはムニエルが。ただ、私が飾ったのとは違い、山のように作られていた。


「誰が一体、このようなことを」


「しーらない。赤っちって言ってたけど、みたことないもん」


 妹様の涙が頬についている。一体どのようなひどい仕打ちを受けたのだろう。


「私とその男の人と一緒にお魚さん食べたたんだけど、すると私の喉に骨が刺さっちゃって……すんごく痛かった」


「骨? いいやそんなはずは……」


 私がムニエルに使ったシャケは全て骨を除去したはずだ。お嬢様の喉に骨が刺さってはいけないと、細心の注意を払った。それなのに、まさか取り損ねたというのか。


「違うよ……だって、赤っち言ってたもん。切り身をした腕の問題だって」


 切り身をした腕……切り身にした人間の腕の問題? ということは、買った時にはすでに入っていたのだろうか。ならば、異物混入だったのだろうか。


 それにしても助かった。もし、そのようなずさんな商品をムニエルにしてお嬢様の身に何かあったとしたら……考えただけでも恐ろしい。


 妹様で良かったわけではないのだが、仕える身として主人にそのような物を出すことだけしてはならないことだと考えている。


 今回だけは本当に助かった。協力者には感謝せねばならない。


「妹様、何か変なことはされませんでしたか?」


「え? 別に〜、なにもないよ?」


「その、赤っちという男がどこに行ったか知りませんか?」


「しーらないっ」


「そうでしたか……ありがとうございます」


 協力者は私の時間停止魔法をかいくぐっていた。どういう原理か知らないが、魔理沙が関係しているなら相殺の魔法でもかけていたのだろう。それとも、その男自身がかけたのだろうか。


 ……いや、今は考えている時ではない。


 先ほど美鈴に紅魔館を封鎖してもらったのが良かった。あとは、お嬢様の朝食を終えたあと、慎重に対処すればいいだけの話なのだから。








「すんごいですね、この食堂。幻想郷で一番大きいんじゃないですか? レミリアさん」


「ええ、当たり前でしょ? ここは幻想郷で一番高貴な存在が住む場所なんだから。一番じゃなきゃおかしいわよ」


「さすがです。でー、一つお尋ねしたいのですが、ここで一体なにをしているんですか?」


「あなたも変なこと言うのね。朝食を待ってるんじゃないの。どう? あなたも一緒に食べる?」


「いいんですか? ぜひご馳走になります」


「咲夜に伝えておくわ」


「でもレミリアさんって吸血鬼だからこの時間のご飯は晩御飯なんじゃないんですか?」


「なに言ってるのよ。そんなもの私が朝食だと言えば朝食なのよ。それにしても、咲夜遅いわね……もう1分も遅れているわ」


「あはは、じゃあ待ち時間の間に僕がマジックでも披露しますよ」


「あら、あなたマジシャンだったのね?」


「いいえ、私はメンタリストですから」

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